一言で言うと、「波数(運動量)空間での、そこまで電子が詰まっている、という面」
ということになりますが、もう少し噛み砕いて説明を試みます。
空のバケツに水を入れると、平らな水面ができます。この「水面」というのは、言い
換えると「実空間(x, y, z 座標)での、バケツ内で最大の位置エネルギーも持つ水分
子達の面」なわけです。実はフェルミ面というのもある意味で似たようなものです。
基本的に全ての物質は原子から成っていまして、原子は原子核と電子を持ちます。と
いうことは物質の中にはものすごく多くの電子が居るわけなのですが、このうちのい
くらかはあまり原子核に強く束縛されないため、運動エネルギーを持って動き回るこ
とができます(特に金属の場合)。
高校物理で習うように、運動エネルギーは速度あるいは運動量の2乗に比例します。
では、物質中の電子のエネルギー分布(どのエネルギーの電子がどの位の数居るか)
はどうなっているのでしょうか? 詳しい所は統計力学などで学ぶのですが、すごく
大雑把に言うと、バケツの中の水と同じように「低いエネルギーから順に席が埋まっ
ていく」のです。低いエネルギー=小さい運動量、ということで、電子の運動量の
(x, y, z)成分で3次元の座標表示をすると、ちょうどある半径を持つ球の内側にだけ
電子が居ることになります。この球面が「フェルミ面」です。
このフェルミ面、固体の電子の状態を表す特徴的なものなので、物性物理ではとても
重要になります。一番単純な場合は上記のように球面ですが、例えば「x方向には電子
の運動に対して抵抗がある」みたいな状況ですと、同じ速度でもx方向とy, z方向に動
く電子のエネルギーは変わってきます。すると、フェルミ面も球面ではなくなるわけ
です。
直感的な理解を目指してみましたが、こんな感じで説明になっているでしょうか?
# 注意事項
・全体に、ものすごく大雑把に議論を省略しています。
・フェルミ面の話は固体中の電子には限らないのですが、簡単のために例を限定しました。
・フェルミ統計の話はばっさりと省きました。低いエネルギーから『席が埋まる』と考えて
良いのかどうか、という所に関わるのですが、詳しくは量子力学の教科書を読んでください。