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ヒートパイプで鉛直方向の熱輸送はなぜ難しい

タイトルどうりの質問です。水と水蒸気を使って鉛直方向の熱輸送は下から上に熱を運ぶのは簡単であるがその逆は難しいとカタログなどに出ています。単に技術的な問題なのでしょうか、それとももっと基本理論的に上から下への熱輸送はヒートパイプでは難しいのでしょうか。 ヒートパイプの技術にお詳しい型、または熱輸送の物理にお詳しい型 よろしくお願いします。

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  • ベストアンサー
  • inara1
  • ベストアンサー率78% (652/834)
回答No.3

理論的に上から下への熱輸送は下から上の場合より劣りますが熱輸送は可能です(設計次第)。ただし、運ぶ熱量が大きくて、ヒートパイプが細くて長い場合には上から下へ熱輸送できない場合もあります。 ヒートパイプ内部で液体(水)や気体(水蒸気)を動かす原動力は毛細管圧力です。高温側で液体が蒸発すると(内部は減圧されているので100℃未満で蒸発します)、毛細管力によって低温側から高温側に液体が移動してきします(ヒートパイプ内壁は毛細管力を高めるために網目状や溝状になっています)。蒸発によって発生した蒸気は、蒸気圧差で低温側に移動し液体に戻ります。高温側で奪われた熱は蒸気として運ばれ、低温側で凝集するときに放熱します。このように、高温側で液相→気相、低温側で気相→液相という変化が常に起こることで、外部電源なして熱を運ぶのがヒートパイプです。その等価熱伝送率は銅の何十倍にもなります。 高温側の温度が高いほど蒸発量(蒸気の流速)が増えるので単位時間で運べる熱量(W数)が増えますが、蒸気の流速が大きくなるほど流路抵抗による圧力損失が増えるので最大熱輸送量には限界があります。また、低温側から高温側に液体が移動するのを妨げるものがあると性能が落ちます。重力もその1つです。高温側が高い位置にあるほど、重力によって水が高温側に戻りにくくなります。ヒートパイプが長いほど、ヒートパイプを傾斜させたときに高温側の位置が高くなるので、わずかな傾斜で性能が落ちます。また低温側から高温側までの流路が長いほど(ヒートパイプが蛇行している場合)、ヒートパイプが扁平なほど、水や蒸気の流路抵抗が大きくなるので、やはり性能が落ちます。毛細管力を Fc、重力を Fg、流路抵抗による抗力を Ff としたとき     Fc > Fg + Ff である限りヒートパイプは動作します。図で書くとこんな感じです。     ↑Fc 毛細管力(水を上に持ち上げる力)     ↓Fg 重力(水を下に押し下げる力)     ↓Ff 流路抵抗(流速が速いほど大きい) この式を変形した     Fc - Fg - Ff という量が+であればヒートパイプとして動作します(= 0 の場合は、パイプによる熱伝導分を除いて熱を運べません)。Fg と Ff をできる限り小さくし、Fc を大きくするほど熱輸送量を大きくすることができます。高温側を上にしてヒートパイプを直立させた場合(トップヒート)でも、Fc - Fg - Ff > 0 である限り動作させることができます。しかし逆の場合(ボトムヒート)は、Fgの符号が-になってFc - Fg - Ff がトップヒートよりも大きくなるので、トップヒートよりも性能は確実に良くなります。 実際のヒートパイプでは、参考URLの式(7)にあるように、流路抵抗は気相(蒸気)の損失ΔPvと液相(水)の損失ΔPlの和で、それ以外にもいろいろな損失要因があるので複雑ですが、毛細管圧力を高めるために液相流路の形状を工夫したり(式(8)のrcを等価的に小さくする)、液相と気相の大きさの比率を工夫してΔPv+ΔPlを小さくすることでトップヒートでも動作するように設計します(条件によってはできない場合もあります)。一般にヒートパイプが細くて長いほど、最大熱輸送量は小さくなり、またトップヒートでの性能が悪化しやすくなります。

参考URL:
http://www.furukawa.co.jp/jiho/fj115/fj115_04.pdf
yyz1974
質問者

お礼

大変詳しくご説明頂きましてありがとうございました。大変よく理解できすっきりしました。またお礼が遅くなったことお詫び申し上げます。 今後ともよろしくお願いします。

その他の回答 (2)

  • debukuro
  • ベストアンサー率19% (3634/18947)
回答No.2

熱膨張による密度流を利用しているので高温側から下向きには移動しないでしょう

  • vaidurya
  • ベストアンサー率45% (2714/5983)
回答No.1

ヒートパイプは蒸発した液体が熱源から離れていき そこで冷却されて液体に戻り、熱源へと戻るというサイクルを持ちます。 この仕組みにはポンプがありません。 ですからこの液体の移動は、主に重力よって成り立ちます。 真横になる運用もあるとは思いますが、効率は落ちます。 ほとんど横に使われているノートPCでも 基盤の下にCPUがあり、その下にヒートパイプ熱源側 若干上に登る配管で、基盤の高さにヒートパイプ冷却側が置かれ その下にヒートシンクやファンが入る構造を使われていたりします。 熱源が上となると、下で冷却された液体が 上へ登ってくることは、気体と液体の比重から難しいので 結果的にほとんど性能を発揮できないと思います。 M/B倒立のケースでヒートパイプを用いる際には CPU用にしろGPU用にしろ、ヒートパイプの効率が低下し 実際の温度計測が怠れないのではないかと思います。

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