私も,白水社『コスモス朝和辞典』と小学館『朝鮮語辞典』をおすすめします。
No.1の方も書かれているように,どちらも日本人学習者が使うという前提で編集されているからです。
韓国人向けの韓日辞典は昔からたくさんありますが,日本人向けのものは私が学び始めた頃はまだありませんでした。いい時代になったなあと思います。
たとえば,辞書をひくときは用言の活用形を原形に戻してひかなくてはなりませんが,韓国人向けの韓日辞典ですと,原形に戻せるのが当たり前ですので,いちいち活用形まで見出しに載せてありません。
(日本語の例でいうと,日本語の話者なら,国語辞典に「思わ」とか「思っ」といった見出しがをなくても,「思う」をひきますよね。)
しかし,これらの辞書では(特に変格活用の場合)こういった原形と異なる形を,かなり丁寧に見出しとして載せてあります。
また,ハングルでは書かれているとおりに発音しない場合がしばしばありますが(特に濃音化とかn挿入),両者とも原則としてすべての単語に発音記号が付いています。
『コスモス』は,収録語彙はそれほど多くはありませんが,助詞や語尾などの説明は実に詳しく,韓国人向けの辞典にはなかなか出ていないような語尾までしっかり載っています。
さらに,巻末の発音や文法の概説は,初心者向けとは思えない充実度といえるでしょう。
唯一残念なのが,漢字語の漢字表記が出ていないことですが,これは訳を見ればだいたい見当がつく場合が多いですし,他の韓日辞典には必ず出ていますので,必要なら他の辞書で補えばよいでしょう。
韓国語の辞書を引くときに何が難しいかというと,用言を原形に戻したり,一続きで書かれている言葉を品詞分解したり,という作業なのですが,『コスモス』や『小学館朝鮮語
』はそのへんへの配慮が大変行き届いています。
これらの辞書をひきまくっているうちに,言葉の仕組みへの理解がぐんとすすむのではないでしょうか。
ひとつ『コスモス』と『小学館朝鮮語』の違いを挙げておくと,用言の活用のとらえ方があります。
『コスモス』は,「語基」という概念を用いて,第1語基,第2語基,第3語基とあらわします。(東京外語大の授業で昔から使われているそうので,私は勝手に外大方式と呼んでいます)
一方,小学館の方では「語基」を使わず,従来の「連体形」とか「連用形」などの言い方をします。
NHKのテレビやラジオの「ハングル講座」でも,担当の講師によって,外大方式のこともあれば,従来方式のこともあります。
市販のテキストでは従来方式が多いのですが,個人的には外大方式の方がシステマチックで分かりやすいような気もします。
外大方式について詳しく知りたい場合は,菅野弘臣『朝鮮語の入門』(白水社),朝鮮語学研究会『朝鮮語を学ぼう』(三修社)がこの方式で書かれていますので,ご覧下さい。
他に日本人向けの辞典というと,大阪外国語大学が編集した『朝鮮語大辞典』という全3巻の大きな辞典がありますが,残念ながら今は絶版です。(一度図書館などで見てみてください)
例文に小説や新聞記事などの実例が豊富に用いられているのが特徴といえるでしょうか。
ただし,必ずしも初心者には使いやすいとはいいがたいと思います。
別に辞書のできが悪いという意味ではなく,一般に辞書では「大は小を兼ねない」のです。
自分にあった辞書を選ぶのが大事だと思います。
お礼
辞書の細かい説明を長い文章にわたってして下さってありがとうございました。参考にさせていただきたいと思います。辞書は皆さんがおススメしてくださっている「コスモス朝和辞典」と「朝鮮語辞典」を購入したいと思います。朝鮮語大辞典というのも図書館で探してみたいと思います。