ごきげんよう。
「商品を買う」ことに限らず、「個人または集団が、複数の選択肢から1つを選択するという情報処理過程」としての意思決定(decision making)を人間がどのように行なっているかについて、認知心理学で研究が行なわれています。
ただ、心理学のなかでも「認知心理学」「社会心理学」など複数の領域に関係する話であり、さらにそれにとどまらず、経済学や経営学など他の学問分野にも関係してくる話なので、それを包括的に語れる人はなかなかいないのではないかと思います。「商品の購入」「消費者の購買行動」については基本的に経済学やマーケティングの主専門領域なので、そちらでの研究も数多くありますし、「経済学」のカテゴリあたりで質問したほうが、こちらより詳しい回答が返ってくる場合もあると思います。
> まだ導入はされてはいませんが、環境税などで電気の値段が上がるとします。
> 市民は電気代をより少なくしたいので省電力設計の製品を買いますよね?
そう単純な話だろうか? 全員がすぐに省電力商品を選択するようにはならない。
じゃあ人間はいったいどういう基準で選択をしているの??
というのが、この分野のメインの疑問になります。
ただ、それについての経済学や心理学の研究や理論をひとつひとつ詳しく説明していくと、本が1~2冊書けてしまうほどなので、ここの回答欄で紹介するのはまず不可能(概略だけでも非常に長くなってしまうかも。わかりやすくまとめなくちゃいけない私も大変)。個別の理論は他の方が紹介して下さるかもしれませんが。たとえば、
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複数の選択肢から1つを選択するには、選択肢間の優劣を決める基準が必要となる
合理的な選択とは、その基準に照らして選択肢のうちで最も価値を持つものを選択すること
しかし「価値」とは選択を行なう主体によって、あるいは状況によって違ってくる
主体にとっての対象の主観的価値を「効用(utility)」という
効用関数(utility function)
効用は主観的なものであって、客観的な尺度とそのまま一致するとは限らないが、
客観的尺度から何らかの関係により効用が特定できる場合の、その関係を表わした関数
多属性効用理論(multi-attribute utility theory)
上のようにして決まった効用を元に決定を行なうための規範的理論
効用は選択肢のもつ属性(attribute)ごとに与えられ、選択肢ごとにそれぞれの属性のもつ効用値が(主観的に)決められる、全体の効用は個々の効用に重みをかけたものの和で表わされる
しかし人間は常に固定された規則に従って合理的な判断を行なっているわけではない
~~人間のみせる決定行動の多様性
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さらに言うと、提案されているいくつかの意思決定の理論やモデルも、「消費者がもっている(購買行動に必要な)情報は完全である」「選択肢(商品の数)は~~に限定」というように、考える場合の前提条件が設定されているものなので、人間の「あらゆる購買行動」の意思決定を「完全に」説明できているモデルというものは存在しません。
環境税と省電力設計の製品の話の場合も、質問者さんが↑で書いたのは、「人間は『商品の価格』という基準にメインに従って行動するのであり、消費者は安いものを買うだろう」という内容になります。
しかしその裏には複数の前提条件があると考えられます。
メーカー・小売側の前提条件の一例:
「省電力かどうか以外の商品の性能は全ての選択肢で同じである」
「メーカーのブランドや知名度に差はない、社員の営業力も同じ」
「商品購入の際にリベートがつくなどの付加価値は存在しない」
消費者側の前提条件の一例:
「あらゆる世代の人間で選択基準は同じである」
「消費者に入ってくる各商品の情報は完全である/限定されている」
「商品の選択にかけられる時間は無制限」
「選択終了まで他の消費者の行動結果の情報は入ってこない」
などなど。
人間の行動と意思決定にはさまざまな要因が関係してくるので、前提条件をつけて状況を限定しない場合に、あるひとつの基準だけにのっとった購買行動の説明というのはできないのじゃないかと。
経験則から申しますと、まあ「他よりも安ければその商品を買う人間は多いでしょ」と、「価格」が人間の購買行動のメインの基準のひとつとなっているのは、まず確かなのではないかと思うのです。しかし、学問と研究の分野から厳密に購買行動を完全に説明しようとするのは難しいということですね。
この学問分野では、『環境税』というものは特別なものではなくて、購買行動において「価格という価値基準」および「価値基準にもとづく消費者の意思決定」に影響を与える一変数としてみるのです。
質問者さんがおそらく求めていたであろうような、すっきりとした解決回答にはなりませんでしたが、私の意見としてはこんなところで。訂正などありましたら、また。