いきなり好きだからといって、ウィリアムズの時代のような作品を分析しようとしても何がなんだか分からず歯が立たないと思います。
まずは、基本のベートーヴェンのソナタを分析して、初期、中期、後期にどのような様式の変遷があるのかから、第1歩を進めてください。
ベートーヴェンの分析の本はレティという人が書いて翻訳されたものがあります。一番いいのは諸井三郎の書いた本ですが、私は音大卒だから音大で借りられるだけで、もう絶版になってしまっていると思います。
もちろん、二部形式、三部形式、リトルネロ形式、ソナタ形式の作られからの基本は知っておられますよね?これが分からなければ、音楽形式の本を読んで最初の一歩を歩んでください。
ソナタ形式は、第1主題、推移、第2主題、推移、展開部、再現部、コーダになっていて、推移は1つだけではなく、いくつもある場合がありますし、展開部も第1展開、第2展開、第3展開、第4展開、さらには交響曲になると第6展開とかにまで分かれます。
ソナタ形式の分析の基本は、第1主題とその推移(Ü)に現れるモティーフ(推移や第2主題、展開部で扱われるモティーフのみ)に、a1,a2,a3,a4とやa1の変形、a2の変形(a2')などと書き、第2主題とその推移に出てくるモティーフにはb1,b2,b3,b4とその変形b1'を書き、それが展開部でどのように扱われているのかを書いて整理していきます。展開部にしかない固有のモティーフというのもあり、それには展開部モティーフなどどしておきましょう。推移モティーフ(推移固有のモティーフ Üm1)などもありますので注意しましょう。
ベートーヴェンのピアノソナタの形式のモティーフ・アナリーゼと和声分析、転調などが分かるようになったら、次はロマン派の作品の分析をいくつかしましょう。ベートーヴェンで基本が学べるので、その形式でもそれを応用できるので、交響詩とかも分析できるようになれます。今度はオーケストラ曲とピアノ曲を交えながら分析してみてはいかがでしょうか。重要な作品はリストのピアノソナタ(主題の変容が出てくる)、「エステ荘の噴水」、ショパンのマズルカの形式、モティーフ、とりわけ和声分析で、ゼクエンツ(2小節単位くらいで調性が変わる)を勉強しましょう。あとはシューベルトの交響曲とピアノソナタ、ベートーヴェンの交響曲や弦楽四重奏曲を分析してもいい、古典派に戻ってモーツァルトの交響曲を分析してみてもいい、第1主題が二つあるという作品にも出会えるでしょう、ワーグナーの「トリスタンとイゾルテ」の形式と和声分析、シェーンベルクの初期「室内交響曲」、そしてスクリャービンのピアノソナタの形式と和声も出来たほうがよりいいですが、そういう風に、基本から学んでいき、そして初めて、シェーンベルク、ウェーベルン、ベルクの無調の世界を学ぶことになります。
それが分かるようになってから、ウィリアムズのような作品を分析してみると、分析方法が分かり、音楽が理解でき、楽しくなると思います。
ウィリアムズのスコアに調が書いてないのは、ドビュッシー、ラヴェルのような語法の和声方法で書かれたか、シェーンベルクの12音列の影響か、あるいはパレストリーナのような時代の和声に戻ってしまったのかのいずれかだと思います。シマノフスキのマズルカはドビュッシーの和声言語を受けているので調性なんてありません。
ちなみにオルフの「カルミナ・ブラーナ」のスコアにも調性も拍子記号もありません。どうやって分析するのでしょうか?基本が分かっていなければ手も足もでないでしょう。
また現代音楽に調性があるものはないに等しいです。現代とは前衛手法(ブーレーズ、シュトックハウゼン、ケージ、ノーノ、リゲティ、ペンデレツキ、ルトスワフスキ)を用いつつ、前衛時代の失ってしまった美しい旋律を、前衛手法の上にのせるという音楽の世界になっています(今です、例えばリンドベルイやマクミランの最近の作品)。
ドビュッシーの和声語法の分析方法は、第1セクション2度+□(□とは「何か」というもので、完全5度であったり、調6度であったりします)、第2セクションは、完全5度のみを使用したセクション、第3セクションは属7と属9のみをしようしたセクション、第4セクションは3度の動きを特徴としたセクション、というような分析方法で分析するものです。
専門家になりたいならば、作曲家の先生の師事を受けることをお勧めします。バッハのインヴェンションとフーガの分析方法からやることになるでしょう。
最初は何も分からなくても、少しずつ学んでいけば、分析は2年も勉強すれば、分かるようになってきます。
ちなみにショパンのスケルツォ1,2,4とバラード1,3,4は3部形式ではなくソナタ形式なのですよ。正確にいえば、スケルツォ形式とソナタ形式を融合、声楽の形式であるバラードをソナタ形式と融合させた、そこにショパン独自の形式へのアプローチがあります。
何か分からないことがあったら、分析、アナリーゼ、モティーフ・アナリーゼ、和声分析、は一番の専門なので、何でも質問して下さい。夢は捨てず、あきらめないで、頑張って下さいね!
お礼
詳細な回答ありがとうございます。 和声分析の専門家の方ということでかなり心強いです。 楽式は楽式論と作曲の基礎技法を読んだ程度です。 ソナタの分析は経験済みですがもう一回初心に帰って ご指摘通り、レティさんと諸井三郎さんの本を参考にソナタの分析からはじめようと思います。 作曲家の先生に師事することは現在検討中です。 この回答を何度も読み返しながら勉強法を模索していきたいと思います。 丁寧な回答ありがとうございました。