リン酸化はある意味議論が難しいので、それだけでトータルの量が増えたことが原因と結論
づけるのは難しいと思われます。
たとえばリン酸化阻害剤を加えるとリン酸化活性は確かに抑えているもののリン酸化が逆
に上昇するといったことが見られる場合も多々あるのです。
S6キナーゼの細かい分解機構などにあまり詳しくないのでわからないのですが、一般的には
リン酸化というのは基底レベルでも少しはリン酸化されているのですが、フォスファターゼに
よってすぐに戻されるといった機構によって制御されています。刺激によってリン酸化が
急激に高まっても、結局下流のフォスファターゼの活性にも影響を与えるため、すぐに
フィードバックがかかって落ちてくるのも時間変化を見ればわかると思います。上記の阻害剤
による効果などもそれが一因となって一見すると矛盾するような結果になると言われています。
そもそもリン酸化を受けるために刺激依存的にリクルートされれば、通常はすぐに分解されている
にも関わらずそれによって安定化するといったことも考えられます。よって結論からのべると
「リン酸化を受けるための刺激によって局在したことが安定化させた」とか、「リン酸化された
ものが速やかにネガティブンフィードバックされて分解されていたものが、刺激によってリン酸化
状態が安定化したため結果全体的な量が増加した」とか、もちろん転写が活性化した可能性も
いえるでしょうが、いずれにせよどれが「原因」でどれが「結果」なのかを判断するにはより
細かいメカニズムの検討が必要かと思います。有名なAktのシグナルでも近年論文は出ていますし、
細かい制御はまだ完全にはわかっていないのだとおもいます(特に活性型変異とかに関して)。
お礼
早速のコメントありがとうございます。 ホスファターゼによるリン酸化の可塑性は非常に難しいですね。 時間依存的にタンパクを回収してもリン酸化分子は発現量に「ゆらぎ」がありましたが、それはご指摘されたNegative- feedback機構が潜在していると考えられますね。 今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。