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日本標準時と中央標準時の違いについて教えてください
- 日本標準時と中央標準時の違いについて教えてください。
- 日本標準時は情報通信研究機構が決定・通報しており、中央標準時は国立天文台が決定・現示しています。
- 日本標準時と中央標準時は定義や法的根拠が異なり、それぞれの機関が担当しています。
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うーん…2度にわたる「お礼」を拝見して,やっぱり相当高度なレベルの回答を求められていたのだなと確信しています。 どうやら,私の出る幕ではなかったようです。 一生懸命空を飛んで,宇宙の果てに着いたと思ったら,お釈迦様の手のひらだったという孫悟空の気持がちょっとわかります。 私のいい加減な回答ではなく,どなたか,標準時に関する業務にかかわっておられるスタッフの,明解にして正確な回答が得られるといいのですが。 あるいは,関係機関に直接おたずねになるのが一番良いかも知れません。 行きがかり上,コメントというか感想というか,つらつら書いてみます。 >総務省では、(UTC+9h)、いわゆる日本標準時のことを「標準電波の通報する標準時」というらしいです。 そこまでしてまで,「日本標準時」という呼称を避けているのですね。 >標準電波で発射している標準時は中央標準時とは別ものとの記述があります。 これは元をたどれば青木信仰著『時と暦』(東京大学出版会,1982)に出ている表現です。 該当の箇所には, 郵政省告示(最終改正は昭和52年[1977]第890号)(引用者注 前回「未見」と書いた告示の前身)ではCCIR(引用者注 現在のITU-R)勧告に従って発射する標準時の内容を詳しく規定している。 この場合すでに述べたように勅令の<中央標準時>が法的には生きており,郵政省の告示の<標準時>とは別物である。というか「中央標準時」と「標準時」の間には法的関係はない。 と書かれています。これは,あくまでも「法令上は」別物という意味でしょう。 つまり,勅令で定めている「中央標準時」と,JJYの発射信号が伝える「標準時」との関係をきちんと書いた法令は存在しない,ということだろうと思います。 ただ,国立天文台は昔から「中央標準時=協定世界時+9h」という立場を取っていて,『理科年表』の暦部の1ページ目に毎年書いてあります。 実際問題として,勅令に「東経135度ノ子午線ノ時ヲ以テ本邦一般ノ標準時ト定ム」としか書かれていないからと言って, 日本標準時=JJYの伝える信号=「協定世界時+9h」 中央標準時=東経135度における視太陽時(つまり,明石の天文台に日時計を設置したとき,それが指す時刻) なんてやったら,両者は最大で16分ぐらい(均時差)ずれますから,わけの分からないことになってしまうでしょうね。 (それでも法的には許されるのかも知れませんが…) (4)の件ですが,昔から時刻の決定に寄与するのは東京天文台(の水沢緯度観測所),それの公衆送信は郵政省,と役割分担がありましたので,それが組織が変わっても踏襲されているのだろうと思います。 国立天文台にネットワークやJJYのメンテナンスまでやれというのは,人手の面などから見て難しいと思います。 >中央標準時は影が薄いうえに、いわゆる日本標準時と同じなのかどうかもはっきりしませんし、 ええ,これだけでも法的にきちんと定めてもらえればいいのですが,なぜダメなのでしょうね。 >協定世界時ができたときの法整備の不足ということにも思えます。 同感です。 ただ,先ほどの『時と暦』を読み返していましたら,各国の時制度の違いが出ていて興味深いものでした。 ドイツは法律の中で秒単位以下まできちんと定めている。 フランスは「法定時=協定世界時+1時間の整数倍」と政令で定め,細かい話はBIH(国際報時局,現・国際度量衡局=BIPM)に任せる,としている。 イギリス・アメリカは,秒より高精度の話は純粋に科学技術的な問題で,法律はノータッチ。日本もこれに近いが,計量法などでフォローしている点はやや大陸型。 それで試しにと思って,アメリカの法律を探してみました。 US Code Section 261 Zones for standard time; interstate or foreign commerce http://frwebgate.access.gpo.gov/cgi-bin/getdoc.cgi?dbname=browse_usc&docid=Cite:+15USC261 確かにドイツなどよりは大ざっぱですし,1918年の制定時の姿をかなり残していますが,それでも1960年にそれまでの「天文時」という表現を「平均太陽時」に直し,「第2地帯(東部時間のこと)はグリニッジより西に75℃の経度線における平均太陽時」といった定義方法になっている点,どの時間を使ったらいいのか分からない日本の勅令よりは数段ましな気がします。 でも,どうせならフランスぐらいのことは決めていいのではないでしょうか。 回答というより,ほとんど自分のための覚え書きのようになってしまいました。あまりお役には立てなくてすみません。 むしろ,自分自身にとって,今回の回答を書くことは大変勉強になりました。 『時と暦』も,ずいぶん何度も読んだ本ですが,「中央標準時と標準時とは別物」という指摘は,今回初めて気づきました。以前読んだときは,あまり深く意識していなかったのでしょうね。 20年以上前の本ですが,基本的な部分は今でも通用することに改めて感銘を覚えています。改訂版が出ないかな。 長々と駄文にお付き合いいただき,ありがとうございました。 では,そろそろこの辺で失礼します。
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- puni2
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訂正です。 前回の回答に重大な誤りがありました。 戦後の法令で「標準時」という言い方が登場するのは昭和58年に改正された郵政省設置法,と書きましたが,実は郵政省が発足した昭和23年当時は,電気通信に関しては「電気通信省」という別の役所が存在しており,そちらの管轄だったのでした。 郵政省設置法と同じ日に公布された,電気通信省設置法(昭和23年12月15日法律第245号)をみると, 「第五条 電気通信省は、この法律に規定する所掌事務を遂行するため、左に掲げる権限を有する。 (中略) 二十七 周波数標準値を定め、標準電波を発射し、及び標準時を放送すること。 (以下略)」 という規定がありました。 また,電気通信省が郵政省に統合されたのは昭和27年です。 郵政省設置法の一部を改正する法律(昭和27年7月31日法律第279号)に, 「第四条第二十二号の次に次の十五号を加える。 (中略) 二十二の九 周波数標準値を定め、標準電波を発射し、及び標準時を通報すること。 (以下略)」 とあります。 郵政省設置法については,その一部改正も含めて制定時から全部目を通したはずだったのですが,真夜中に半分寝ぼけて仕事をしていたのか,うっかりミスが出てしまいました。申し訳ありません。 日本標準時グループのサイトにある「昭和23年からの郵政省設置法で現れます」は確かに誤りですが,「昭和23年の電気通信省設置法で現れます」と直せば済む話でした。 >組織替えをするたびに法律を改正しているが、中身の文言はそのまま引き継いでいるようです。技術上の取り組みが、法律を置き去りにしてどんどん進んでいるということかもしれません。 おっしゃるとおりだと思います。 計量法(を受けて定められた政令である計量単位令)には「1秒」という「時間」の単位は定義されていて,こちらはSI(国際単位系)の改訂を反映して,随時最新のものに改められていますが,「時刻」の刻み方については法令上の規定は全くないのが現実のようです。 (参考)計量単位令(平成4年11月18日政令第357号) 別表第1より 秒 セシウム百三十三の原子の基底状態の二つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の九十一億九千二百六十三万千七百七十倍に等しい時間 なお,平成11年5月28日総務省告示第382号「標準周波数局の運用に関する事項」というものがあるようなのですが,未見です。 おそらく,標準電波JJYの出力・周波数・信号のフォーマットなどの諸元については定めているものの,日本標準時の定義はないような気がします。 結局,現場先行という形で,実際には問題なく標準時を知らせる電波が運用されているのでしょうが,せめて「日本標準時(中央標準時でもいいけど)=協定世界時+9時間」など,明治の勅令の内容をもっと現代化させた法令って出しちゃいけないのかなあ,と思います。 (参考)標準電波(電波時計)の運用状況(日本標準時グループ) http://jjy.nict.go.jp/jjy/trans/index.html#item2
お礼
追加のご回答ありがとうございます。これを元にいろいろ調べてみましたが: (1)総務省では、(UTC+9h)、いわゆる日本標準時のことを「標準電波の通報する標準時」というらしいです。 http://www.japanpost.jp/pressrelease/japanese/sonota/970513j901.html (2)旧通信総合研究所のこの文には、標準電波で発射している標準時は中央標準時とは別ものとの記述があります。 http://www2.nict.go.jp/kk/e414/shuppan/kihou-journal/kihou-vol49no1.2/02-04.pdf (3)総務省は、「我が国の法律に基づいて安定的に提供される時刻情報は、現時点では独立行政法 人情報通信研究機構が通報する標準時だけである。」という考え方を持っているそうです。 http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/pdf/041105_3_02.pdf (4)国立天文台は、中央標準時を決定しているのかもしれませんが、国際度量衡局に原子時計のデータを報告して国際原子時の生成に寄与している以外、公衆に中央標準時を発表している様子がありません。(NTPサーバを公開していますが、これはGPSに同期しているそうです) これに対して、情報通信研究機構はいわゆる日本標準時を公衆に伝達するさまざまな手段を有しており、人々の生活はこの標準時にもとづいて営まれています。 こうしてみると、中央標準時は影が薄いうえに、いわゆる日本標準時と同じなのかどうかもはっきりしませんし、協定世界時ができたときの法整備の不足ということにも思えます。
- puni2
- ベストアンサー率57% (1002/1731)
法令上は,「標準時」または「中央標準時」という表現をしており,「日本標準時」という表現は出てきません。 試みに,ご質問の中で紹介された法令を見ますと, 「独立行政法人情報通信研究機構法」の第13条第1項第3号(第3項はありません)に 「周波数標準値を設定し、標準電波を発射し、及び標準時を通報すること。」 とありますが,「日本標準時」という言い方はしていません。 一方「国立大学法人法施行規則」の別表第一では,国立天文台の欄に 「…中央標準時の決定及び現示並びに時計の検定に関する事務」 と書かれています。 この「中央」標準時という表現は,かつて日本国内に時差があったことの名残です。 日本の法令で,標準時をダイレクトに扱ったものは,次の2本です。いずれも戦前の勅令です。 (数字は算用数字に改めました) 明治19年勅令第51号(本初子午線経度計算方及標準時ノ件)(1886.7.13) 一英国グリニツチ天文台子午儀ノ中心ヲ経過スル子午線ヲ以テ経度ノ本初子午線トス 一経度ハ本初子午線ヨリ起算シ東西各180度ニ至リ東経ヲ正トシ西経ヲ負トス 一明治21年1月1日ヨリ東経135度ノ子午線ノ時ヲ以テ本邦一般ノ標準時ト定ム 明治28年勅令第167号(標準時ニ関スル件)(1895.12.28) 第1条 帝国従来ノ標準時ハ自今之ヲ中央標準時ト称ス 第2条 東経120度ノ子午線ノ時ヲ以テ台湾及澎湖列島並ニ八重山及宮古列島ノ標準時ト定メ之ヲ西部標準時ト称ス 第3条 本令ハ明治29年1月1日ヨリ施行ス (つまり,日清戦争の結果,台湾・澎湖列島が下関条約によって一八九五年に日本領となったのを受けて設けられたのが「西部標準時」で,「中央標準時」-1時間です。) なお,昭和12年9月24日勅令第529号で第2条が削られ,次のように改正されました。(第1条,第3条は全くそのまま) 第1条 帝国従来ノ標準時ハ自今之ヲ中央標準時ト称ス 第2条 削除 第3条 本令ハ明治29年1月1日ヨリ施行ス 附則 本令ハ昭和12年10月1日ヨリ之ヲ施行ス この際に,「中央」の文字を外して明治19年の「標準時」に戻しても良かったような気がしますが,そのまま残りました。 これは,当時日本が国際連盟から委任されて統治していた北太平洋の島々(南洋庁という役所もあった)に設定されていた,「南洋群島西部標準時(=中央標準時)」「南洋群島中央標準時(=中央標準時+1時間)」「南洋群島東部標準時(=中央標準時+2時間)」との関係で,あえて「中央」という語を残したのかも知れません。 戦後,日本はこれらの島々の領有権を放棄しましたが,標準時そのものを定める法令を新たに作るようなことはなく,結局現在も「中央標準時」がそのまま残っています。 例えば,電波法施行規則(昭和25年11月30日電波監理委員会規則第14十四号)第40条第3項。 「…協定世界時によることが不便であるものにおいては、中央標準時によるものとし、…」 無線局運用規則(昭和25年11月30日電波監理委員会規則第17号)第3条。 「法第60条の時計は、その時刻を毎日1回以上中央標準時又は協定世界時に照合しておかなければならない。」 ところで,戦後の法令の中には,単なる「標準時」という言い方も登場しています。 たとえば,郵政省設置法(昭和23年12月15日法律第244号) 第5条第22号の9 「周波数標準値を定め、標準電波を発射し、及び標準時を通報すること。」 もっとも,昭和23年に制定された当初の同法第5条では,「標準電波」「標準時」といった用語はまだ出てきておらず,○○局,○○部といった組織の名称が羅列されているだけです。 この表現が登場するのは,「国家行政組織法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律」(昭和58年12月2日法律第78号)による改正で,第4条第60号に「周波数標準値を定め、標準電波を発射し、及び標準時を通報すること。」として現れています。 ちなみに,こちらには http://jjy.nict.go.jp/QandA/FAQ/other_qa.html#q12 「日本における「標準時」に関する法令は、十分に整理されていないのが現状です。… 「標準時」については、昭和23年からの郵政省設置法で現れます」 とありますが,誤りです。 なお,本法は平成11年に「総務省設置法」に吸収されて廃止されましたが,その「総務省設置法」にも第4条第73号で「周波数標準値の設定、標準電波の発射及び標準時の通報に関すること。」と,同様の表現がみられます。 しかし,ここで使われている「標準時」は,考えようによっては,単なる一般名詞の「標準時」であると解釈することもできそうです。(「ニューヨーク標準時はアメリカ東部標準時である,のような使い方です) そう考えると,法令上は「日本の標準時は中央標準時である」という表現が正式の書き方といえそうです。 というわけで,純粋に法令上の議論に限れば, 定義: 「日本標準時」…なし。 「中央標準時」…「東経135度ノ子午線ノ時」。それよりも厳密なレベルでの(天文学的な,例えば『理科年表』に掲載されているような)定義は,法令上はない。 法的効力: 法令の文章には「中央標準時」しか出て来ないが,実際には「日本標準時」のほうが広く使われている。 法的には「日本の標準時」と解釈すれば問題ないのかも知れませんが,やはり法令上の不備という気がします。 両者の誤差: 情報通信研究機構も国立天文台も,「日本標準時=中央標準時=協定世界時+9時間」ということで運用しているので,誤差はない。 ……長々と書いてきましたが,たぶんこの程度の情報はすでにお持ちなのではないかと推察します。 質問文から察するに,たぶん,相当ハイレベルな回答をお望みのような気がしますが……
お礼
ご回答ありがとうございます。歴史的経緯についてくわしく教えていただき、大変参考になりました。これは、時刻はどこが決めているのかを調べていて、行き当たった疑問です。 法律上はきちんと定義されていないことはわかりました。組織替えをするたびに法律を改正しているが、中身の文言はそのまま引き継いでいるようです。技術上の取り組みが、法律を置き去りにしてどんどん進んでいるということかもしれません。
お礼
詳細な追加回答をいただきありがとうございます。情報通信研究機構の通報する標準時に関する法令が、電波法→無線局運用規則→総務省告示、という末端のレベルにあるというのは驚きました。法律が不備でもつじつまが合うように動いている事情がよくわかりました。