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人間が脳内で『リンゴ』などのイメージを思い浮かべる時に使用している神経伝達物質は??
人間は、たとえば目をつぶって『りんご』を思い浮かべると、そのイメージが、ぼんやりとまぶたの裏に浮かびますよね。 その時の脳をMRIなどでモニターしてみると、後頭葉の視覚領域の部分と側頭葉連合野前方部が活発に働いているようですが。 では・・・人間がイメージを脳内で思い浮かべる時に使用している神経伝達物質は何なのでしょうか? 現在発見されている神経伝達物質は50種類ほどあるようですが、たとえば身体を動かす時のドーパミンとか。 頭の中でイメージを思い浮かべるという作業の時には、脳内でどの神経伝達物質が活動しているのでしょう? その神経伝達物質の名前を知りたいのです。
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こんにちは。 #1,3です。 回答をお読み頂きありがとうございます。 >イメージの内部喚起に必要な神経伝達物質が、グルタミン酸とGABAであるならば、受容体拮抗剤などのなんらかの方法で、『グルタミン酸の脳内での量が極端に減少した場合』は、『頭の中でのイメージが想い描きにくくなる、まぶたの裏にイメージした像がよく観えない・・・』などの現象は『理論的には起こりうる』のでしょうか? そうですね、私は薬物などにはほとんど知識がありませんので、どのようなものがあり、どんな効果をもたらすのかは良く知らないのですが、受容体拮抗剤ということですから、標的ニューロンのグルタミン酸受容体がブロックされてしまい、興奮性信号が伝わらない、もしくは伝わりづらくなったら、リンゴのイメージはどうなるかということで宜しいでしょうか。 記憶というのは、特定の入力に対して反復性の賦活パターンを持ったニューロン結合です。大脳皮質内でグルタミン酸受容体の働きが阻害されるならば、この回路に信号が流れませんし、この回路に信号を送ることもできません。また、入力された信号に対して定められたパターンで反応しなければ、それはリンゴではありませんから、ですから、記憶回路内の疎通が上手く行かず、そのパターンが虫食い状態であるためにイメージがぼやけてしまうということは、取り敢えずないと思います。 このように、記憶というのは信号が流れるか流れないか、つまり思い出せるか思い出せないかのどちらかです。ですが、イメージしづらいあやふやな記憶というのは、我々の日常に幾らでもあることですよね。では、いったいどうしてのようなことが起こるのかというならば、それは、リンゴをイメージするということが、単に信号を送ってリンゴの記憶回路を賦活させるといったものではなく、それが複数の回路や経路によって行なわれる作業であるからではないかと思います。そして、これは大脳皮質で行なわれることですから、その信号伝達にはほとんどグルタミン酸が使われています。 記憶があやふやであるということは、大雑把なことは憶えているが、細かいところまでは思い出せないといったようなことではないでしょうか。細かい部分があるということは、つまり、記憶というのはそれに対応するひとつの回路なのですが、実際にはもっと幾つかに分割されているということですね。 頭の中にリンゴをイメージするための視覚記憶も、「丸い」「赤い」「へたが付いている」などといった特徴に分けられています。実際にはもっと細かいのでしょうが、これは、我々の脳が視覚情報を取り込むときに視覚処理中枢がそれらをバラバラにしているからです。それらのパーツはより高次な中枢に送られ、一連の情報として統合されます。 これが統合されるということは、それがひとつのものから同時に得られた視覚刺激、即ち「同時に学習される」というのが最も重要な条件になります。これによってパーツ同士は関連性を持った一連の記憶ということになりますので、一緒に思い出すことができるというわけですね。にも拘わらず、細かい部分までは中々思い出せないということは、それぞれのパーツには「学習効果に差がある」ということになります。 まあ、要はちゃんと憶えているかいないかってことですよね。 記憶というのは同じパターンで反応するニューロンの集団です。 視覚や聴覚などから同じパターンの信号が刳り返し送られて来ますと、それによって「同時に発火したニューロン同士」の横の連絡が強化されます。これが記憶回路なんだそうです。同様に、複数のパターンの刺激が同時に行なわれますと、それによって作られたパーツ同士にも繋がりができますよね。 記憶が保持されるということは、次ぎに同様の刺激が与えられたときに同じニューロンが同じパターンで発火するということですが、既にニューロン同士の横の繋がりが強化されていますので、それが少々不十分な刺激であったとしてもパターンは難なく再現されます。直接見たり聞いたりしなくとも、我々がちょっとした手掛かりでそれを思い出すことができるのはこのためですね。このように、ニューロン同士の横の繋がりによってパーツが賦活することを「想起」といい、パーツ同士の繋がりによって賦活が導かれることを「連想」といいます。 繋がりが強化されるということは、そこに使われているシナプス結合の信号伝達が円滑になるということです。具体的には、一回で放出されるグルタミン酸の量が多くなったり、受け取る側の受容体の感度が良くなったりするということですが、このような変化は「シナプスの可塑性」によるものです。そして、そこに刳り返し刳り返し信号が流されることによって結合が強化され、伝達が円滑になるという、我々の神経系に発生するこのようなシナプスの可塑的な変化を「学習」といいますね。 学習効果の高い回路は弱い信号でも賦活しますが、そうでないものは思い出せないか、憶えていないのどちらかです。このような理由から、思い描こうとするイメージが、詳細な部分の抜け落ちたあやふやなものになるというのは、我々は日常、いくらでも経験していますよね。そして、視覚や聴覚によって、そのパーツを直接刺激する縦の信号と、それが賦活したことによって関連するニューロンやパーツに送られる横の信号、このような信号のやり取りは、グルタミン酸の多い少ないにはっきりと関係してきます。 また、リンゴの視覚的イメージを想起させる場所と、リンゴの論理的概念を認知する場所は違います。リンゴという概念にアクセスできても、それをイメージするためにはどうしても視覚中枢の助けを借りなければなりません。前頭連合野がそれを認知しても、視覚連合野がもたもたしていてはイメージは結べませんよね。逆に、何かの切っ掛けでリンゴのイメージが現れたとしても、前頭連合野でリンゴという名前が出てこないということだってあります。このように、リンゴという概念を認知し、それをイメージとして思い浮かべるためには、大脳皮質内でも様々な経路を使わなければならないわけなんですが、その信号伝達もやはりグルタミン酸ですね。 グルタミン酸拮抗剤なるものが投与されて、大脳皮質全体で信号伝達が悪くなるというのはどういうことでしょうか。 いくら何でも、リンゴという名前が咄嗟に出て来なくなったら、それは相当なボケが進行しているということですよね。それではちょっと困りますが、顔は思い出せるのだけれど名前が出て来ないといったことは良くあります。何だかはっきりしなくて考えが纏まらないといったようなことは、しばしば我々は、朝起きたばかりで寝惚けているときなどに体験することだと思います。 前回ご紹介しました、セロトニンやノルアドレナリンなどの「装飾系伝達物質」の装飾作用には「促通効果」というのがります。これは、興奮性信号であることは間違いないのですが、信号を伝達するものではなく、標的ニューロンを修飾して、そのニューロンが信号を出しやすくしてやるというものです。つまり、グルタミン酸結合に促通効果が掛かれば、そのニューロンはグルタミン酸興奮性信号を送り出しやすくなるということですね。このような作用によって脳全体の信号伝達が活発になることを「覚醒」といいます。 どのくらいまで確かめられているのかはちょっと分かりませんか、このようなものは脳内広域に投射され、セロトニンは通常の覚醒状態、ノルアドレナリンは外的刺激に応じ、興味を示すとか警戒をするとかいった、より高い覚醒状態をお膳立てするものなのだそうです。 では、薬物効果になどによって大脳皮質全体でグルタミン酸の流れを悪くすることができるとするならば、それは脳がまだ目を覚ましていない状態に良く似ているのではないかと思います。 何か考えようと思っても考えが纏まらない。 目や耳などからはっきりとした情報が受け取れないので状況が掴めない。 もちろん、運動神経系にまともな命令が出せないので動きが鈍い。更にレベルが下がりますと、姿勢を保つことができなくなります。 そして、終いには何も聞こえず、目の前が真っ白になってひっくり返ってしまうのではないでしょうか。 肺や心臓は動いていてくれるでしょうから、かろうじて生きちゃいるんですが、これではちょっと使いものになりませんよね。 まあ、あまりいい加減な話をしてもいけませんからこのくらいにします。 一回目に手抜きをしてしまいましたので、少し余分に書いたつもりです。私は薬物には知識がありませんので、質問者さんがここに出ておられる三つ目のご質問には残念ながら参加できませんが、色々とお調べになっているようですから、何かの参考になれば嬉しいです。
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- ruehas
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こんにちは。 #1です。 #2さんの回答を拝見致しまして、我ながら説明不足でたいへん申し訳なく思います。 >人間の身体ってとっても複雑だと思います。 #2さんの仰る通りです。 実は、この回答には続きがあったんですが、とてもじゃないですが全部は説明できたものではありませんので、残りは全て切り捨てました。その伝達物質の名前を教えろという質問者さんのご要望にお答えするならば回答はこれしかありません。ですが、#2さんのご指摘の通り、最低でも以下に就いてだけは補足しておかなければなりません。 我々人間の脳内伝達物質は種類にして50余りが確認、もしくは候補に上がっており、その性質は多くのものがまだ明らかになっておりません。 脳内で比較的明確な機能を示す代表的なものには、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニン、アセチルコリン、ヒスタミンなどが有名ですね。但し、このようなものはほとんどが「神経修飾系伝達物質」と申しまして、グルタミン酸やGABAとは、ひとつはっきりとした違いがあります。それは、これらの修飾物質は標的の神経を修飾するものであり、「リンゴ」といった個別の情報を伝達するものではないということです。 「修飾」とはどういう意味かと申しますと、分かりやすく言うならば「神経や、もしくは脳全体の状態を整える役割」ということになるでしょうか。つまり、修飾系伝達物質というのは、脳がリンゴを思い出し安くする、または、リンゴを思い出す必要があるときにその状態を整えるために働く物質なんです。幻覚が見えるのは、幻覚を見やすくする作用が働いているからです。ですが、幻覚の内容がそれによって情報伝達されたというわけではありません。 ですから、リンゴを思い浮かべるのにそれらが使われていないかと言えばそんなこともありません。その全部が必ず何処かに関与しています。ですが、そのようなものは特にリンゴを思い浮かべるためにわざわざ機能しているわけではないんですね。記憶の実体と呼べるものは、やはり私の知る限りグルタミン酸の興奮性結合しかありません。 他にも説明しなければならないことは山ほどあるんですが、今回はこのくらいでカンベンして下さい。
人間の身体ってとっても複雑だと思います。脳の中の伝達物質がどう働くかまだまだ未解明って聞いたこともあります。「思い浮かべる作業」にはたくさんの神経伝達物質が関わっていると思います。いろんな伝達物質のバランスが重要なのじゃないかと思います。 認知症が「思い浮かべられなくなる病気」とすると、その治療薬はアセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA型グルタミン酸受容体拮抗薬だそうです。 http://chemstation.livedoor.biz/archives/50041901.html 幻覚が「余計な思い出しをしてしまうこと」とすると幻覚を起こす物質である脳内麻薬の何かも「思い浮かべること」に関わってくる気がします。 知識として「どの伝達物質」が関わっているかは知らないんです。実際思い出している瞬間では#1さんの言われる2つが重要なのかもしれません。でも、全体の流れとしては、いろんなもののバランスが大切なんじゃないかと思います。
- ruehas
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こんにちは。 目を瞑って頭の中に「リンゴ」を思い浮かべることを「記憶の想起」と言いますね。 実際のリンゴの視覚情報を認知するのも、思い浮かべたそれをリンゴと認知するのも全く同じことなのですが、このような作業は全て大脳皮質で行なわれています。そして、大脳皮質のネットワークを形成する、その神経結合のほとんどは興奮性伝達物質として使われる「グルタミン酸」と、もうひとつは抑制性の「GABA(γアミノ酪酸)」であり、脳内の「認知」という作業は、ほぼ間違いなくこれによって行なわれています。従いまして、リンゴのイメージを想起するため使われている神経伝達物質は「グルタミン酸」と「GABA」、このふたつということになります。
お礼
的確なうえに、私のような素人でも非常に理解がしやすいご説明、有難うございます。 私にとってruehas様の御返答は、光り輝いて見える新情報でした。 >記憶の実体と呼べるものは、やはり私の知る限りグルタミン酸の興奮性結合しかありません。 と聞いて、新たな疑問も浮上してきたのですが。 イメージの内部喚起に必要な神経伝達物質が、グルタミン酸とGABAであるならば、 受容体拮抗剤などのなんらかの方法で、『グルタミン酸の脳内での量が極端に減少した場合』は、 『頭の中でのイメージが想い描きにくくなる、まぶたの裏にイメージした像がよく観えない・・・』などの現象は 『理論的には起こりうる』のでしょうか?