ナショナル・アイデンティティとの意味からすれば、そうした類のものはアメリカにはないでしょうね。現在の「アメリカ」は移民によって人工的に作られた国家であり、先住民族としてのネイティブ・アメリカンとの間に「かつて自分達がされていたこと」と同じことを「立場を変えて」行うことで、新しい国作りの基盤としましたから、本筋からみれば「新アメリカ人」もデラシネ(漂泊者)と同じです。
ネイティブアメリカンならば「口承」などの形で祖先の物語も残っているはずですが、それを体系化する作業は未完のままです。そうしたマイノリティと共にアフリカから奴隷として売買されてきた方々にも「故郷」はあり、そうした彼らの文化を再構成したものの一つに、ジョージ・ガーシュウインのオペラ作品『ボギーとベス』やジャズ・ゴスペルといった音楽文化に現れてもいます。
このご質問の前提である「アメリカ人」と「アメリカ人の心」についての説明がなされない限りでは、お応えしようもありません。「アメリカ人」とは人種ではなく、「アメリカ国籍を有する者」ですから、アーノルド・シュワルツネッガーの様にオーストリア系移民を先祖に持つ場合もあれば、先のガーシュインはユダヤ系のロシア移民です。現在のオバマ大統領はアフリカ系移民を先祖とする方ですから、オバマ大統領にはオバマ大統領のルーツがあることになります。
日本でも同様に、当初から日本列島にいた人だけが日本人の祖先であることにもならず、アイヌ民族にはアイヌ民族の、琉球民族には琉球民族、更には渡来系の民族には渡来系の「それぞれの物語」があることも、お忘れのないように。
最後に「日本昔話」に代表される「おとぎ話」は室町時代の『御伽草子』やそれ以前から各地に伝わる民間伝説を子ども向けに再編したものであるとのお話を付け加えさせていただきます。
強いていうならば「フロンティア・スピリット」がそれに相当するかとも思われますが如何でしょう。
お礼
お礼が遅くなってしまい申し訳ございません。 とてもお詳しいようで、まだ日本の観念で考えてしまっていることに気がつきました。 参考にさせて頂きます。 回答ありがとうございました。