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分化全能性の意義

分化全能性は植物特有の性質ですよね。ではなぜ植物にはこのような機能が備わっているのでしょうか?これは、植物は動物のように動き回れず、同じ場所で様々な環境に耐えなければならなかったことと関係はありますか?

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  • ruehas
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回答No.2

こんにちは。 このようなことは、まず細胞の「機能分化」に就いての科学的な解明がまだ成されていませんので、恐らくきちんとした答えはないのではないかと思います。 ひとつの解釈を述べますと、何故、植物細胞は「全能性」を有するのかということでありますならば、それは、元々細胞そのものが「全能性」を持っているものだからです。 我々の人体は異なる機能を持つ無数の動物細胞によって形成されていますが、最初はこれも一個の受精卵から分化したものです。これがどういうことかと申しますと、少なくとも受精卵の段階では動物細胞も全能性を持っているということです。ですが、植物細胞とは異なり、動物細胞の場合は分裂を繰り返す過程でこの全能性を失ってしまい、他の細胞に分化することができなくなります。従いまして、どちらかと言いますならば、問題にされなければならないのは、植物細胞は何故「全能性」を持っているかということではなく、「動物細胞というのはどうして途中で全能性を失ってしまうのか?」ということになるのではないかと思います。 ですから、少々理屈っぽい言い方をしますと、全能性というのは植物に特有の性質なのではなく、植物細胞は単にそれを維持しているだけに過ぎないということになります。ならば、逆に全能性というものを放棄し、新たな性質や機能を獲得したのは動物の方です。従いまして、植物は動き回れないから全能性という性質を獲得しなければならなかったというのではなく、動物が動き回るためにそのシステムを変更したという方が、考え方としてはより近いのではないでしょうか。 ですが、現時点ではこれも憶測でしかなく、実際にはどちらとも言えません。何れにしましても、動物細胞がどうして専能性・単能性に可塑的な変化を遂げてしまい、何故それを元の全能性に戻すことができないのかといったことは目下、世界中の学者さんたちが血眼になって研究中ではありますが、未だ答えは出ていないはずです。従いまして、植物細胞がどうして全能性を維持しているのかということに就きましても、やはりきちんと説明をすることはできないのではないかと思います。 この問題に就きまして、質問者さんが植物と動物の生態の違いに着目するのは、たいへん理に適ったことだと思います。 植物細胞が全能性を持つと言われるのは、培養実験によって全能性の再現を確認することができたからです。ですから、厳密に言いますならば、植物細胞が全能性であるということは、現時点では、それは元に戻すことができるからということになります。 これに対しまして、動物細胞が全能性を抑制してしまうのは、恐らく機能分化を確実にするためです。逆に言いますならば、植物細胞に比べ、動物細胞は元の全能性に戻すのがたいへん困難であるとういうことになります。これが、世界中の学者さんたちが頭を悩ませている問題ですね。 では、植物細胞というのは全能性(あるいは戻れる機能)を維持したまま、どのようにして茎や根、葉などといった組織の形成をコントロールしているのでしょうか。ここには、植物細胞と動物細胞の情報形態の違いというものがあります。 説明にやや正確さを欠きますが、植物細胞といいますのは全能細胞が全能細胞に分裂するということですよね。この全能細胞が特定の機能を発揮するためには何らかの情報が必要になります。この細胞に与えられます情報といいますのは、分裂した先の環境から得られる「外的な事後情報」です。全能細胞はこの情報に従って根や茎になります。 これに対しまして、動物細胞といいますのは分裂する前からその機能が決まっていますので、こちらは「内的な事前情報」ということになります。このため、動物細胞には自分が何に分化するのかという自由度はありません。同時に、植物細胞は「環境・事後情報」がクリアされるならば元の全能性を取り戻すことも可能なのですが、動物細胞の方は「事前に変更の施された内部情報」ですので、そう簡単にはゆきません。 ですがその代わり、動物細胞は分裂後の環境が如何なるものであろうとも、与えられた使命を確実に果たすことができます。動物細胞における非可逆的な全能性の喪失といいますのは、このような「機能分化の確実性」が優先された結果なのではないかと思います。そして、このようなことから植物と動物の生態的特長に起因する選択戦略の違いというものを結び付けて考えてゆくことも可能だとは思いますが、ですがやはり、そこから先はどうしても進化論的な憶測ということになってしまいます。 動物細胞の全能性を再生する方法はまだないと申し上げましたが、先日、京都大学の研究グループがマウスの体細胞から全能性を発現させる実験に成功してしましましたね。これは、ものすごいことだと思います。 ただ、混乱のないように付け加えるだけの話なのですが、実験方法によりますと、細胞には特定の遺伝子を注入するという手段が取られているようです。ですから、新たな要素を付加したという点では、その細胞をそのまま元の全能細胞に「戻した」ということではありませんし、特にこれで全能性のメカニズムが解明されたという話にはなっていなかったと思います。 ですが、ここで何の文句を付けるものでもなく、これが再生医療応用の実現に一気に百歩くらい近づいたような画期的な成功であったことは絶対に間違いのないことですよね。

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その他の回答 (1)

  • Kenji63
  • ベストアンサー率60% (3/5)
回答No.1

 一昔前までは、「分化全能性」は植物特有のものだと考えられていました。しかし、羊のドリーちゃん誕生で、動物細胞にも分化全能性があることが実証され、いまでは全生物に共通のものだと考えられています。  最近問題になっている「ES細胞」も分化全能性をもつった細胞(受精卵と同じ機能を持った細胞)だと考えられます。

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