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蛍光スペクトルをとるときに液体窒素で冷やすのは?
友達の話で耳に挟んだのですが、ある物質の蛍光スペクトルをとるときに液体窒素で冷却しながらとる、みたいなこと聞きました。 そういうことってあるんですか? どうしてわざわざ冷やすんでしょうか?
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蛍光スペクトルをとる「目的」によって、スペクトルをとる(分光する)ときの最適な条件は違ってきます。例えば、もし「発光デバイ ス」の開発をしていて、蛍光スペクトルを測定するなら、液体窒素などで低温にしても意味が無い場合が多いのです。なぜなら、わざ わざ冷やさないと使えない発光デバイスを開発しても仕方ないからです。ユーザーは、室温において正常に動作するデバイスを望むで しょうから。しかし、例えばアカデミックな研究でよくあるのですが、蛍光スペクトルを測定することによって物質のミクロな性質の 情報を引き出すことができます。そのようなときは、低温で測ることがしばしば行われます。それでは、詳しく説明しましょう。 蛍光は色々な種類がありますが、ここでは「物質中の電子のエネルギー状態の遷移による蛍光」を例にして考えたいと思います。 固体中の電子の振る舞いは、原子核に束縛されている場合や、中を自由電子としてウロウロさまよっている場合など、色々なケースが ありますが、とにかく簡単に言ってしまえば、固体中には色々なエネルギーをもった電子が多数存在しています。蛍光は、固体中のあ る高いエネルギーの電子が、低いエネルギーに移るときに、その差に相当するエネルギーを、「光」という形で外部に放出する現象の 1つです。したがって、蛍光スペクトルには、電子のエネルギー状態を反映したミクロな情報があるわけです。 ところで、蛍光スペクトルから電子に関するミクロな情報を引き出すときに、蛍光スペクトルの「ピーク波長(エネルギー)」や「ピー クの幅」が重要な情報源となります。ところが、もし高温で蛍光スペクトルを測ると、原子の熱運動などの「余計な情報」が付加され ます。これはいわば、電子の振る舞いに「乱雑さ」を与えているようなもので、一般に蛍光スペクトルはブロードな(横に伸びた)形 状になります。電子のエネルギー状態を精密に知りたいときは、温度が高いことで生まれる色々な効果をできるだけ排除し、シャープ なスペクトル形状にする方が解析がしやすいわけです。そこで、蛍光スペクトルの測定では、低温にして原子の熱運動などを静め、電 子の振る舞いだけを取り出せるような環境をつくることが多いのです。 液体窒素の温度は、約77K(-196℃)ですが、これでもまだ高温でスペクトルから情報を得にくいときは、例えば液体ヘリウムを用いる 場合があります。その温度は約4K(-269℃)です。 電子の振る舞いのようなミクロな現象は、量子力学という物理分野で記述されます。 「低温の世界の方が量子力学的効果を見やすい」 ということが一般に言えるでしょう。超伝導や超流動などの20世紀の画期的な発見は、低温をつくり出す技術があって初めて成し得た ことなのです。蛍光という現象も、量子力学の範囲ですから、同じことが言えます。
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- 38endoh
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サンプルを冷やすのでしょうか? それとも装置を冷やすのでしょうか? サンプルを冷やす理由は,そのサンプルに固有な物理的意味があると思いますので,一般例として一概に言うことはできないと思います。一方,装置を冷やす場合の理由は簡単です。光を検出する光電子増倍管は,高感度化のために液体窒素で冷やすことがあります。
お礼
サンプルを冷却するものとばかり思ってましたが、装置も冷却することがあるのですね。 ありがとうございました。
お礼
詳しい解説どうもありがとうございます。 奥深い理由があるんですね。