女の子が自分のことを「ぼく」というのは、最近始まったことではなく、120年以上昔の明治時代の女学生のころまでさかのぼります。
孫引きで恐縮ですが、明治18(1885)年発行の「女学雑誌」第4号に掲載された巌本善治「梅香女史の伝」にはすでに女学生が「~君」「待ち玉へ」「僕ら」などの書生(男子学生)言葉を使っていると指摘されていて、明治38(1901)年3月16日の読売新聞「女学生と言語」には女学生が○失敬なんだよ ○君 ○僕 ○君遊びに来玉へな などの男子学生の言葉を使っていると書かれているそうです。(「若者語を科学する」米川明彦著201~203頁 明治書院1998年発行)
余談ですが、昭和51(1976)年に松本ちえこという歌手が、タイトルがそのものずばり「ぼく」という曲を歌いました。
「ぼく 高校の今2年生」で始まるこの歌の主人公の「ぼく」は「オレンジがすきで スヌーピーがお気に入り」の女の子で、「いつか誰かとめぐり逢い いいお嫁さんになりたい それがぼくの夢なんだ」という結びの歌詞が妙に印象的でした。
明治時代から昭和・平成の現在までいつの時代にも「ぼく」という女の子はいたのでしょうけれど、明治時代には批判的に扱われていたものが、昭和50年代には「かわいい」と見られるようになっていたのではないかと思います。平成時代の小・中・高でも同じクラスに何人かは「ぼく」という女の子がいたと娘が話していました。