高校生物の図録などを参照するとよく分かると思います。
IPS細胞もES細胞もいわゆる万能細胞といわれています。その理由は,例えば,ヒトの万能細胞1つから完全な個体を作成することができるからです。つまり,どんな分化もすることが可能な細胞ということです。このことを自然界では受精卵のみができることです。つまり,単細胞から個体を作り上げるという過程は,生殖・発生しかないのです。この過程を人為的に行わせることができるのが,ES細胞やIPS細胞なのです。つまり,クローン人間を作成することができる細胞と言うことになります。
さて,これら万能細胞の現実的な使用としていくつか試みられていますが,その一つが医療のための臓器再生です。例えば,肝機能が著しく低下したとすると,それは死に直結します。もし,肝移植しか治療の術がないとすれば,これまでは神にドナーが現れることを祈る他はありませんでした。しかし,万能細胞で肝臓を作成し,移植するということが現実味を帯びてきたのです。ただし,ES細胞には倫理上の問題が山積しています。それは,「胚性幹細胞」だからです。これはざっくり言うと胎児の細胞ということになります。まだ,心臓もできていない胎児これは専門的には胚と言います。この胚はこれから,いろいろな臓器に分化できる,いわゆる未分化細胞で今後分化していきます。その細胞を再生医療で使うと言うことは,生まれるべき人をそのまえに殺してしまうということになります。ですから,このES細胞の利用には大きな抵抗があります。しかしながら,IPS細胞は「体細胞性幹細胞」といって,例えば自分の皮膚の細胞の一部に存在します。ですから,自分の細胞で自分の臓器をつくることになりますので,他人に迷惑はかけませんし,拒絶反応も起こりません。この点からは倫理的な課題はES細胞より小さいと思われます。