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真空蒸着
専門家の方には基本的な質問で申し訳ございません。 現在、有機物の膜を積層したデバイスを作成しています。 ITO透明電極上に、有機膜を積層し、対極に金を真空蒸着でつけています。真空蒸着装置は、抵抗加熱型のもので、タングステンのバスケットに金のワイヤーを切ったものをいれ、加熱して蒸着しています。膜厚は40-100 nm程度です。 アルミニウムで作成したときには、ショートはしませんが、金で行うとすべてオーミックな応答を示す、つまりショートした状態になっています。 このような状況を回避する方法はなにかご存知ありませんでしょうか。 よろしくおねがいいたします。
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- nzw
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これまでの記述からすると、 ・実験は、太陽電池となるはずの構造を作成して行った ・電流電圧測定を行い、Alの場合は非線形でかつ整流特性が得られたがAuの場合は電流が電圧に比例した ということですね。 お返事を拝見する限り、半導体と電子デバイスについての知識がかなり不足しているように思います。多分化学系の方で、電子デバイスにとりくまれるのが初めてなのだと思いますが、有る程度半導体、電子デバイスの知識を持ってからでないと、何を実験しているかわからない状態になってしまいますので、まずはそれらの勉強をされることをおすすめします。有る程度勉強されてから、私の回答を読み直すなり、実験の方法・結果を見直せば、色々と気づく事があると思います。 さて、いくつか書き足しておきますが、基本的に有る程度学習してから読み返して下さい。 電流電圧特性を測定した場合、非線形で整流特性がでるのは、基本的に 1)p型とn型、異なる伝導型の半導体層がそれぞれ存在する 2)半導体と金属接合がショットキーになっている のどちらかです。 太陽電池というのは、光励起により生成した電子と正孔を、再結合するまでにそれぞれ逆の電極に取り出すデバイスです。電子の取り出しにはn型が、正孔の取り出しにはp型が用いられます。したがって、かならず1の構造を持ちます。シリコン系などの無機系太陽電池では、p型とn型は同じ半導体で、不純物の種類の違い(ドーピングの仕方)でこの構造をつくります。一方有機物系の場合、ドーピングによる伝導型制御が無機系ほど簡単ではないので、p型とn型にそれぞれ別の材料を用います。 さて、p型n型のそれぞれに正孔と電子を引き抜いても、電池として利用するためには、それを外部の金属(電極)に取り出す必要があります。この取り出しはできる限りスムーズに行う必要がありますから、この半導体/金属接合はオーミックである必要があります。 ですから、太陽電池は 最低でも 金属1/p型半導体/n型半導体/金属2 の4層構造をもち、3つの接合が存在しますが、最初と最後の接合はオーミックで、整流特性を出しているのは真ん中の接合ということになります。効率を高めるために、これより層数が多いこと(p-n接合ではなく、p-i-n接合になっているなど)も多々ありますが、基本は同じで、金属とその隣の半導体との接合は基本的にオーミックである必要があります。 さて、上記太陽電池構造では、金属/半導体接合がオーミックであったとしても、p型半導体/n型半導体接合により整流特性はでます。また、金属/半導体接合がショットキーになってしまったとしても、やはり全体として非線形性がでます。ですから、きちんとしたp型半導体/n型半導体接合ができている場合には、一方の金属だけをかえただけで全体の特性がオーミックになるということはありません。 ですから、金属の種類をかえただけでオーミック特性になったということは、 可能性1)もともとp型半導体/n型半導体接合ができていなかった。 可能性2)金属がp型半導体/n型半導体接合を破壊してしまった。 などが考えられます。 1は、太陽電池になっていないということですから、光起電力がでないことになります。また、これまで得られていた整流特性がショットキーによるものですから、半導体をどちらかの伝導特性1層だけにしても整流特性が残るはずです。まずは、この場合ではないことをきちんと確認してください。 2は、断面SEMやTEM,SIMSなどで確認できる可能性があります。有機物はヘキカイが難しいし、チャージアップなどの問題がでるかもしれませんが、いろいろ工夫してみてください。
- nzw
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半導体にどうやって電極をつけて、良好な導通をとるか?(オーミックコンタクトを取るといいます)という問題は、簡単なように思えるかもしれませんが、実は大変難しい課題になる場合が多々あります。シリコンの場合は対処方針がだいたい決まっているため、あまり問題にされることはありませんが、新しい半導体材料を開発する際には問題になる場合が多くあります。特に、有機物半導体の場合、界面状態がコンタクト特性に強く影響する場合があります。さらに、太陽電池はp-n接合デバイスですので、p型、n型双方にオーミックコンタクトをとる必要があります。従って、一度金属/半導体界面のコンタクトの問題をきちんと学習されることを強くおすすめします。まずは、前回ご紹介したページを読まれてはと思います。 さて、前回の回答でも書きましたが、金属も0ではない抵抗を持ちますから、ショート状態でも電流電圧特性をはかれば原理的にはオームの法則に従う直線になるはずです。ただし、その抵抗がきわめて小さいため、傾きが非常に大きいグラフとなります。また、通常このような測定をした場合、測定器の破損を招きます。たぶんこの状態は出会われていないと想像します。 さて、金属電極/半導体/金属電極という構造をつくり、金属電極間に電圧を印加したときの電流の流れ方には、先の回答に書いたように二つあります。一つはオーミック状態。もう一つがショットキー状態です。 オーミック状態では、半導体であっても電流電圧特性は通常の抵抗のように直線を示し、pもしくはnどちらか一方の試料である限り整流特性はでません。この場合、傾きは一定ですが、ショート状態に比べてずっと緩やかな値を取ります。半導体デバイスの場合には、うまくデバイスを動作させるために、最終的にこの状態でコンタクトを取る必要があります。オーミックコンタクトは、通常半導体がドープされており、適切な仕事関数を持つ金属が接合されている場合に得られます。従って、同じ半導体材料でも、電極の金属の種類やドーピングレベルをかえる事によりオーミックからショットキーになる場合があります。 ショットキー状態では、電流電圧特性は非線形かつ整流特性を示します。半導体的な応答をしめしたというのはおそらく、材料のバルクとしての性質をみたのではなく、このショットキー接合の特性を見たのではないかと思われます。 手元の半導体の教科書をいくつか見てみましたが、残念ながらおすすめできるものは見つかりませんでした。これは私が主に物性物理として半導体を扱っていることもあります。ただ、おそらく工学系の半導体の教科書であればこれら接合についての記載を見つけられるのではないかと思います。
お礼
再度ご回答いただき、有難うございます。 p型とn型の両方にオーミックなコンタクトを取る必要があるということですが、電極と半導体はどちらも直接接していなくてはならないということなのでしょうか。今作成しているセルは、Grätzel, M. et al. J. Phys. Chem. B, 2006, 110(15), 7635-7639.を参考にし、ITO / n型無機半導体 / 色素 / p型導電性ポリマー / ホールブロッキング材料 / Auです。この構造では、n型、p型とも直接電極とコンタクトが取れていないということになりますが、この構造では、整流特性が得られないということでしょうか。この構造でも、対極をAlにすると、整流特性を得ることができました。しかし、文献を調べると、このタイプのセルでは、仕事関数の関係から、Alでは逆電子移動がおこり不適当だそうなのです。 まずは、ご指摘の通り、金属/半導体のコンタクトを勉強してみます。 電極同士が接触した際には、測定装置の測定限界を超えるため、この現象は起こる可能性が低いとのこと、ご指摘有難うございました。 すると、整流特性を示すデバイスを作成するには、ショットキー型にするということになりということですね。そのためには、金属の種類とドーピングレベルを検討する必要があるということですね。 ところで、ドーピングレベルの制御というのはどういうことなのでしょうか。まだはじめたばかりで、勉強不足で申し訳ありません。無機半導体では、不純物ドープということでしょうか。有機伝導性ポリマーではヨウ素や過塩素酸塩のドープということでしょうか。 お手元の教科書を見ていただいたとのこと、重ねて御礼申し上げます。 工学系の半導体の教科書で確認してみます。
- nzw
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ITOと有機物の組み合わせということは有機ELか何かでしょうか?デバイス関連であれば物理か科学カテゴリで質問された方が良いかもしれません。 それはさておき、思いついたことを簡単に書いておきます。 まず、ショートと、オーミックは別の状態です。前者は両電極間の抵抗が無視できる程度になっている状態で、間に挟んだ層が金属(的)でなければ、電極同士が物理的に直接接触していることが考えられます。一方、オーミックという状態は、電極間に有限の抵抗が存在し、それがオームの法則に(ほぼ)従っている状態を言います。これは、電極同士が直接接触していない状態でも、起こりえます。両者は、電極間の電位差をかえながら、流れる電流を計測すれば識別することができます。 一方、これらとは別の重要な状態として、ショットキー状態があります。この状態では、金属と半導体(絶縁体)の間に、ショットキー障壁とよばれる電気を流しにくい層が形成されています。この状態では、電流電圧特性はオームの法則のような直線にはなりません。 金属と半導体(絶縁体)の接合が、オーミックになるかショットキーになるかには、金属の仕事関数が関わっています。この値は金属の種類によって異なっていますので、アルミではショットキーになったものが、金ではオーミックになる場合もあります。 ですから、アルミの場合と金の場合がそれぞれどれに相当するのかまず調べ、ショートであれば金の拡散などの物理的構造変化を疑い、オーミックであれば仕事関数の違いによるものを疑ってみればよいかと思います。
お礼
回答ありがとうございます。 固体化電解質を用いた色素増感太陽電池を作成しています。 物理カテゴリでも質問してみ見ます。 私が基本的に思い違いをしていたのかもしれません。勉強不足で申し訳ありません。 1)ショート 電極同士が物理的に接触して言う可能性があるということですね。その場合は、オーミックな応答を示すと言うことでよろしいのでしょうか。 2)オーミック 私たちが行った測定はマイナスの電位からプラスの電位に連続的に挿引視ながら、その電流値を測定しました。その際にはオーミックに応答を示しました。また、間に挿入した物質はいずれも半導体的な応答を示す物質ですので、疑問を抱いておりました。したがって、この可能性は少ないと言うことでしょうか。 3)ショットキーなど 金の拡散などの物理的な構造変化というのはどのように確認し、どのように回避すればよいのでしょうか。また、どのような文献が参考になるのでしょうか。
お礼
たびたび回答をいただき、誠に有難うございます。 ご指摘の通り、電子デバイスについては、まさに素人といった状態です。まずは、基本事項の確認から行いたいと思います。 このような素人に対して、誠意あるご丁寧な回答をいただいたことに深く感謝申し上げます。 ご指摘いただいた内容についても順を追って、検討させていただきたいと思います。