>科学と化学ってどこがどう違うんですか?
「科学」というのは、現代では主に「自然科学」を指すようです。元々、西欧中世における、「教養」として、神学や哲学や倫理学のような(世俗的には、「哲学」で纏めますが)「総合的な智慧の学問」以外に、個々の分野についての「知識の集成」、例えば、算数、幾何学、音楽、地理などの「学」を、「分科学」と呼んだのが起源のはずです。
総合的に世界の根拠やあり方や、人間の成すべきことや義務などを教えるのが「哲学」で、それ例外の、世俗の技術などに関係する知識・雑学を分野ごとで分けて、これを「分科学」と呼んでいたのです。
これらは、「知識の集成・実用知識」だと考えられていたので、ラテン語で、「知識」を意味する、「スキエンティア scientia」で通称されます。他方、総合学としての哲学は、「智慧の学」であり、智慧は、「サピエンティア sapientia」と言います。ホモ・サピエンスの「サピエンス」の智慧です。
近世になって来ると、「分科学」の知識のなかで、自然に関する実証的知識が段々増えてきました。ものの運動とか、地球の引力とは何かとか、惑星の運動は、どういう理由でああいう不規則なものか、星とは何かなどです。
あるいは、医学分野でも色々な実証的な研究や発見が増えてきました。生物についての知識も集積されて来て、似たような生物を分類しようという研究も出てきました。
それまで、自然の色々な事物やできごとについては、アリストテレスの「自然学」などに書かれていることを、大体正しいとして来たのですが、どうも違っているということが分かってきました。また、医学などは、ヒポクラテスの著作や、古代の医学者が書いた本に書かれていたことを、そのまま信じていたのですが、これも、どうも違うということになりました。
そこで、ガリレオなどが、物体の運動について、新しい法則性を見いだし、ティコ・ブラーヘの天文観測によって、どうも惑星は、地球の周りを回っているのではないという見解が優勢になって来ました。
古代からの伝統の哲学や分科学や神学の基本枠組みが壊れそうになって来たので、カトリック教会などは、ガリレオやブルーノなどを弾劾しました。宗教と科学の争いなどと言われていますが、そういうことではありません。くつがえって来たのは、古代からの伝統的な知識だったのです。
ニュートンによって、物体の運動についての法則が確立され、彼はまた、色々な自然現象を研究し、新しい知識や知見、法則を発見し、提唱し、ライプニッツなどの研究ともあいまって、ここに「物理学」が形を取りました。
物理学は、スキエンティアの学ですが、雑学的集積ではなく、体系的な知識のシステムとなったので、「分科学」の地位が向上しました。ここから生物についての知識の学は、これも分科学として体系を整えて行き、物理学と平行して「数学」も分科学であるとなり、天文学も物理学から独立し始めます。
つまり、自然世界の色々な現象のまとまりを、「分科」として研究するのが、「分科学」つまり、「科学」なのです。物理学の見事な体系化・法則構成にならって、他の学問分野も、「科学」であろうとしました。
これとは別に、「分科学」として、中世には、世俗分科学に、音楽や修辞や法律もありました。こう言った知識も体系的になって来て、音楽学とか、修辞学・文学、法学などとなって来ます。医療についての知識も医学となって来ます。
自然現象についは、色々な科学が、分野を互いに境界付けて、物理学の理論体系に真似て、精密な理論を立てようと試み、色々な科学が成立しました。天文学や気象学や、生物学、数学、鉱物学とか、そして物質の反応などの法則を探求する「化学」が科学として成立しました。
文学や音楽、芸術などの人文的な知識の分野でも、自然科学を模倣して、体系化を試みようとしますし、言語学や心理学なども出てきます。他方、社会についての法則などを見いだそうと、歴史学、社会学、経済学などが、提唱されます。
こうして、物理学を軸として、同じような実証的方法で、合理的法則で現象を説明し、実験によって仮説の真偽を確認し、知識を吟味して行くという「科学の方法論」に従う、自然科学の諸分野の科学が成立します。
人文や社会の知識分野でも、自然科学の法則構造や方法にならって科学を築こうとしますが、なかなか、物理学のように、客観的法則が定立できないのです。そこで、自然科学とは幾分質の異なる科学として、「人文社会科学」というものが成立します。
「科学」とは、こういうものを言います。
他方、「化学」というのは、自然科学の一つで、自然の現象のある分野を扱い、日常的な物質を混合させたりすると何が起こるかというような問題から出発して、物質の化合や分解、合成についての知識の集成です。
物質は分子・原子から成り立っているので、これらが、どう結合して物質が造られているのか、また、その結合の原理が分かると、逆に、物質を人工的に合成できるはずなので、色々な化学合成の技術が発展します。
生物を構成している有機物質に関する化学を有機化学、そうでない無機物質に関する化学を無機化学とも言います。
化学は、元々、アラビア文化で起こり、物質を構成する基本元素は何か、それはどのようにして物質を造っているのかという探求に、近代化学の出発点があります。硫酸とか塩酸を発見というか、純化したのは彼らです。
英語の「化学」に当たる、chemistry は、アラビア語が語源になっています。アラビア化学を、西欧中世が継承し、錬金術研究などを通じて、化学的な知識が段々集積されて来たのです。
「科学」は、広い意味では、自然について研究する自然科学、人間や社会について研究する人文・社会科学、そして中間とも言える医学などに分かれます。「科学的法則」で、自然現象、世界の現象を研究する学問です。
「化学」は、現在では、自然科学の一分野で、物質の原子・分子的構造や、それらのあいだの反応や、新しい物質の合成などを研究している科学です。
英語の「科学」は、science ですが、これは知識を意味するラテン語の「スキエンティア」から来たもので、知識一般を、整理し、法則的に、実証的に把握しようとするのが「科学」だと言えます。「化学」はその一分野です。
>それで、科学者というのは、化学とは関係のない人の集まりなんですか?
>どうしても分ける必要があるのでしょうか?
化学を研究している人は、科学者です。科学者というのは、色々な科学を研究している人で、どの人も、専門分野を持っています。科学者のなかに、物理学者もいれば、化学者もおり、天文学者や生物学者や、気象学者や海洋学者などもいるのです。
科学者というのは、こういう色々な種類の科学(主に自然科学)を研究している人をまとめてそう呼ぶので、化学を研究している人も、当然、科学者です。
お礼
*みなさん、ありがとうございました* ・・・・お一人・・・ものすごい長い・・・大変参考になるような、でもちょっと難しいような。 とにかく、ありがとうございました。 これだけ書いて書いて・・・大変だったと思うので300ポイントくらい発行したいんですが、20ポイントが限界なんですね・・・すいません。 でも、ありがとうございました。 他の皆さんも、こんな初歩の質問に答えてくれてどうもありがとう。 科学・・・なんか難しいもんですね・・・(^^;)