- ベストアンサー
太陽電池に関する疑問
- 単結合から二重結合になると電子が流れ、また三重結合の時も流れるということを知りましたが、なぜ三重結合は不安定なのでしょうか?
- 宇宙での太陽光の波長がフラットの場合の太陽光発電(単色のみに対応しているパネルを用いて)をする時の最適の波長はどこになるのか?
- グレッツェルさんは色素型にはTiO2が最適と見つけましたが、なぜ他の物質ではないのか?
- みんなの回答 (6)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
zuiriku18さんは高校生だったのですね(zuiriku18さんの過去の質問を拝見しました)。色素増感太陽電池を研究テーマとした大学生かと思っていました。計算はたぶん理解できなかったのではないでしょうか。 >発電量も分光の方が2倍 タンデム型も分光型も、理想的には発電量は同じです。簡単のために、入射光のスペクトル強度は一定でηmin からηmax の波長範囲にあるとします。また太陽電池パネルは2種類のバンドギャップを持った半導体でできているとし、それぞれのバンドギャップ波長 λg が (ηmin + ηmax)/2 と ηmax になっているとします。入射光のスペクトルのうち、ηmin から (ηmin + ηmax)/2 の波長範囲の光は、タンデム型の一番上の層(または分光形の一方のパネル)で吸収され電力に変換されます。その下の層(または分光形のもう一方のパネル)では残りの (ηmin + ηmax)/2 からηmax までの波長範囲の光が吸収され電力に変換されます。それぞれの発電量は P1 = (A/2)*[ { (ηmin + ηmax)/2 }^2 - λmin^2 ]/{ (ηmin + ηmax)/2 } P2 = (A/2)*( λmax^2 - { (ηmin + ηmax)/2 }^2 )/λmax となります。入射光量は P0 = A*( λmax - λmin ) ですから、全体の変換効率は η = ( P1 + P2 )/P0 = ( 1/8 )*( ηmin^2 +10*ηmax*ηmin + 5*ηmax^2 )/{ (ηmin + ηLmax)*ηmax } です。ηmin = 400nm、ηmax = 800nm としたとき、η = 0.854 になります。太陽電池パネルが1種類のバンドギャップでできている場合、λg = ηmax のとき η が最大となりますが、その最大値は (1/2)*( 1+ λmin /λmax ) = 0.75 なので、バンドギャップ波長 λg が異なる半導体を使った構造(マルチバンドギャップ型)のほうが単一バンドギャップの太陽電池よりもエネルギー変換効率が大きくなります。上の例ではηmin からηmax の波長範囲を2分割した場合ですが、分割数を2より大きくすればエネルギー変換効率をさらに大きくできます(同じように計算できます)。 >標準スペクトルのλminとλmaxは何になっていると考えればいいのでしょうか? ANo.4で紹介したExcelファイルには280nmから4000nmの範囲の波長に対応するエネルギー密度が出ていますが、そのC列のデータがこのグラフ( http://pvcdrom.pveducation.org/APPEND/Spectra.png)の中の青色(AM1.5 Global)です。300nmから2500nmの波長範囲外の強度はほとんど 0 なので λmin = 300nm、λmax = 2500nm とすればいいです。
その他の回答 (5)
- inara1
- ベストアンサー率78% (652/834)
>タンデム型の場合、P1の層で吸収できる波長はηmin~(ηmin + ηmax)/2でも、入射光はηmin~ηmaxの波長が入っている そういう意味ではP1層だけだと効率は悪いです。半分かどうかは、P1/P0 と P2/P0 を比較すれば分かります。 >標準スペクトルはλmin = 300nm、λmax = 2500nm で考えればいいのですね 200nmから4000nmまでのデータで計算してもいいです。 >次回その体験をもとに発表をすることになっているので、調べていました そうだったのですか。最初の質問の(1), (3), (4) は回答が来ないですね。私は有機や色素増感についてはよく分かりません。
お礼
何度も有り難うございました。 発表の時間が短いので、波長についてのみすることにしました。 それと調べていると、まだ二酸化チタンについては謎な部分が多いみたいなので、あまり知識がない人が触れないほうがいいかなと・・・。
- inara1
- ベストアンサー率78% (652/834)
>単純な集光型はパネル面積が減り、コストを抑えられると聞きました 集光型では、集光しない場合よりもパネル面積は減りますから、集光型のほうがパネルのコストを抑えられるの確かです。ただし、集光と追尾のためのコストが上乗せされます。集光型に力を入れているのは、化合物半導体を使ったマルチバンドギャップ型(タンデム構造)のパネルが多いのですが、この種のパネルは非常に高価なので、集光してパネル面積を小さくしないとSi太陽電池に太刀打ちできません。普通のSi太陽電池でも集光式にすればパネル面積は減りますから、同じような集光系と追尾システムを使うなら、やはりSiを使ったパネルのほうが、発電量あたりのコストは安くなると思います(同じ受光面積での発電量はSiのほうが劣ります)。集光型でも1000倍とか極端に大きい集光率は、現実にはパネルの発熱の問題があって難しいと思います(入射光エネルギーの半分以上は熱になるので、1000倍も集光したら、虫メガネで紙を焼くような状態になります)。そのため、現実的には100倍程度の集光率が上限だと思います。100倍程度の集光率の集光・追尾系を持つマルチバンドギャップ型太陽電池と、集光・追尾系のないSi太陽電池とを比較して、どちらが発電量あたりのコストが安くなるかですね。 >分光がとてもコストがかかるということなのでしょうか? 損失が少なく反射率の切れがいいダイクロイックミラーは高価ですが非常に高価ということはないと思います。大面積も必要ないですし。集光レンズは大面積が必要ですが、樹脂製のフレネルレンズにすればそれほど高価ではないでしょう。一番高価なのは、太陽を追尾するシステムでしょう。太陽の動きは毎年同じですからプログラムすれば済みますが、1m角くらいの箱を毎日、東から西に動かす装置は、強風・積雪対策も含めると、頑丈にしなけれならないのでかなり高価になると思います。こういうシステムは家庭用はちょっと無理だと思います。 >太陽光の波長を考える時は、最小0から最大2500nmですか? AM1.5 という標準スペクトル(1m^2で1kW)を使うのが普通だと思います。このスペクトルはWebで公開されています(http://pvcdrom.pveducation.org/APPEND/AM0AM1_5.xls のC列のデータ)。数値データなので、効率計算は数値積分が必要ですが、これを使って計算するのが最も現実的です。 有機の太陽電池は有望だと思います。変換効率は良くないですが、安価であれば面積で発電量を稼ぐことができます。シート状にできれば搬送も保管も楽ですし、どこにでも設置できます。今のSi太陽電池パネルや集光型システムのような頑丈な筐体は必要ないでしょうからかなり低コストになると思います。
お礼
なるほど、とても勉強になりました。 有り難うございます。 気になったことがあるので質問します。 タンデムと分光について。 タンデムは層ごとで大半の波長に対応してますが、入射スペクトルは広いままですよね? ということは、タンデムと分光に同じ光量を照射した場合、ηmaxの式からすると、おおよそ、タンデムは1/2で分光は1になりますよね。 だとすると、発電量も分光の方が2倍ということで、あってますか? それと、標準スペクトルのλminとλmaxは何になっていると考えればいいのでしょうか? inara1さん何度も回答、本当に有り難うございます。
- inara1
- ベストアンサー率78% (652/834)
>実際のパネルでも太陽光を直接ではなく、光を分けて使った方が効率がもの凄く上がるはずなのに、なぜそうしないのでしょうか? まだ研究段階ですが、そういうパネルが実際に作られています(英語です http://www.udel.edu/iec/Publications/DARPA_22nd_EUPVSEC.pdf)。太陽光をダイクロックミラーで色分離(分光)して、バンドギャップエネルギーが異なる半導体からなるパネルを並べたものに照射することで、太陽光スペクトル全体を有効利用できるので、これまでの太陽電池で報告されているエネルギー変換効率で最も高い値(42.9%)が報告されています。ただし、このような方式は、集光や色分離の構造が必要ですし、太陽光を追尾する必要もあるのでかなりコスト高になります。面積あたりの発電量ではSiに勝りますが、発電量あたりのコストはSiよりはるかに高くつきます。 バンドギャップエネルギーが違う半導体からなる発電パネルを別々に並べるのでなく、積層して面積が大きくならないようにしたパネルも試作されています(これは人工衛星用に使われているようです)。短波長を吸収する層(Egの大きな半導体)を一番上にし、一番下には長波長を吸収する層(Egの小さな半導体)を配置することで、同じ面積のSi太陽電池よりも多くの発電量が得られます。このような太陽電池をタンデム型といいます(5ページ http://ee.shinshu-u.ac.jp/~e-device/lecture/optoelectronics-B/optoelectronics2008-11.pdf)。これは外見上は1枚のパネルですから、上の分光方式のような大掛かりな構造は必要ありません。欠点は、材料が化合物半導体なので大きな面積のものが作れないこと、面積あたりの価格が非常に高いことです。そのため、コストは高くてもいいから、限られた面積で発電量を多くしたいという用途(宇宙用)でしか使われていません。 >入射スペクトルの幅はその色素の波長に合わせると良いということですが、これはその色素の吸収スペクトルとは関係なしに言えるのでしょうか? 色素の吸収スペクトルの形にもちろん依存します。波長によって吸収係数が小さくなると入射した光子は100%利用されなくなるので変換効率は下がります。前の回答では量子効率を100%としましたが、量子効率が波長によって変わるとすれば変換効率が計算できます。 >理想の波長のところに、吸収することができる波長がなければ発電することができないと思うのですが・・・。 色素については素人なのですが、いろいろな吸収波長を持つ色素を使えば、上のタンデム型のように、太陽光スペクトルを有効に使ったパネルはできると思います(実際タンデム型の色素増感太陽電池というのが研究されています)。
お礼
回答有難うございます。 タンデムは知っていたのですが、分光+集光は知りませんでした。 コスト高になると書いてあるのですが、 単純な集光型はパネル面積が減り、コストを抑えられると聞きました。 ということは、分光がとてもコストがかかるということなのでしょうか? コスト高になると書いてあるので、そうなのでしょうけど・・・。 プリズムのように簡単に分けれるような話しではないのですね。 また、入射光なんですが、太陽光の波長を考える時は、最小0から最大2500nmですか? 色素の場合は、吸収波長と色素自身の波長の二つを考えながらということですね。
- inara1
- ベストアンサー率78% (652/834)
>フラットの場合どこの波長に対応させても同じ発電効率だと考えました 計算してみると同じにはなりませんでした。 >もしも波長がフラットの場合 その場合、スペクトル幅が無限に広いとエネルギーが発散してしまうので、短波長側の下限をλmin [m] 、上限をλmax [m] とすることにします。その波長範囲でスペクトル密度が一定で A [W/m^2/nm] と仮定すると、波長幅λ~λ+dλの範囲に含まれる光子密度 N(λ) [個/m^2/nm/s] は N(λ) = A/(h*c/λ) = A*λ/(h*c) で表わされます。h はプランク定数 [J・s]、c は真空での光速 [m/s] です。 一方、太陽電池を構成する材料のバンドギャップエネルギーを Eg [eV] とし、入射光子のエネルギーが Eg より大きい場合、入射光子がすべて電子-正孔対に変換される(量子効率100%)と仮定します。太陽電池によって電子-正孔対に変換される光は バンドギャップ波長 λg = h*c/(q*Eg) より短波長の光だけなので( q は素電荷 [C] )、変換される電子-正孔対の総数 N [個/m^2/s] は、λg の大きさによって3つに場合分けされ (1) λg < λmin のとき 光は吸収されないので N = 0 (2) λmin ≦ λg ≦ λmax のとき λmin ~ λg の波長範囲の光だけが電子-正孔対に変換されるので N = ∫[λmin~λg] N(λ) dλ = ∫[λmin~λg] A*λ/(h*c) dλ = (A/2)*( λg^2 - λmin^2 )/(h*c) (3) λmax < λg のとき λmin~λmaxの波長範囲の光すべてが電子-正孔対に変換されるので N = ∫[λ=λmin~λmax] N(λ) dλ = (A/2)*( λmax^2 - λmin^2 )/(h*c) となります。 したがって、単位面積あたりの短絡電流 Is [A/m^2] は Is = q*N = 0 ( λg < λmin のとき ) = q*(A/2)*( λg^2 - λmin^2 )/(h*c) (λmin ≦ λg ≦ λmax のとき) = q*(A/2)*( λmax^2 - λmin^2 )/(h*c) (λmax < λg のとき) 開放電圧 Vo [V] は、バンドギャップに相当する電圧と仮定すれば(光量が充分大きい場合) Vo = Eg = h*c/( q*λg ) したがって単位面積あたりの発電量 P [W/m^2] は、フィルファクタ(FF)を 1 と仮定すれば P = Is*Vo = 0 ( λg < λmin のとき ) = (A/2)*( λg^2 - λmin^2 )/λg (λmin ≦ λg ≦ λmax のとき) = (A/2)*( λmax^2 - λmin^2 )/λg (λmax < λg のとき) 入射光の総エネルギー密度 P0 [W/m^2] は Po = ∫[λmin~λmax ] A dλ = A*( λmax - λmin ) なので、エネルギー変換効率 η は η = P/P0 = 0 ( λg < λmin のとき ) = (1/2)*( λg^2 - λmin^2 )/{ λg *( λmax - λmin ) } (λmin ≦ λg ≦ λmax のとき) = (1/2)*( λmax + λmin )/λg (λmax < λg のとき) η が最大となるのは λg = λmax のときで、その最大値は ηmax = (1/2)*( λmax + λmin )/λmax = (1/2)*( 1+ λmin /λmax ) --- (1) となります。λmin < λmax なので λmin /λmax が 1 以上(ηmax が1以上)になることはありません。最初にスペクトル幅に制限を設けましたが、これが非常に広い場合、λmin /λmax が 0 に非常に近いということですから、式(1)の最大効率は 1/2 に落ちてしまいます。λmin /λmax が大きいほど(入射光のスペクトル幅が狭いほど) ηmax が大きくなることが分かります(発電効率を大きくするには光源のスペクトルは狭いほうが良い)。λg に対する η の変化は添付図のようになります。
お礼
少し理解できた気(だけ)がしてます。 質問なんですが。 (1)Siの場合。 バンドギャップが1.1eVで波長の1.1μmに対応している。 ηが最大になる時がλg=λmaxの時ということは、λmax=1.1μm。 太陽光は波長の範囲が広いので、発電をする時は分光器?を使ってλminが1.1μm付近になるようにした方が効率は上がるということですよね? そうならば、実際のパネルでも太陽光を直接ではなく、光を分けて使った方が効率がもの凄く上がるはずなのに、なぜそうしないのでしょうか? (2)色素の場合。 色素増感太陽電池の場合、ある色素のバンドギャップが分かり、対応 している波長が分かったとすると、入射スペクトルの幅はその色素の波長に合わせると良いということですが、これはその色素の吸収スペクトルとは関係なしに言えるのでしょうか? 理想の波長のところに、吸収することができる波長がなければ発電することができないと思うのですが・・・。 長くなってすみません。 よく分かっていないのでトンチンカンな質問なのかもしれないので、そうならば、間違っているところを指摘していただけるとありがたいです。
補足
有難うございます 今、理解しようとしてます。 疑問点がまた出たら質問したいです。
- inara1
- ベストアンサー率78% (652/834)
(3)について 太陽光の強度は波長に対してフラットではないです(大気圏外でも)。温度6000Kの黒体輻射の放射スペクトルに近く、波長500nmあたりにピークを持ちます[1]。このようなスペクトルの光を、単一バンドギャップの半導体を使って発電するときの最適な(エネルギー変換効率が最大となる)バンドギャップエネルギーは1.2eV~1.4eVです(無機アン導体ではSiやGaAsがこの範囲になります)。このバンドギャップエネルギーの半導体で発電したときのエネルギー変換効率は32%くらいになります。これをショックレー・クワイサー限界といいます[2]。 [1] 大気圏外の太陽光スペクトル(Excelデータとグラフ) http://rredc.nrel.gov/solar/spectra/am0/E490_00a_AM0.xls [2] ショックレー・クワイサー限界 http://en.wikipedia.org/wiki/Shockley%E2%80%93Queisser_limit
お礼
有り難うございます。 どこでもフラットではないのですが、もしも波長がフラットの場合ということです。 分かりにくくてすみません。 フラットの場合どこの波長に対応させても同じ発電効率だと考えました。 ですが、FF値が電流よりも電圧に影響を受けやすいらしいので、短い波長に対応させた方が効率は良くなるのではないのかなと思いました。 この考えはあっているのでしょうか?
お礼
計算そのものは理解できてたと思いますが、文字が表していることがあまり理解できてませんでした。 効率は同じなんですね。 パネルを考えた時、分光型はタンデム型の半分でも同じ効率ですよね? タンデム型の場合、P1の層で吸収できる波長はηmin~(ηmin + ηmax)/2でも、入射光はηmin~ηmaxの波長が入っているので。 データの読みかたが分かってなかったみたいです。 標準スペクトルはλmin = 300nm、λmax = 2500nm で考えればいいのですね。 大学で太陽電池を研究テーマにしようと志している高校生です。 太陽電池について大学で体験講座があり、次回その体験をもとに発表をすることになっているので、調べていました。 質問は大学の先生にも、できることになっていたのですが、質問がお盆に入ってからだったので、このサイトに質問を出しました。