「これはたいへん。見なかったことにしよう」と一瞬思いましたが、この質問は黙って跨ぎ越すことができませんでした。たとえようのない悲しみの中で闘病されているにちがいないapple-appleさんのお友だちご一家、それを支えたいと思われているapple-appleさんのお気持ちを考え、長い間児童文学を学び、仕事にもしてきた者として、自分の中から引き出せるものを考えてみようと思いました。
●5歳くらいの男の子に人気のある絵本
男の子はやっぱり「のりもの」が出てきたり、登場人物と冒険したりするおはなしが好きです。そのような内容のものを思い出して挙げてみました。
『おしいれのぼうけん』ふるたたるひ、童心社、¥1200
『かいじゅうたちのいるところ』センダック、冨山房、¥1400
『くれよんのはなし』ドン・フリーマン、ほるぷ出版、¥1000
『すてきな三にんぐみ』トミ・アンゲラー、偕成社、¥1200
『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』バージニア・リー・バートン、福音館書店、¥1100
『からすのパンやさん』かこさとし、福音館書店、¥1000
『ガンピーさんのふなあそび』ジョン・バーニンガム、ほるぷ出版¥1200
『チムとゆうかんなせんちょうさん』エドワード・アーディゾーニ、福音館書店、¥1300
●家族の絆を感じることができる絵本
『ぼく、ひとりでいけるよ』リリアン・ムーア、偕成社、¥800
『ぼくにげちゃうよ』マーガレット・ワイズ・ブラウン、ほるぷ出版¥951
『すきときどききらい』東君平、童心社、¥1300
『どんなにきみがすきだかあててごらん』アニタ・ジェラーム、評論社¥800
今の時期でしたら、クリスマス絵本もいいかと思います。
『ちいさなもみのき』M・W・ブラウン、福音館書店、¥971
・・・この絵本は、森のはずれでぽつんと一本育ったもみの木と、足の悪い男の子が主人公です。最後、男の子は歩けるようになっています。お見舞いの意味を込めて選ばれるのにいいかもしれません。
一冊ずつ簡単なあらすじを添えた方が参考になるかと思いましたが、書きかけてみましたところたいへん長くなりましたので、割愛いたしました。どの絵本も、版を重ね、長く子どもたちに愛されてきたものです。購入されるときの参考になるよう、検索をかけて価格を書きましたが、これは本体価格です。
他の方たちが紹介されている「ぐりとぐら」のシリーズや「バーバパパ」のシリーズは、もちろん幼稚園くらいの子どもたちには人気があります。長新太さんの絵本は独特の世界があります。(大人はそのナンセンスが理解できないこともありますが)子どもたちは直感的にそのおもしろさを受け入れるようです。
最後にもう一冊ご紹介したい絵本があります。
『わすれられないおくりもの』スーザン・バーレイ、評論社、¥890
この絵本は、今回のお見舞いにはふさわしくありません。年を取り死の世界へ旅だってしまったあなぐまと、残された動物たちのものがたりだからです。
最後の最後まで、小さな可能性を信じて闘病される方には、元気になって、もっともっとたくさんのことを体験したい!と思わせるような前向きの絵本だけが必要でしょう。
けれども、もしも、apple-appleさんのお友だちご一家の祈りが破れ、男の子を見送ることになってしまったとき、そのときにはきっと小さな支えになる絵本だと思います。
自分よりも先に子を失うという体験は、親として、想像を絶する苦しみだと思います。とりかえしのつかないことであって、他の何かでその穴埋めができることではないでしょうが、絶対に消えない悲しみや苦しさをも、ほんのわずか揺り動かすきっかけになる力を、この絵本は持っていると思います。
お礼
たくさんたくさん、ありがとうございます。感激です。本屋を回って、手にしてみたいと思います。この中には、娘や私自身が好きなものもあります。最後に紹介くださった「わすれられないおくりもの」、これは私の愛読書でもあります。かつて私が近しい人を亡くして茫然自失の状態だった時に出会った本です。そうです、遺された者にとっては、大きな支えになる本です。今からこんなことを言ってはいけないのですが、万が一のことがあったときには、いずれ彼の両親に贈ろうとも思っています。
補足
この場を借りて、回答くださった皆様へのご報告とご挨拶をさせていただきます。 皆様に紹介していただいた本を参考に、何冊かの本を贈りました。ありがとうございました。 3月、この男の子は亡くなりました。言葉もありません。救いは、同じクラスの子どもたちが弔辞で「○○くんのことは、いつまでもわすれないよ。いっしょに遊んでくれてありがとう。」と言ったこと、担任の先生が子どもたちに「○○くんは、空の一番きらきら輝く星になったんだよ。」と言ってくださり、子どもたちがその夜、各自空を見上げたということ…でしょうか。彼がこの世に存在したということは、きっと大きな意味があったのだろうと思います。 皆様には、感謝いたします。本当にありがとうございました。