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合金の熱処理について
溶体化処理を行ったAg7%Cu合金を時効硬化させたとき、 1;最大硬さはなぜ、低温で加熱したほうがより硬くなるのですか? 2;最大硬さになる時間が、高温で加熱したほうがより短いことと、反応速度とは、どう関係するのでしょうか? 硬化することがどういう現象なのかうまく理解できません。
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なんだか「状態図と関連付けて論ぜよ」という文章が浮かんでくるようですが・・・ それはともかくこのサイトに限らず、条件や背景などは最初に示せるだけ示した方がいいですね。答えた後から「実は○○なので、△△の観点から教えてください」ではきりがありませんので。(必要に応じ新しい質問を立てて下さい) 低温での時効と高温での時効の違いですが、少し調べてみました。結論から言うと私の推測で合っていました。相対的に高温で時効を行うと析出は確かに速くなるものの、析出した第二相同士の粒成長も進むために後で却って硬度が低下します。この現象は「過時効」と呼ばれるようです。 銅合金では参考となる事例が少ないかもしれませんので、その場合はアルミニウム合金で調べて類推すると良いと思います。アルミニウム合金の時効は前述のジュラルミンを始めとして細かく研究されているようですので。例えば参考文献の[1]には、Al-4 mass%Cu合金の、処理温度をパラメータとした時効硬化曲線が出ており、ご質問とまったく同様の挙動を示しています。(高温で時効硬化処理すると早く最大硬度に達するがほどなく過時効に至る、低温で時効硬化処理すると最高硬度に達するのは遅いが、最高硬度は高くなりその状態を長く保つ) 状態図は「ある温度・組成で最終的に安定な相は何か」ということを教えてくれます。しかし反応速度に関する情報は与えてくれません。 「どんな組織が現れるか」の情報はある程度与えてくれます。ある組成から温度を下げていったときに最初に現れる相は何か、析出する相の組成はどのように変化していくか、などです。ただしその場合でも、結晶粒の絶対的な大きさについては分かりません。また粒成長速度についての情報も得られません。状態図と絡めるなら、おそらく以下のようなことが訊かれているのでしょう。 一般に固溶限界は温度によって変化します。Cu-Agの状態図が手元にないので確たることは申し上げられませんが、温度が高いほど多くのAgが固溶するはずです。時効処理では溶体化処理直後のAgの分率と(温度の関数としての)固溶限界との差が析出してくるわけです。majorumaさんの手元のCu-Ag状態図では固溶限界はどのくらいになっていますか? 最初のご質問の「7%」がmass%なのかmol%なのかで話は多少変わってきますが、いずれにしても高温で時効処理をするほど(時効処理中の)析出量は少なくなります。またその間の粒成長も速く進みます。その後で室温に放置すると残りの分(室温での固溶限界との差)がまた析出してきますが、その場合は先の時効処理中に析出した第二相を核として析出します。すなわち「粗大な第二相が少なく分布した組織」になるはずです。 低温での時効処理はこの逆で、時効処理中に析出するAgの量が多く、粒成長の核はより多く分布することになり、かつ粒成長の速度は小さいですから、処理後の室温放置で「小さい第二相が多く分布した組織」になるものと推測されます。それらの組織の違いが硬度にどのように影響するかは前回回答した通りです。 これ以上の詳しいことは、ぜひご自分で「状態図の基礎」「金属材料と組織」「金属材料の熱処理」のような本を探して読んでみてください。繰り返しになりますが、私は専門でないので間違えている部分があるかも知れませんし、また専門外の私でも調べればこの程度のことは分かるわけですから、ね。頑張ってください。 参考文献 [1] 小林俊郎(編著)、「アルミニウム合金の強度」、内田老鶴圃、2001
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- Umada
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majorumaさんのご質問のバックグラウンドやお持ちの知識のレベルが分かりませんので、以下では適当に推測してお答えします。回答内容に過不足があったらすみません。(もっとも、冶金は専門外なので勿体つけて答えるほどでないのですが) 時効硬化処理は一般に、材料中に微細な第二相を析出させることで行われます。その過程で強度や硬度が上がります。(強度や硬度が時効処理で上がるのは微細な第二相が変形に対する抵抗となるため)。時効硬化の有名な例はジュラルミンです。ジュラルミンはたまたまの室温放置で時効がおきて発明されたものですが、時効処理の温度や時間をちゃんと制御してより特性の優れた材料を得ようというのは自然な流れです。 溶体化処理では合金の温度を上げて、室温だと混じりあわない2種類の合金元素を(半ば無理やり)基本金属に溶かし込みます。この合金の温度を室温まで下げると合金元素は再び分離・析出しようとしますが、それには一定の時間がかかります。この場合の反応速度は有名なArrheniusの式 exp(-E/kT) に比例しますから(Eは活性化エネルギー、kはBoltzmann定数、Tは絶対温度)、高温で処理すれば速く析出して早く硬度が上がる道理です。 低温で加熱した場合ですが、析出の際の核発生と析出相の成長の関係で、 低温:微細な析出相が多数できる 高温:大きな析出相が少数できる という違いが生じるのだと思います。通常は前者の方が硬度が高くなります。 私が分かるのは残念ながらここまでです。あとは頑張ってください。 なお、以下のページに関連用語の解説があります。参考になると思いますので必要に応じ読んでみてください。 「技術用語検索」>金属用語解説 http://www.coguchi.com/yougo_s/index.html 「用語集」 http://www.yoshu.net/YoshuWeb/yougo/yougo_list.html
- 参考URL:
- http://www.coguchi.com/yougo_s/index.html, http://www.yoshu.net/YoshuWeb/yougo/yougo_list.html
お礼
早速の回答ありがとうございます! 温度によって発生する結晶の大きさが違う、ということがポイントだったのですね。 Umadaさんのおかげで、概要をつかむことができました!
補足
状態図と対応させてそのことを説明するとすると、 やはり、低温、高温ということだけをピックアップすればよいのでしょうか? それとも状態図から読み取れることがほかにあるのでしょうか?
お礼
どうもありがとうございます! 歯学部の合金実験のレポートなのですが、 歯学関連の書籍には、理論というよりは、結果をどう利用するか、 ということが書いてあるばかりで困っていました。 くわしくわかりやすい説明をありがとうございます! umadaさんのおっしゃるとおり、一度工学部等の参考図書を探して勉強してみます。