どうしても規則がないと知人に納得してもらえないようでしたら,いわゆるstyle manualの類をご覧になるとよいでしょう。
たとえば,アメリカの連邦政府印刷局(GPO)のA Manual of Styleや,シカゴ大学出版局のいわゆるシカゴマニュアルなどが有名です。
また,英英辞典(というかネイティブ向けの国語辞典)の巻末にも,よく句読点の使用法が出ています。
シカゴマニュアルはウェブ上でも読めます(ハイフンの用法は下記URL参照)ので,ここではGPOのものを紹介しておきましょう。これはもともとはアメリカの公文書の書き方を定めたものです。
GPOマニュアルでは,複合語にハイフンを付けるかどうかだけで1章をさいており(第6章 Compound Words),52項目にわたってルールが並んでいます。その中から,関連する項目を要約・抜粋して紹介しますと,
6.15 複数の単語や略語がまとまって,直後の単語を修飾するときは,6.16項その他に特に示されている場合を除き,ハイフンを入れる。
(Print a hyphen between words, or abbreviations and words, combined to form a unit modifier immediately preceding the word modified, except as indicated in rule 6.16 and elsewhere thoughout this chapter.)
例 English-speaking nation, high-speed line, part-time personnel, U.S.-owned property 他多数
6.16 ハイフンを入れなくても,意味が明確で,かつ読みにくくなければ,ハイフンを入れる必要はない。これは,造語でも既成の語でも同様。
(Where meaning is clear and readability is not aided, it is not necessary to use a hyphen to form a temporary of made compound.)
例 high school student, life insurance company, real estate tax 他多数
このあとに細かい規則が多数並んでいますが,その中にもいろいろと例外があります。
例 2語の修飾語のうち最初の語が比較級や最上級のときはハイフンを付けない。(higher level decisionなど)
例外 uppercase type(大文字の印刷),bestseller ○○(○○は名詞)
これらは,結局1語として定着したからということになるのでしょう。その他,「習慣だから」としかいいようのない例外も多数あります。
しかも,第6章の最初のほうには総則があって,
6.2 言葉は絶えず流動(fluidity)しており,形も絶えず変化している。最初ハイフンつきだった言葉がやがて1語になることはよくある話だ。
6.3 以下の規則をあまり杓子定規に考えてはいけない。よりよい形を許容するために例外を認める必要がある。
といった注意書きさえあります。
実際,e-mailはいつのまにかemailが多くなりました。昔はto-day, to-morrowなんていう書き方もありました。
となると,ハイフンを付けるかどうかは,「明確で読みやすい」で決まるわけですから,結局は「ネイティブの感覚」というところに行き着くのではないでしょうか。
ご質問の「ネイティブは感覚的にハイフン付けをするので」というのはまさにその通りですね。
ハイフンがあってもなくても,発音は同じですので,目で見て読みやすいかどうかで決まることになるわけでしょう。
最初は区切りがあったほうが読みやすいのですが,だんだん単語が定着してくると,なくても読めるという段階を経て,to-dayのようにあるとかえって目ざわりという段階に至り,ハイフンが省かれるのだと思います。
というわけで,知人の方を納得させるような「明快な規則」を見つけるのはちょっと難しいかもしれません。
お礼
これはいいですね。「シカゴマニュアル」は知っていましたが、インターネットで見ることができるのは知りませんでした。知人は権威に弱いタイプですから、明快な規則がないということがわかれば納得するでしょう。