植物の細胞は光合成を行うので動物の細胞よりも遥かに酸素の脅威にさらされています。ですから、植物は様々な種類の抗酸化物質(ビタミンやコエンザイム)を生合成してこれと戦います。これに対し、動物はそこまで高い危険にさらされていないので、抗酸化物質は食物から取り入れるように進化しました。ある物質を合成するとなると、そのための設備投資が必要ですので、食べ物で十分得られるなら独自に合成をするのをやめた方がコストがかからないのです。
ということで、動物は植物から直接・間接に抗酸化物質を摂取しています。しかし、これは植物にとっては迷惑な話。そこで植物は毒を持ったり、とげを持ったりして動物に食べられないように防御するよう進化しました。一方、これと平行して植物は、動物を利用するような進化も遂げています。果実を動物に餌として与える代わりに、種子の散布をやらせる(糞や食べ残しとして種を運ばせる)ように進化したのです。この過程で、植物は種子が充分に熟したときに、果実に動物が要求する成分(糖分等)を一番多く蓄え、熟すまでは動物が忌避する物質(渋とか青酸誘導体)を蓄えるように進化したのです。
ということで、ビタミンCに関しても、抗酸化物質を植物に依存する動物が果実食によってビタミンCを蓄えるように進化させることで、彼らを飼いならした、と考えられるのではないでしょうか(正確には共進化といって、ともに利益が増すように進化していった、とすべきでしょうが)。
つまり、
植物は自らの切実な要求により、抗酸化物質の生産ラインを持っている。
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このラインにより余剰な抗酸化物質の生産も可能である。
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余剰な抗酸化物質を、生産ラインを持たない動物に与える対価に、種を運ぶという労働を動物に課すことができるようになる。
という進化がおこったのではないでしょうか?