このご疑問の趣きは、少し考えてみるとかなり手ごわいと思われますが、とまれ次のような傾向からアプローチしてみました。
1.イカレる
「いかれる:してやられる。「うまいことイカレた」」京都・大阪(東京堂出版「全国方言辞典」)
「いかれる」という地域色のある動詞では「イカレ」るで、たとえば「イカレコロ」でしてやられた意味で、「コロッといかれてもうた」の転倒語。関西では動詞の連体形「イカレ」が、例えば獅子文六の「イカレ・ポンチ」などともなって、あるいは「イカレ」という名詞形としても使われるようになったのでしょう。
テカテカ光るのが「テカる」、まずい失敗が「マズる」のような、「~る」の5段動詞化として見ても「イカレる」と送る意識が自然でしょうか。
2.いかれる
「いかれる:(2)頭の働き、考え方がまともでなくなる。おかしくなる。馬鹿になる。狂う。特に終戦後、不良仲間から一般に流行。(東京堂出版「日本俗語大辞典」)
こちらは動詞「いく」の未然形「いか」+可能の助動詞「れる」の終止形と見たら、「イカれる」の表記が自然になります。
これは、あるいは「いく」の可能動詞「いける」やその俗語「いかす」の素晴らしいという意味に対抗した、ブラックで逆説的な表現と見ることもできそうです。
3.いかれる
「いかれる:(3)古びて悪くなる。おかしくなる。壊れてダメになる。(東京堂出版「同上」)
こちらは動詞「いく」の未然形「いか」+自発の助動詞「れる」の終止形と見たら、こちらも「イカれる」の表記が自然になりそうですが、「エンジンがイカレる」という風に関西圏では「イカレる」の方が自然なのかも知れません。
上のように、1.地域語、2.可能の動詞パターン、3.自発動詞など、「いかれる」の幾つかのパターンごとに使い分けている例としては、戦後から高度成長前期に活躍した獅子文六の幾つかの小説の対比でも確認されそうです。
ところで、このような動詞など活用語の語幹相当部をカタカナ表示するケースとしては、音声(発音)や音(オノマトペ)の場合に準じて、一般的ではない専門用語や特異な隠語・俗語であることに限定された表記であることを際立たせる用法と見做せるでしょう。
若者用語では「ガッコのベンキョ」「ウザい」「キモい」などと数知れません。
お礼
ありがとうございました。 大変勉強になりました。