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原子軌道
第4周期の中性原子の原子軌道に電子が入る順番を見ると、エネルギー準位が3p<4s<3dの順に大きくなり、電子はエネルギー準位の小さい順に軌道に挿入されていきます。 ところが、電子を放出してイオンになるとき、4s軌道から抜けていくので、まるで3p<3d<4sに軌道エネルギー準位が変化したように見えます。 これは、なぜでしょうか。貫入や有効核電荷の点から説明がつきそうでつきません。分かりやすく教えていただけると幸いです。
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これは難しい問題です。多分正確にかつ分かりやすく説明することは無機化学専門の教授クラスか、博士課程で「遷移金属」を扱っている「優れた」院生でなくては無理だと思います。少なくとも有機屋の私には無理です。 なぜなら、この問題は「遷移金属」はなぜまとめて扱われるか、という根源的な質問だからです。 しかし、概念的な説明なら出来ないことはありません。 1.これらの元素の原子に電子が詰まっていくときの考え方は、裸の原子を考えています。以前にも指摘しましたが、これらの「古典量子化学的」説明は水素類似原子でしか正しくなく、多電子系では正確ではないのです。 2.これらの元素の「化学」を考えるとき、それは「金属」状態ではありません。もっぱら「錯体」か「水溶液」での扱いになります。もちろん水溶液ではこれらの原子はアコ錯体になっています。対アニオンは配位している可能性がありますし他の配位しもあるかもしれませんが、空配位座は水が配位しています。つまり「配位子場理論」の支配する6配位(典型的にはオクタヘドラルの)状態にあります。 3.このため裸の原子の化学と配位子のある状態とでは、基本的に電子の準位に大きな違いがあります。前者は原子軌道しか考えられていませんが、後者は配位子場理論が示す分子軌道上に電子が配列しています。ですからこの二つが違うことこそ遷移金属の「面白いところ」なのではないでしょうか。 関連するトピックスとしてはヤン・テラー効果があります。高温超伝導で物理学者や化学者以外にも有名になったこの効果も、非常に不思議な代物です。私は院時代、無機化学の講義で非常に興味を持ちましたが、担当教授は一度もまともに答えてくださいませんでした。それで、私は無機化学に進むのを諦めてしまいました、残念無念です。(爆)
お礼
貴重なご回答をありがとうございます。レベルの高さに圧倒されてしまいましたが、非常にうれしかったです。化学する心が揺さぶられます。これからもいろいろ質問すると思いますが、そのときはまたアドバイスをよろしくお願いいたします。