カレーを一晩寝かせるとおいしくなると言われていますが、テレビの料理番組などでもその根拠を明確にしていませんね。あなたのおっしゃるように、まろやかになることとカレー本来の味が増すこととは違うような
気がします。
実は複数の根拠があります。主なものとして…
(1)水分で煮られたものは、煮られている間は材料の持つ水分が膨張するため、中から外に水分を押し出そうとする力が強いのです。加熱が終わって冷めていく時に収縮が始まりますから、火を止めて冷ますことで具材に味がしっかりと入るのです。(煮物などで一度冷ましてから再び過熱するのはこの原理を応用します)カレーも火を止め、中の食材に煮汁の味を吸わせることで、より味わいが濃くなります。つまりルーがおいしければ、当然具材にもそのおいしさがしっかりとしみわたるということです。
(2)「寝かせる」ということは「熟成させる」ということです。カレーは、塩辛さ、甘さ、辛さ、苦さ、酸味、旨み、スパイスの刺激、芳醇な香りという、大きく8つの味成分でできた食品です。これらを熟成させることで、様々な物質を形作っている『分子』は、大きいものの間に小さいものが整然と収まっていくように、ある程度の規則性を持って並びます。(ウィスキーの水割りは、混ぜたて作りたてのものよりも、いったん水で割り、1週間程度冷蔵庫で寝かせたものと飲み比べてみると私の説が間違いないことがわかります)そうなると味わいにも大きく影響が出て、口当たりが格段に良くなります。この「口当たりが良い」ということもおいしさの条件のひとつなのです。
(3)「寝かせる」つまりゆっくり冷ますことは、当然スパイスの辛みも半減します。しかしカレーを翌日食べるためには再び過熱しますよね。その時にスパイスの香りはある程度しか元に戻りません。あなたの言うように辛くなくなってしまうこともありえます。しかしながら、作りたての時よりも全体に調和が取れた味にはなります。私はスパイシーなカレーが好みなので、いったん一晩寝かし、落ち着いた、調和のとれたカレーを作り、翌日に加熱する際に、ガラムマサラを少量、フライパンで空煎りしてから加えます。
まだ他にもいっぱい書きたいことはあるのですが、紙面の関係でこれぐらいで勘弁して下さい。
しかしおいしくなる原理はおわかりいただけたかと思います。
お礼
なるほど、わかりました。 ありがとうございます。