デッサンというと絵画の話になってしまうのですが、
『絵を描く場合に、一番知っておく必要がある事は、描く物は見る角度、見る位置によって形が変わるという事です。
たとえば、丸い缶詰の缶をテーブルの上に置いた時、真横から見ると缶の形は四角です。しかし、真上から見ると缶の形は円になります。
という事は、見る位置・見る角度が変わると、物を正確に見る事が出来なくなり、見るたびに物の形が変わって、正確な絵が描けない事になります。なぜなら、それまで見ていた所が見えなくなったり、見えなかった部分が見えてきたりするからです。
ようするに、頭・顔・体が動いたり、位置が変わったりすると、物を正確に見る事が出来なくなり、しっかりした絵を描く事は出来なくなります。ですから、動いて良い所は、目(眼球)だけという事になります。
それから当然ですが、筆・ペン・鉛筆を持っている腕・手です。
時々TVで、絵画教室で生徒さんがデッサンをしている風景を見たりしますが、その時の様子は、生徒さんは椅子に座り、キャンパスは台(イーゼルと言います)の上に置いています。そして生徒さんの姿勢は背筋を伸ばして椅子に座り、腕を伸ばし、少し肘を曲げた状態の所にキャンパスを配置しています。この時の状況は、生徒さんの目から見ると、モデルのすぐ横にキャンパスがあるような位置関係になっているはずです。
その位置にキャンパスを置けば、目(眼球)を左右に移動させるだけで絵を描く事が出来るからです。
たとえば、目(眼球)を少し右に動かせばモデルを見る事が出来、目を戻せばキャンパスを見る事が出来るという位置です。極端な話をすると、目(脳?)に残った残像がキャンパスに映されて、それを絵取っていく事も可能かもしれません。
あるいは、目を動かさなくてもモデルとキャンパスを同時に見る事が出来るような位置関係になっているかもしれません。
そして、デッサンが完成するまでは、キャンパス・椅子の位置は絶対に動かさないようにしているはずです。動かしてしまうと、見る位置・見る角度が変わってしまい、絵を初めから描き直しする事になってしまいますので・・・。
上記の事は、見ている物を正確に描く為には、どうしても理解すべき事であり、一番大切な基本だと思っています。そして、身に付くまで繰り返し繰り返し練習する事が必要だと思います。たぶん、絵画の世界だけでなく建築の世界でも同様ではないかと思います。』