#1です。
>じゃあ、科学の発展にも限界があるということなんですよねー。
いいえ、限界はないと思います。我々の想像力は無限に大きいのですが、それのすべてが正しい訳ではありません。その無限の想像力の中の、どの部分が実現不可能かと言うことを明らかにしているので、可能な部分はまだ無限に残っています。
>ただ、その基本法則って今後新しく発見されたりしないんでしょうか?
(基本法則が拡張されるという意味ではなく、全く新しい基本法則が発見されるという意味)
物理学が何故他の科学と比べて信用されているのかの理由は、その主張が正しいと受け入れられるためには、数万ないし数億の証拠が確認されなくてはならないからです。これを人文科学と比べるとよく分かると思います。人文科学の新しい主張に対しては、その主張が正しく当てはまる証拠を十数個も提示すれば、だいぶ説得力があり、数十個も提示できれば権威のある理論と考えられているようです。
この違いは、物理学の対象とする事象が人文科学と比べて桁違いに易しいことから来ています。
そして、例えば量子力学は現在まで人類が手に入れた理論体系の中で最も現象に対する予測能力の精度の高い理論体系なのです。量子力学によると、水素の原子核の周りを回っている電子のエネルギー準位の値を十何桁、即ち数百万の数数百万倍の精度で予言できますが、それを実際に測ってみるとその桁数まで実際と一致することが確認されています。これは、ニュートン力学が予測可能な精度が、例えば惑星の軌道の予測が周期のせいぜい数百万倍のところまでなのと比べると、桁違いに高い精度です。ですから、量子力学に補正項を付けて修正しても、その補正項の効果がエネルギー準位に関して数十桁を遥かに超えた小さな効果になるようにしない限り、その修正は間違いとなってしまいます。したがって前の基本法則を否定して、全く新しい法則が出てくる訳にはいかないのです。
せいぜいここ数百年とは言え、物理学の歴史では、そのような先人達の到達した理論の予測能力とは矛盾しないように、従って、もし新しい基本法則が必要になって来たら、それを以前の古い形の基本法則が使える状況ではその新しい法則が古い形の法則と全く同じ形になるように「拡張」して来たのです。具体的には、量子力学で不連続性の単位が、測定量に比べてゼロとみなせる極限では、量子力学はニュートン力学に完全に一致します。相対性理論は、取り扱っている物体の速度と比べて光速がめちゃくちゃに大きく、あたかも無限大とみなせる極限ではニュートン力学と完全に一致しているように出来ています。
例えば、貴方は貴方であると同時に貴方の親や友人であることができないのです。貴方が同時に全てだったら、貴方には個性が存在しないことになってしまいます。あれでは「なくて」これだ、と言うことを認識することを、個性を認識するということでしょう。そして、その個性を理解したときに貴方を理解したことになるでしょう。
同じように、自然科学はこの宇宙の個性は何かを明らかにしようと言う学問です。ですから、我々の想像力が許す全て可能性の中から、この宇宙の個性を探るために、この宇宙では何が実現できないのかを明らかにすることが、自然科学の最も本質的な営みなのです。
しかし、失望することはありません。我々はこの「何が出来ないか」を明らかにすると、それを逆手に取って、その法則に従った論理を展開し、また、利用して、その基本法則に矛盾しないような機械を作ることができるようになるのです。その結果、江戸時代の人には想像もつかなかった携帯電話などで、ほとんど瞬時に北海道の人や沖縄の人と連絡が出来るようになったのですから。
実際、物理学の基本法則を知らなかった江戸時代の人たちには、光速を超えた速度で物や情報が移動できるかもしれないという可能性を否定することができませんでした。そのような認識のレベルでは、もしかしたら、魂の以心伝心で遠くにいる人に瞬時で連絡が出来るかもしれないと考えている人たちが大勢いました。実際文献に当たってみると、例えば夢枕などを利用して情報伝達をしたという例が一杯載っています。でも、そんなことは誰にでも出来るものではなかったのです。ところが、物理学の法則による自然界の限界を認識できるようになると、夢枕などを使わずに、携帯電話を使って「誰でもが」情報伝達が出来るようになったのです。
お礼
本当に有難うございます。 最高におもしろい話が聞けたとともに、今後の科学の発展に期待しています。←何様w