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NQRは超音波でも可能ですか
(1)電気4重核モーメントをもつ磁場中の核の共鳴はNQRという呼び方で正しいですか。 (2)電気4重核の熱平衡状態への縦緩和時間は磁気的相互作用より強いため短いというのは正しいですか。 (3)電場勾配が核スピンのエネルギー状態を決めているなら超音波でも核スピンに共鳴をさせることはできますか。 (4)外部磁場がなくてもフォノンまたは超音波で共鳴させることは可能でしょうか。 よろしくお願いします。
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ANo.2です。 例えば金属中の電子に外部から摂動が加わった状況を考えてみましょう。ここで,摂動は超音波と電磁波の2つを考えます。何らかの形で位相に対して摂動が加えられると考えた場合(たとえば超伝導状態のような場合),電子に加わる摂動のハミルトニアンの行列要素は独立でなくなり,位相に干渉項が現れます。超音波吸収は電子―フォノン相互作用ですから,電子は単純なスカラー量である変形ポテンシャルと相互作用し,それは運動量の変化のみに依存するので,行列要素は同位相で加え合わされることになりますが,電磁波の場合には電子と電磁場が運動量とベクトルポテンシャルの内積を通じて相互作用をしますので,電子状態へは異なる効果を引き起します。つまり,超音波では干渉によって状態密度を弱め合う干渉を起こし,電磁場では強め合う干渉となります。これが端的に現れるのが,超伝導状態でのコヒーレンスピークの存在です。 つまり,同じ周波数,同じパワーの超音波と電磁波を用いたとしても,電子系に与える影響は同じではないのです。 いや,待てよ,質問者の方はこのことを分かって質問されているのですね。 超音波がフォノン系に影響を与えるというのはその通りだと思いますが,ここで問題なのは,核スピンとフォノン(格子)系との相互作用です。もちろんエネルギーが散逸する方のフォノン系にmodulationがあれば,何らかの異なる散逸条件が成立するかもしれないので,超音波と磁気共鳴を同時に行ったら面白いことが起きる可能性があると書きました。つまり,超音波が与えるのは電場勾配への影響であり,それによってエネルギー準位がmodulationされて,核四重極周波数が変更になるかも知れませんが,核スピン系と直接エネルギーをやりとりすることはないだろうと思われます。
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- KinakoAme
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(1) NQR=nuclear quadrupole resonancreですから,日本語では通常「核四重極共鳴」と呼びます。核スピンが1以上(I=1/2以外)の原子核は,球形からずれた形をしていますので,原子核の周囲に電場勾配が存在すれば,方向によりエネルギー準位に違いがあります。この異なるエネルギー間の差に相当する電磁波に対して共鳴が生じる現象です。電場勾配は結晶構造などに起因します。例えば立方晶は等方的ですので電場勾配が無いので「電磁四重極モーメントQ」を有する原子核においても共鳴は起こりません。 (2) 「熱平衡状態への縦緩和時間」はつまりスピン格子緩和時間T1のことですが,状況に応じて短い場合も長い場合もあります。物質,温度などなどいろんな場合がありますので,一概に短いとは言えないでしょう。結局,電磁波によって核スピンに与えられたエネルギーが格子系に緩和する際の時間のことですから,相互作用の大きさによって何桁も変わってしまいます。 (3) 「核四重極共鳴」は,電磁波によって核スピン系にエネルギーを与えることによって生じるものですから,音波では共鳴を起こすことはできません。 (4) (3)と同じです。超音波の周波数帯域とラジオ波の周波数帯域はオーバーラップする部分もありますが,電磁波と音波はまったく別物ですから,共鳴は生じません。 質問者の補足のpdfを読んでみました。そのpdfの最後に,質問は遠慮なくどうぞと書いてありましたので,後藤先生に質問してみたらよいのではないでしょうか。このような質問をされたら,きっと喜ぶと思いますよ。 また,電場勾配を超音波で揺すってやるというのは,面白い発想だと思います。もちろん結晶中の電場勾配は結晶構造によって決まっているので,超音波ごときで大きく変えられるとは思いませんが,何らかのmodulationは加えられるかもしれません。つまり超音波を印加しながら,電磁波での磁気共鳴をすることによって,通常は測定できない何かを観測できるかもしれないからです。核四重極相互作用のハミルトニアンは,結構複雑です。何次まで考慮するかによっても変わります。wikipediaは読んでいませんが,この記述からすると液体のNMRについての項目ではありませんか?液体の場合には,分子運動によって(高速で回転させても同様ですが)異方的な成分は消え去ってしまいます。逆に,立方晶からかけ離れた異方的な構造をした物質が固体を形成していると,核四重極相互作用は大きくなるのは間違いないと思います。
補足
ご専門の方にご回答頂き大変うれしく思います。ありがとうございました。ゼロ磁場のお話はもしコンタクトが出来れば質問したいと思いますが何せこちらがあまりにも無知なので恥ずかし過ぎて可能かどうか(笑)?。ところで(3)についてのことですが超音波ごときと いうことですが高電力の数10MHzの発信源は用意に入手でき変換効率の優れた超音波デバイスもあり超音波洗浄器のようなイメージで考えていました。多分これでも弱いというご指摘なのでしょうね。 私の疑問を再度整理してみました。磁場中の核4重極モーメントをもつ物質が何らかのタイミングで熱平衡状態でなく核スピンが逆転配位にあるとき緩和していくプロセスが主に四重極相互作用によるものとすれば 核スピンとエネルギーを受けたり与えるのは格子振動、即ちフォノンが主役ではないかと思ったからです。もしそうだとすれば超音波で核スピンに共鳴がかかってもおかしくないと考えました。私の勘違いでスピンの緩和とスピンの共鳴現象をごちゃごちゃにしているのでしょうか。 コヒーレント性の扱いをのぞくと基本的には同じ現象だと理解してきました。 コメント頂ければ真にありがたく思います。よろしくお願いします。
- ojisan7
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(1)電気4重極核モーメントをもつ核の電場中の共鳴がNQRです。 (2)かならずしもそうとは言い切れません。 (3)できません。超音波でどうして電気4重極子を共鳴させますか? (4)誰が考えても、そんなことは不可能です。
補足
ご回答ありがとうございました。(4)については私も全くわからないのですが http://www.ph.sophia.ac.jp/~goto-ken/text/nmr3_00.pdf のP.12の3 -9NQR信号の文章に次の表現があります。それで質問しました。もっとも超音波という記述はありませんでした。>零磁場でも信号が見える試料、パラジクロルベンゼン(~34.2MHz)及び塩素酸カリ(~28MHz)が用意してある。この共鳴信号はNMR ではなく、NQRと呼ばれる。FID信号を探して正確な共鳴周波数を求めよ。35Cl核(I=3/2, 自然存在比約76%)によるものである。なぜ零磁場で信号が見えるのだろうか。実はこの信号はゼーマンエネルギーの分裂によるものでなく 電場勾配と電気4重極モーメントの相互作用によるものである。・・< (3)については電場勾配と電気4重極が相互作用をするなら電場勾配を共鳴周波数で揺すってやればもしや共鳴するのではと考えて乱暴な質問をしました。電場勾配を揺することは超音波でできるのではないかと 思ったからです。 (2)につては核磁気共鳴ーWikipedia の記述に以下の文章があり本当かなと思って質問させていただきました。>核四極子相互作用のハミルトニアンは H=[eq/2m(2m-1)]I・V・I=I・Q・I と表される。eは電気素量、qは核四極子モーメント、Vは電場勾配テンソル、Qは核四極子相互作用テンソルである。 核四極子相互作用テンソルのトレースは0であるので、この相互作用は観測している原子核が充分に速く等方的に運動しているときには平均化されてラーモア周波数への影響は0となる。従ってNQRの観測も固体中に限定される。 核四極子相互作用の大きさは、対称性のない物質(=物質内の電場勾配が大きい)では他の相互作用よりも圧倒的に大きい。そのため四極子モーメントを持つ核では、その緩和はほとんど核四極子相互作用に支配される。< 私の思い違いを教えて頂ければ幸いです。よろしくお願いします。
お礼
丁寧なご回答ありがとうございました。私は強い超音波を電場勾配の摂動としてとらえるという発想ができませんんでした。しかしフォノン系にモジュレーションを与えるという考え方はとても納得がいくものです。そう仮定すれば超音波と核スピンは直接エネルギーをやり取りしないという結論は合理的だと思えてきました。KinakoAmeさんはNMR、NQRを実際に経験されたご専門の方ですからコメントにやはり説得性があります。すっかり納得してしまいました。本当にありがとうございました。これで私の頭がかなり整理できましたので本件については締め切らせて頂きます。実はわけの解らない実験結果が出ています。次回はもう少し問題点を整理して再度質問したいと思います。その時は再度よろしくご指導お願いします。