酸・塩基というのは、基本的には熱力学的な平衡反応に基づく性質なのに対し、
求核・求電子性というのは、反応速度論の議論で登場する性質です。
NaOEtは、強い塩基であると同時に強い求核剤です。
一方NaOBu-tはNaOEtよりも強い塩基性を示しますが、求核性は
ほとんど示しません。これはt-Bu基の嵩高さが反応の邪魔になるためで
あると説明されます。
LDA(LiNPr-i_2)なんかも同様の理由で求核性はありません。
またヒドリド(NaH, KH)も塩基性は高いですが、通常は求核剤として働きません。
酸と塩基も、アレニウス・ブレンステッド・ルイスの三種類の定義があります。
例えばHClはアレニウス酸ですが、H+, Cl-として分けてみた場合、Cl-は
酸性条件下ではブレンステッド塩基として働きます。
実際反応条件次第でCl-は求核剤となります。
ちなみに求核性は、I^- > Br^ - > Cl^-
あるいはルイス塩基ならEt_2S (チオエーテル) > Et_2O (エーテル)
といように、周期律表の下の原子ほど高くなります。
>逆に求電子性のない酸も存在するのでしょうか。
ブレンステッド酸の場合(NH4^+とか)、
プロトンが求電子剤ということになります。
またルイス酸の場合は、当然ながら求核剤と同じ議論が起きます。
E1反応とかE2反応とか、カルボカチオンの反応性について
これから習うでしょう。
普通の有機化学の教科書には一通り説明があると思いますが、
今は亡き井本稔先生の「有機電子論解説」
あるいは英語ですが、Robert B. Grossmanの
"The Art of Writing Reasonable Organic Reaction Mechanisms"
を勧めます。
お礼
どうも分かりやすい解説有難うございました。 明日学校の図書館で「有機電子論解説」を読んで 見ます。