#2です。
【別表5(1)の書き方】
別表4で「留保」に分類された金額は、すべて別表5(1)の「当期の増減欄」の減か増のいずれかの欄に転記することとなります。勿論1個につき1回だけです。で、別表5(1)の作成作業はこれで終わりではありません。「当期の増減欄」にはこの他に記入しなければならないことがあるのです。
結論を先に言います。「当期の増減欄」のなかで、別表4にかかわりなく記入しなければならないのは、28欄、29欄、30欄にある「中間」と「確定」の計6か所です。
まず、それ以外の箇所の金額は、別表4から引っ張ってきていることが確認できましたでしょうか。別表4の金額を分割して転記したり、合算して転記する場合がありますので、そこは柔軟に見てください。また、金額の符号(プラスかマイナスか)にも注目してください。別表5(1)は利益積立金なるものの期中の増減を記述する表です。別表4で加算欄にある数値は別表5(1)では積立金が増加するように、逆に減算欄にある数値は積立金が減少するように記入する必要があります。注意すべきは、例えば法人税の中間納付額は別表4では加算の2欄に記入されていますが、別表5(1)には当期の減欄に記載されています。しかしよく見るとマイナス記号が付いています。マイナスの数値を減少欄に記入することは即ち増加を意味しますので、これで正しかったことが理解できますね。当期の増欄にマイナス記入するのも同様の見方をしてください。
ここで異変に気付かれたと思います。本例で、別表5(1)の3欄にある「未収還付法人税100,000」は別表4に繋がってないではないかと。そうです、この項目の金額は、原理的には28欄の「確定」に記入すべきものなのです。28~30欄の「中間」と「確定」には、それが「納付」であることを前提に元々マイナスの数値が想定されており、それが故、用紙には予め△印が印刷されているくらいです。国税庁のマニュアルによれば、「還付」の場合は25欄より上の欄に、「未収還付○○」としてプラスの金額を当期の増欄に記載することとされています。よって、この欄は28欄の変形と考えてください。
そのようなわけで、この別表4とかかわりなく記入すべき数値ですが、中間納付すべき金額、確定額となるべき金額もしくは還付となるべき金額を、それぞれ過不足なく正確に記入しなければなりません。過不足なく、です。
以上で別表5(1)の記入は終わりです。が、なぜか達成感がありませんねぇ。いったいどういう作業をしたのか全体像が把握できません。記入に誤りはないのか自信が持てません。
そういうときに一助となるのが検算式です。別表5(1)の表枠左側に検算式が記載されていますので、検算してみましょう。
(a)期首現在利益積立金額合計「31」(1)=0
(b)別表四留保総計「48」=△1,025,150
(c)中間分,確定分法人税県市民税の合計額=(100,000+15,049+32,000)+(4,951+18,000)=170,000
(d)差引翌期首現在利益積立金額合計「31」(4)=△1,095,150
ゆえに、(a)+(b)-(c)=0-1,025,000-170,000=△1,195,000
となるのですが、(d)と100,000円の差があります。
先ほど、「本例においては別表5(1)の3欄は28欄の変形」であることを説明しました。
つまり、3欄の100,000円は28欄に書いてあるものと見做してこの検算式に当てはめるのです。ただし符号に注意しなければなりません。28欄の確定額の箇所に書くとすればプラスの数値で100,000円です。従って結局
(c)中間分,確定分法人税県市民税の合計額=(100,000+15,049+32,000)+(-100,000+4,951+18,000)=70,000
と改めて見做すことにより、検算式は成立し、別表5(1)の記入は正しくなされたことが分かります。このように、還付あるときの検算式は要注です。
〔追記〕
(1)この会社は利益積立金0から出発して1年後に利益積立金が△1,095,150円となりました。別表5(1)の右下隅の金額がそうなっています。
P/Lで、当期損失が△1,070,000円だったので、期末の積立金も△1,070,000と思いきや、そうではありません。その差は25,150円ですね。その内訳は、実は事業税の中間納付額25,000円と所得税の150円です。両方とも既に支払済みです。しかし来年戻ってきます。戻ってきたときに積立金はその分回復増加し、△1,070,000円となります。
但し、本例では該当しませんが、これ(還付)が他の2税や利子割の場合はまた話が違ってきます。難解な部分です。
(2)じゃぁ苦労して別表5(1)の27欄~30欄及び28欄の変形とかいう3欄に記入した数値は一体どこに反映されているのかということですが、本例では、本当の確定額や還付額と寸分違わない金額で会計処理をしているため、これらの数値が表面化しないのです。税務当局が見て、「よしよし、真面目にやっとるな」と思われるだけでよしとするところでしょう。
(3)本例は、期首の利益積立金が0からスタートしたかのような会社を例にとりましたが、もっと一般的なケースでは、別表5(1)の数値の中には、一見別表4と繋がっていない項目が他にも存在している場合があります。これは、あまり”繋がり”に拘泥すると却って別表が見辛くなるため、あるものとあるものを相殺して処理をしており、”繋がり”が途切れているように見えるだけです。
(4)会計処理について
本例では前提として、中間納付や所得税については仮払金で仕訳しているとしましたが、3税関係について租税公課勘定で処理するとか、還付があったときに初めて雑収入で受けるとか、いまだにインチキ処理をしている会社もたくさんあります。そのようなケースの場合は本件説明振りも異なってきます。異なってきますが、別表4の最下段の金額や、別表5(1)の右下隅の金額は同じになります。
(以上)
お礼
本当にありがとうございました。 参考書やネットでの解説を読んだのですが、書いている内容が微妙に違っていてどれを信じてよいやらわからなくなってしまっていました。空欄に記入するのは編入項目と言うのですね。 理論づけてご説明いただき、本当に有難いです。感謝いたしております。