名称などについて、何故、こういう「訳語」が、というのは、色々な事情があって、合理的な説明があるとは限りません。
「連合国」というのは、英語だと、Allies ですが、Allies と United Nations では、英語としても、言葉が違っています。
普通、Union は、国家で言えば、ある程度の独立性を持つ国家が、連合して、一つの上位国家を構成している場合で、「連邦」という訳語があります。
International Union というと、「国際連邦」になります。あるいは、「国際連合」でも構いませんが、その場合、国家連合というような意味には限定されず、特定業種の企業が、国際的に提携して、一つの国際的企業統一体を作ったような場合に、この言葉を使えます。
あるいは、労働組合などの、国際的統一組織体が、International Union となります。
United Nations に近い表現として、United States of America, Union of Soviet Socialist Republics, United Kingdom というものがあります。
「アメリカ合衆国」というのは「合州国」ではないのか、という疑問が出てきます。実際、英語の名称を素直に訳すと、「アメリカの州国家連邦」というのが自然で、「合衆国」は、建国当初は、「アメリカの衆が連合した国」だという意味だったかも知れませんが、現在のUSAの国名からすると、やはりおかしいのです。
ソヴィエトの場合は、「ソヴィエト社会主義共和国連邦」で、これは、英語で意味している通りの訳になっています。イギリスは、王国が連合して連邦を作っているのではなく、領域国家が連合して、「連邦王国」を作っているという意味です。
Kingdom であって、Kingdoms ではないのです。
「国際連合」の場合、United Nations だと、Nations の「連合体=連邦」という意味が、英語で普通に考えると出てくる意味です。The United Nations of the Earth だと、「地球国家連合」「地球国家連邦」ということになり、地球の諸国家が、連合し、統一体国家=連邦を作っているという意味になります。
そういうことから、the United Nations を素直に訳すと、「国家連合統一体」「地球連邦」という意味になります。「連合国」というのは、Allies で、連合国という統一国家、連邦があったのではないのです。これは、「連合・連盟に参加している国」という意味で、その複数形で、その連盟・連合を表したのだとも考えられます。
つまり、「国際連合」という訳語がおかしいのではなく、元の英語の the United Nations が、些か不適切なのだということになります。その英語を素直に訳すと、上に述べたように「地球連邦」みたいな意味になるので、そういう訳は避けざるを得なかったのだということになります。
すると何と訳すかというと、「国際的な連合」つまり「国際連合」が、元の言葉の訳として、妥当だということになります。歴史的経緯は分かりませんが、連合国(またはアメリカなど)を中心に、やがて、「地球の連邦」を作ろうという展望や志向が、アメリカに(そして英国やソ連にも)あったのかも知れません。
(枢軸国に対し連合国が勝利した後、まだ冷戦構造が顕在化していなかった時期に、国際連合は創立されていますから、旧ソ連にも、アメリカにも、統一地球国家=地球連邦を作ろうという志向・野心があった可能性があります。実際、旧ソ連は、それから(それ以前にも)共産主義による世界制覇に乗り出すのですし、アメリカも、ソ連を打破して、地球連邦を作ろうという構想がなかったとは言えません)。
ということで、The United Nations を、素直に元の言葉に従って訳すと、適訳は「国際連合」になるということです。そういうことで、この訳語を選んだのかも知れませんし、訳語選択の経緯は別に、言葉としても、この訳語は、元の英語に対し適訳だと考えざるを得ないのです。
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