●仰る意味での対称性は自明に成り立っています。
stomachmanが書いたKautz digraphの定義において、語をノード(頂点)と同一視していることがポイントです。アルファベットAの要素を適当な順番で枚挙したものS=<a[0],a[1],a[2],a[3],......,a[d]>を決めて、写像fをたとえば
f(a[d])=a[0], f(a[n]) = a[(n+1)] (n=0,1,....,d-1) z
と定義します。さらに語x=<x[1],x[2],....,x[k]>に対しても、
F(x)=F(<x[1],x[2],....,x[k]>) = <f(x[1]),f(x[2]),....,f(x[k])>
と定義します。
すると、あるKautz digraph K(d,k)に対しても
F(K(d,k)) = K(d,k)の各ノードxをf(x)で置き換えたもの
が定義できます。このとき、F(K(d,k))=K(d,k)となることはK(d,k)の定義から自明でしょう。一般にSをどのように並べても良いし、fは置換でありさえすれば何でも良い。
この先、厳密な証明を書き上げるのはお任せしましょう。
●また、再帰構造をしているか(あるサイズのKautz digraphを、更に小さいサイズのいくつかのKautz digraphに分解できるか)に関しては、きちんと議論するには再び「分解」の意味を確認する必要がありそうですが....
d=2ぐらいで見ているとdを変えたときに再帰的になっているような気がするかも知れません。ですが、たとえば(A-{a[n]})というアルファベットを使って作られるグラフK(d-1,k)[n]は、K(d,k)の中に埋め込まれています。もちろん取り除く文字がn=0~dのどれであってもK(d-1,k)[n]はK(d-1,k)と同型です。K(d-1,k)[n]の語のうち、文字a[m](m≠n)をa[n]で置き換えたものを考えると、これはK(d-1,k)[m]に他なりません。文字a[m]もa[n]も含まない語だけによる部分グラフK(d-2,k)[n,m]は、K(d-1,k)[n]とK(d-1,k)[m]に共通です。だからK(d,k)はK(d-1,k)[n]とK(d-1,k)[m]とには分解されません。
●むしろ「再帰性」と仰っているのは以下のような意味ではないでしょうか。
K(d,k)の語の集合をW(k)とします。K(d,k)において語 <pqR> (1文字目がp、2文字目がqでその後に長さk-2の文字列Rが続く語)から出ているアークが繋がっている語の集合は{<qRc>|∀c∈A∧<qRc>∈W(k)}ですが、<sqR>(∀s≠p)に対しても{<qRc>|∀c∈A∧<qRc>∈W(k)}が繋がっている。K(d,k-1)を考えます。つまり語の最初の文字が何であっても同一視し、K(d,k)の語d個づつを一つにまとめてしまうことにします。すると、K(d,k)における<pqR> も<sqR>(∀s≠p,q)も一つの語<<qR>>にまとめられてしまい(K(d,k-1)の語は<<>>と書くことにします。)つまり<<qR>>={<pqR>|∀p∈A∧<pqR>∈W(k)}、それに繋がるのは{<<Rc>>|∀c∈A∧<<Rc>>∈W(k-1)}である。ここに<<Rc>> = {<qRc>|∀q∈A∧<qRc>∈W(k)}。
そこでK(d,k-1)において、<<qR>>→<<Rc>>という、一対の語と一つのアークにまとめられちゃったものが、もとのK(d,k)ではどういう構造を持っていたかを反省してみますと、まず
{<pqR>|∀p∈A∧<pqR>∈W(k)}→{<qRc>|∀q∈A∧<qRc>∈W(k)}
というアークに関してはそのまんま束ねられただけです。問題は{<pqR>|∀p∈A∧<pqR>∈W(k)}の要素間でのアークがどうなっていたかですが、<pqR>∈W(k)だからp≠qであり、従って{<pqR>}の要素同士の間にはアークは存在しない。また、{<qRc>|∀q∈A∧<qRc>∈W(k)}の内部でのアークはどうか?これも最後の文字が全部同じcであるから、相互にアークは存在しない。
従ってK(d,k)の語長kの語(互いにアークはない)について、最初の文字だけが異なる物をd個まとめて語長(k-1)の一つの語と見なすという操作は、実に単純な構造を持っています。この縮約をkをひとつづづ減らしながら幾らでも行うことができ、最後にK(d,1)に行き着きます。これは(d+1)角形の完全グラフに他なりません。
たとえばK(2,3)位で眺めてみる(Excelか何かで、グラフを行列で表現してみる)と、K(2,2)と同じ構造をしているのがよく分かると思いますよ。
◎ついでながら、ぜひKautz digraphがどんな分野でどのように使われるものなのか、簡単な解説を補足していただけないでしょうか。Stomachmanも今回初めて勉強したもんですから....この話専門的すぎて分かんない、という方(stomachmanを含む)のためにも。
補足
stomachmanさん >やっぱり専門家に出てきて貰わんと いやいやいや、ここで書かれていることは相当(あるいは完璧に)的を射ていると思いますよ。私がstomachmanさんを混乱させてしまったのは、言葉をちゃんと定義できなかったからです(対称性についてもそうです)。 ホントにグラフプロパーの方じゃないんですか?