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天然原子炉の中性子
天然原子炉の最初の中性子はどこからやってきたのでしょうか。
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ウランの様な質量数の大きな原子核は、外部から中性子が供給されなくとも核分裂を起こす事があります。 これを自発性核分裂と言います。 【参考URL】 自発核分裂 - Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E7%99%BA%E6%A0%B8%E5%88%86%E8%A3%82 自発性核分裂とは - Weblio辞書 http://www.weblio.jp/content/%E8%87%AA%E7%99%BA%E6%80%A7%E6%A0%B8%E5%88%86%E8%A3%82 ウラン程度の場合では、α線を出して別の元素に変わる割合と比べて、自発性核分裂が起きる割合は極端に小さいため、それによって発生する中性子の数は、通常であれば無視しても構わない程度のものに過ぎませんが、それでも0ではないのです。 原子炉を起動させるために使われる中性子の数が少ないと、原子炉の出力が上昇するまでに、非常に長い時間が掛かってしまうのですが、天然原子炉の場合は、動き始めるのにかかる時間など気にする事では無い訳です。 尚、天然ウランにはウラン238が約99.27%、ウラン235が約0.72%含まれており、中性子を吸収した際に核分裂を起こしやすいのはウラン235の方なのですが、自発性核分裂が起きる確率は、原子核の中に中性子が占めている割合が多いほど高くなる傾向があるため、自発性核分裂の場合はウラン235よりもウラン238の方が起きやすくなります。 天然ウランの中に含まれている割合も、ウラン238の方が圧倒的に多いため、天然ウランの中で発生する自発性核分裂由来の中性子は、主にウラン238が核分裂を起こした事により発生したものとなります。 尚、天然原子炉を動かしているのは主に中性子を吸収した事による核分裂なのですから、天然原子炉が動いている時に発生する中性子は、主にウラン235が核分裂を起こした事により発生したものとなります。 原子炉として起動するきっかけとなる最初の中性子はウラン238の自発性核分裂によるものであるのに対し、原子炉として稼働している時には、ウラン235の核分裂連鎖反応によって生じる中性子が主になる訳です。
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- kagakusuki
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先程の回答において、もしかしますと誤解を招く恐れがあるかも知れない表現が一部に御座いました。 >原子炉の熱で水が沸騰して、ウラン鉱床の中から無くなると、中性子が減速されなくなるため、連鎖反応が起きる確率が低くなるため、原子炉は停止していました。 と書きましたが、これはそのまま永久に停止してしまうという事を意味している訳では御座いません。 原子炉が停止して発生する熱が少なくなると、鉱床の内部の温度が低下して水が沸騰しなくなりますから、再び地下水が流れ込む事で、原子炉が再起動する事になります。 オクロの天然原子炉の場合、この様な 水の供給→原子炉の稼働 ↑ ↓ 原子炉の停止←水の沸騰・枯渇 というサイクルが何度も繰り返された事が判っており、30分ほど稼働してから、2時間30分程度停止するというサイクルであったと考えられている様です。 【参考URL】 オクロの天然原子炉 - Wikipedia > 2 天然原子炉の仕組み http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%81%AE%E5%A4%A9%E7%84%B6%E5%8E%9F%E5%AD%90%E7%82%89#.E5.A4.A9.E7.84.B6.E5.8E.9F.E5.AD.90.E7.82.89.E3.81.AE.E4.BB.95.E7.B5.84.E3.81.BF 鉱床の内部温度が下がるのにも、地下水が再び流れ込む様になるのにも時間が掛かりますから、再度水が供給されてから、原子炉として動き出すまでに要する時間は、2時間30分も掛からなかったという事になります。 この様な短い時間で再起動しているという事は、中性子が偶然発生する事によって起動していたのではなく、少ないとはとても言えない様な数の中性子が、鉱床の内部で発生していたという事になります。 1kgのウラン238は平均して1秒間に6.93回の割合で自発性核分裂を起こしています。 ウラン原子核が核分裂を起こしますと、2個ないし3個の中性子が発生し、ウラン鉱床の中には膨大な量のウラン238が存在していますから、非常に多くの中性子が発生し続けている事になります。 尚、上記のウラン238の自発性核分裂は、原子炉として1度も稼働していない場合においても中性子源となり得ますが、一度稼働した原子炉の場合には、ウラン238よりも大量の中性子の発生源となり得る物質が存在します。 稼働中の原子炉の中には大量の中性子が存在しますので、稼働させた後の原子炉内の核燃料となるウランの中には、(前回稼働した際に)ウラン238が中性子を吸収する事によって生じたプルトニウム240が含まれています。 プルトニウム240はウラン238とは比べ物に成らない程に自発性核分裂を起こしやすく、1kgのプルトニウム240は1秒間に約 百万個もの中性子を発生させます。 一度稼働した原子炉の中のウランには、プルトニウム240以外にも、自発性核分裂を起こしやすい様々な超ウラン元素の核種が含まれています。(尤も、こちらの方はプルトニウム240よりも更に量が少ないため、中性子の発生源としては、プルトニウム240には及ばないと思います) このため、ウラン238が発する中性子よりも、僅かに含まれているプルトニウム240が発する中性子の方がずっと多くなります。 又、ウラン238の自発性核分裂によるものと比べれば量的には少ないものになると思われますが、天然原子炉の内部には自発性核分裂による中性子以外にも中性子源が存在します。 ウラン235などの核分裂性がある原子核が中性子を吸収した際には、殆どの場合は直ちに核分裂を起こして中性子が発生するのですが、中には核分裂が起きてから遅れて発生する中性子もあり、この様な核分裂が起きてから時間をおいて発生する中性子の事を遅発中性子と呼びます。 遅発中性子が生じる原因は、核分裂が起きた際に生じる様々な種類の放射性核種の中に、臭素87という放射性核種が含まれており、この臭素87の原子核がβ線を放出して高いエネルギーを持つクリプトン87の原子核に変わった際に、それによって生じたクリプトン87の多くが中性子を放出してクリプトン86に変わるためです。 臭素87の半減期は55秒程度のものなので、2時間半も経った後では殆ど残ってはいない事になりますが、完全に0になる訳ではなく、極々微量の臭素87は残っていますので、その臭素87が発する中性子も、原子炉の再起動の際に寄与している可能性も、少ないとは言え、決して皆無ではありません。 【参考URL】 原子炉物理の基礎(9)中性子束の時間的変化 (03-06-04-09) - ATOMICA - http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=03-06-04-09 その他にも、ベリリウム等がα粒子を吸収する事によって発生する中性子も中性子源として考えられます。(こちらの場合は、原子炉として1度も稼働していない場合でも中性子源となり得ます) 但し、α線は物質を透過する力が非常に弱く、紙1枚すら透過する事が出来ない程ですから、ベリリウムの原子核がα粒子を吸収するためには、α粒子を放出した原子核のすぐそばに偶然にもベリリウムの原子核が存在していて、その上、そのα粒子が、無数に存在しているベリリウムではない物質の原子核に当たるのではなく、ベリリウムの原子核に命中する必要があります。 その様な条件を満たすためには、ウランの鉱石中に含まれているベリリウムの濃度が、それなりに高い濃度となっている必要があります。 ベリリウムの濃度が高いのは、ベリリウムの鉱脈の中であり、ベリリウム鉱脈はマグマの活動によって形成されるものだけです。 【参考URL】 ベリリウム - Wikipedia > 4 存在 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0#.E5.AD.98.E5.9C.A8 一方、オクロのウラン鉱床は河川の堆積作用によって形成されたものであり、マグマの活動とは無関係です。 【参考URL】 内閣府 原子力委員会 原子力のすべて > 第1章 原子力エネルギー(担当:井上) http://www.aec.go.jp/jicst/NC/sonota/study/aecall/book/pdf/1syou.pdf (5頁後半) そのため、個人的な推測になりますが、オクロのウラン鉱床中のベリリウムの濃度は、ベリリウムの鉱脈程には高くは無いのではないかと思います。 とはいえ、ベリリウムの濃度が極端に高いとは言えないというだけの事で、ベリリウムを全く含んでいないと限った訳では御座いませんから、オクロの天然原子炉においてもベリリウムのα粒子吸収が、原子炉の起動の際に寄与している可能性も、少ないとは言え、決して皆無ではありません。 因みに、アメリシウム等の超ウラン元素は、天然ウランの中には殆ど含まれておりませんから、一番最初に原子炉が起動した時には、α線の発生源となるのは、ウランそのものか、或いはラジウム等のウランが放射線を出して崩壊する事によって発生した放射性物質になります。
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ご回答ありがとうございました。 一度稼働すると、停止しても再稼働しやすくなるんですね。
- kagakusuki
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ウランの原子核が中性子を吸収する確率は、一般的には中性子の速度が遅い方が高くなる傾向があるため、核分裂連鎖反応は速い中性子では起き難く、遅い中性子では起きやすくなります。 核分裂によって生じる中性子は高いエネルギー(運動エネルギー)を持っていて、そのままでは連鎖反応を起こし難いため、原子炉の様に安定して核分裂連鎖反応を起こすためには、中性子のエネルギーを減少させなければなりません。 そのため原子炉では、燃料の周りを黒鉛や水で包み込み、黒鉛の中の炭素原子核や、水の中の水素原子核に中性子を衝突させる事で、中性子のエネルギーを奪ってから、ウラン等の核分裂に使う様にしています。 この様な、原子炉の中で中性子のエネルギーを奪って、中性子の速度を減速させる役目を果たしている物の事を減速材と言います。 又、原子炉の炉心の周囲を、減速材になりうる物質で覆いますと、中性子は周囲を覆っている減速材に当たって、原子炉の外に飛び出す確率が減るため、原子炉の中に跳ね返されます。 この様に、中性子を跳ね返すために配置されている部材の事を反射体と言います。 減速材が存在しなければ、核分裂を起こしやすいウラン235が中性子を吸収するよりも先に、核分裂を起こし難いウラン238の方が中性子を吸収し尽くしてしまうため、原子炉として稼働する事は出来ません。 オクロの天然原子炉は、豊富に供給される地下水が中性子の減速材となって、原子炉として稼働する事が出来ました。 そして、原子炉の熱で水が沸騰して、ウラン鉱床の中から無くなると、中性子が減速されなくなるため、連鎖反応が起きる確率が低くなるため、原子炉は停止していました。 オクロの天然原子炉は、地中に存在している上に、反射体となる水も豊富に存在していたため、もし鉱床の外部から中性子が飛来して来たとしましても、途中に存在している地層に吸収されてしまったり、途中に存在している水に跳ね返されてしまったりする事により、ウラン鉱床にまで到達する確率は非常に低くなると思われます。 これは、人工的に作られた原子炉の場合も同様で、原子炉の内部で発生した中性子が、原子炉の外部に出来るだけ漏れ出さない様にするために、炉心の周りを水或いは黒鉛の厚い層で覆った上で、更にその外側を鋼鉄製の容器や、放射線の吸収率を高めた特製のコンクリートなどで覆っています。 そのため、原子炉の外部で発生した中性子が、原子炉の内部に達する事は殆ど無く、当然、原子炉を起動させるきっかけになる事も殆ど無い事になります。 それはオクロの天然原子炉の場合も同様で、"最初の中性子"はウラン鉱床の内部で発生したものだと思われます。
お礼
ご回答ありがとうございました。 オクロの天然原子炉では、自発核分裂で発生した中性子が引き金になった可能性が高いんですね。
- Tann3
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ウランは、地球上に天然に(大量に)存在する最も重い(原子番号の大きい)元素ですが、完全に安定な元素ではなく、今でもウラン238の場合半減期約45億年、ウラン235の場合半減期約7億年で崩壊・減少しています(いずれもアルファ崩壊)。 何億年か前の「天然原子炉」では、半減期の差からわかるように、現在0.7%しか存在しない核分裂するウラン235が、何億年昔には現在の原子炉のように数%の比率であったと考えられます。(現在の原子炉では、ウラン235を3%程度に「濃縮」して使用している) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%83%B3 通常の原子炉や原爆では、点火用に中性子源を使うのが普通ですが、天然原子炉ではどうして着火したのか、というのがご質問ですね。 原子炉や原爆では、「確実に」着火させるために中性子源を用います。通常は、アメリシウム/ベリリウム合金などを用います。(アメリシウムから放出されるアルファ線がベリリウム9に当たって、炭素12と中性子になる。詳細はリンク先を参照してください。) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0 天然原子炉では、こういった人工的・強制的な着火ではなく、自然界に存在する原子核崩壊でできる中性子や、上に書いたアルファ線とベリリウムの反応のような自然界での核反応、宇宙線、ウラン自身の自発性核分裂といったものの結果で発生した中性子が、偶然に着火させたということだと思います。「確率は小さいがゼロではない」という、自然界にはよくあることです。 原子炉や原爆では、こんな流暢なことは言っていられませんので、確実に核分裂を開始させるため中性子源を使っているわけです。
お礼
ご回答ありがとうございました。 中性子の発生源が色々あるんですね。
- okormazd
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2次宇宙線の中に熱中性子がある。地上で数個[cm^(-2) s^-1]程か。もちろん自発核分裂でも発生するが。 http://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/20030063009_2003072789.pdf
お礼
ご回答ありがとうございました。
- maiko0318
- ベストアンサー率21% (1483/6969)
天然原子炉では、ウランに富んだ鉱床に地下水が染み込んで、水が中性子減速材として機能することで核分裂反応が起こる。 と書いています。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%81%AE%E5%A4%A9%E7%84%B6%E5%8E%9F%E5%AD%90%E7%82%89
お礼
ご回答ありがとうございました。
お礼
ご回答ありがとうございました。 中性子を当てなくても勝手に核分裂することがあるんですね。