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日商簿記1級:在外支店と在外子会社の財務諸表の件
日商簿記1級を独学で勉強しており、 在外支店と在外子会社の財務諸表の作成手順で疑問が生じました。 在外支店はB/S換算⇒P/L換算 在外子会社はP/L換算⇒B/S換算 テキストにはそれぞれ上記の順番で換算すると記載されていますが、 なぜこの順番なのかその根拠がわかりません。 ご存知の方がいましたら、ぜひアドバイスお願いします。
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こんにちは。 >テキストにはそれぞれ上記の順番で換算すると記載されていますが、 なぜこの順番なのかその根拠がわかりません。// 非常に重要な疑問だと思います。単に暗記するだけでなく、こういう疑問を持ちながら勉強すると理解も早いと思います。 ご質問の回答としては、その順番でしか解けないということが理由ですが、そこには4つの要因があると思います。 (1)外貨取引に関するルールから導き出されること (2)それぞれのF/Sを作成することにより求めるべきものが何かということ (3)B/SとP/Lとがどう連携しているかという特性 (4)支店と子会社の違い まず(1)より、ルールの確認をしましょう。 「外貨建取引等会計処理基準」によれば、外貨建取引の原則は、 (a)取引時には取引発生時の為替相場による(基準一1.) (b)決算時には貨幣性資産はCR換算する(基準一2.) とあります。となると、基準一1.より棚卸資産や費用性資産はHRのままということになります(棚卸資産の収益性低下の場合のみCR換算)。 在外支店のF/S換算では 原則として (c)本店と同様に処理(基準二1.) であって、外国通貨表示の支店の特例として (d)収益・費用項目はARでもよい(基準二1.ただし減価償却費など費用性資産の費用化はHR適用) とあり、さらに (e)本店勘定以外のB/S項目はCR換算でもよい(基準二2.) となり、(e)の場合には (f)損益項目もCR換算してもよい(基準二2.) となっており、(d)から(f)に向かって次第に容認規定が緩くなっています。試験的には(d)までを適用というところですね。したがって(e),(f)はとりあえず無視。 つまり、(a),(b),(c)が活きています。 在外子会社のF/S換算の場合には、 (g)資産・負債はCR換算(基準三1.) (h)資本(純資産)はHR換算(基準三2.) (i)収益・費用はAR換算だが親会社との取引には親会社の換算レート使用(基準三3.) (j)換算差額、つまり(g)と(h)差額は為替換算調整勘定として記載(基準三4.) とあり、また(i)の特例としてCR換算を容認ですが、これは試験的には無視。 在外子会社の場合、支店と違って、「親会社と同様に処理」という原則がありません。合わせるのは取引発生時のみです。別会社だからです。したがって(a),(b)は適用されません。 次に(2)ですが、実務的にも試験的にも、当期純利益の他に以下の項目が計算できるかが求められていると思います。 在外支店 :為替差損益 在外子会社:為替換算調整勘定 この段階まで見て、在外支店と在外子会社では何ができて何ができないか見てみましょう。 在外支店の場合、P/Lでは収益と費用は換算できます(上記dより)が、その差額は当期純利益ではなく為替差損益も含まれた金額です。B/Sはあとで説明します。 在外子会社の場合、P/Lにある当期純利益はAR換算するだけ(上記i)です。為替差損益は親会社との取引のみで発生する(上記iより)ので、親会社との取引のある収益・費用項目を注意深く換算するだけで為替差損益は差額で計算できます。在外子会社の場合、P/Lの方が簡単に計算できるのです。勘定式P/Lを作ると楽ですよ。 さらに(3)ですが、P/Lで計算された当期純利益はB/Sでは純資産の変動項目になることはお分かりと思います。つまり純資産に他の変動要因がない場合、 当期純利益=収益-費用=期末純資産額-期首純資産額 となります。これを在外支店と在外子会社で見てみましょう。 在外支店・・・こちらは支店ですので純資産に該当するものは本店勘定です。本店勘定は本店の支店勘定と同額です(上記cより邦貨額は同額になるはず)のでB/Sの項目のうち、資産・負債を換算し(上記bより)、資産-(負債+本店勘定)を計算すればそれは当期純利益になります。P/Lから計算するのと違って為替差損益を含みません。つまりB/Sから当期純利益が算出でき、P/Lから算出した収益-費用との差額から為替差損益が算出できるのです。これが在外支店はB/Sから計算することの理由です。 在外子会社・・・期末純資産額は資産-負債ですから、資産・負債ともCR換算で差額である期末純資産額が出ます(上記gより)。一方、在外子会社は親会社とは別の会社ですから、実際には配当があったり、増資があったりします。従って期末純資産額は、 期首純資産額-配当金等の社外流出+増資等+当期純利益 で計算することになりますが、すべてHR換算(上記hより)ですから、資産-負債で計算した純資産額と差額が出ます。これが為替換算調整勘定です。在外子会社の場合、純資産の変動額の計算があり、それはP/Lから算出した当期純利益を用いないと計算できないため。P/Lから先に計算するのです。 最後に(4)ですが、すでに(1)の説明で述べてしまいました。 支店:あくまで同一会社なので本店に合わせるのが原則 子会社:別会社なので親会社との取引以外は親会社に合わせる必要はない。 こんなところです。
お礼
Major123さま 詳細で非常にわかりやすい解説をしていただき、ありがとうございました。 テキストでは「在外支店は本社の一部、在外子会社は別組織」という結論しか記載されてなく、また会計基準を読んでも繋がりが把握できていませんでしたが、『外貨基準の内容、各財務諸表の作成目的とその関連性という観点から作成順序が異なる』という背景が理解でき、疑問が解消しました。 この説明を何度も熟読し、会計基準とも照らし合わせながら、さらに理解を深めて行きたいと思います。あらためて詳細な解説をしていただき、本当にありがとうございました。