1.確かに、地代を2年間支払っていないのであれば、債務不履行を理由として賃貸借契約の解除ができそうですが、借地法(※)で保護される「借地権」の場合は、そう単純ではないのです。
※平成4年に「借地法」が改正され、以後の借地契約は新法である「借地借家法」が適用される。質問文は平成4年以前の借地なので、旧法の「借地法」が適用される。もっとも、旧法であれ新法であれ、回答の結論は同じである。
地代の不払いがあれば、地主は債務不履行による契約の解除(民法541条)ができますが、この場合には、相当の催告期間を設けて、「ほんとに地代の支払いをしないのか」を借地人に尋ね、その期間内に地代の支払いがなければ、借地契約を解除できると考えられています。
質問文で、「払う意思があるのか返事を待つという書面がきました。」とあるのは、この催告期間にいわゆる“最後通牒”を突き付けてきたものと考えられますから、この期間に滞納した地代を全額支払えば(=請求されれば延滞利息も含めて)、借地契約は解除されないことになります。
「借地法」は一般に、地主に比べて力関係の弱い借地人を保護するために制定されたので、安易に賃貸借契約を解除されてしまうと、借地人は居住や生活の拠点を失うことになりかねず、法の趣旨に照らしても著しく借地人の権利を害することになるからです。
信頼関係破壊の法理は、借地契約については個々のケースで異なりますから、単純に「○ヶ月滞納していた」「○年滞納していた」というだけでは、それだけでいきなり借地契約解除とはならないのです。
ですから、質問文を読む限りでは、お母さんの建物の「借地権」は消滅しておらず、催告期間内に滞納した地代を全額支払えば、それで従前の借地契約は継続されると思います(=逆に言えば、催告期間内に支払わなければはじめて借地契約が解除できる)。
地主が地代の受け取りを拒否すれば、裁判所に供託するという手段もあります。
2.もっとも、「催告」については、地主と借地人が合意すれば、催告を不要とする特約も可能です(=お母さんの「賃貸借契約書」を見て下さい)。例えば「地代を3ヶ月以上滞納すれば、ただちに賃貸借契約を解除できる」などです。
しかし、借地人の被る不利益が大きい場合には、無催告解除特約を無効とされる場合もあるようです。
3.質問文の「この額で売らないと法的手段をとるといっています。」というのは、単なる“はったり”なのか、それとも弁護士に法律相談した上での回答なのかはわかりませんが、裁判となった場合、お母さんが敗訴する確率はそれほど恐れるものではないと思います(=裁判はやってみないとわからないが…)。
ただし、相手が弁護士に法律相談をした上での回答である可能性も視野に入れれば、質問者さんも早急に弁護士に法律相談をされるべきだと思います。
このような重大な問題を、匿名のWEB掲示板だけで解決されるのは無謀です。
お知り合いに弁護士がいなければ、東京の場合には弁護士会が運営している「法律相談センター」があります(下記、参考URL参照)。「有料相談」の相談料は、原則として30分以内5,250円(消費税込)で15分毎に延長料金2,625円(消費税込)を基本としているそうです。
http://www.horitsu-sodan.jp/
お住まいの都道府県の弁護士会にも同様の窓口があると思いますので、「法律相談センター」HPなどもご参考にされて、探してみて下さい。
お礼
くわしいくご回答ありがとうございます。 とても参考になりました。裁判になったときのリスクをとるか、提示金額で売るかですよね。。。弁護士さんには相談しました。 裁判になった場合勝てるかどうかむずかしい、提示金額は悪い金額ではないので受け入れてもいいのではないかとの事でした。 相談センターの紹介までしていただいて、ご親切本当にありがとうございます。とにかく母を助けるべくがんばってみます。