この場合の用法での「どころか」は、中立性のある「ばかりか」に置き換えたほうがより望ましいと思います。
彼女は英語ばかりか(→ばかりでなくその上)、フランス語だって上手です。
She knows not only English, but French.
できれば「…か」でつながず、「のみならず」「ばかりでなくその上」「いうまでもなく」などとした方が望ましいでしょうし、更にいえば、「…の上に」「…に加えて」「…はもちろんのこと」などといった一般的な加算の順接にするとより一層つながりがハッキリします。
彼女は英語はもちろん、フランス語だって上手です。
She knows French, to say nothing of her English.
このように、元来は否定が伴って使われやすい「どころか」をあえて使うには及ばないでしょうし、もし使う場合はむしろ、以下のように反対になる逆接表現の方がむしろ相応しいでのではないでしょうか。
彼女はフランス語どころか、英語だって覚束ないのです。
She knows no English, to say nothing of her French.
ここでもう少し、「AどころかB」の場合の使い分けについて触れてみます。
1)程度の軽さを上げて、より極端な強調
Aは程度の軽いと見做して、そんなもんじゃないぞと聞き手の常識や予想を覆すかのような強調としてのBを導いている。
「金に困りだしたどころか、借金漬けで自己破産寸前だよ」
2)否定と対照強調
上げられたAを否定しただけでなく、対照的なBをこそ提示して強調する。
「金に困っているどころか、高級マンション暮らしで外車2台を乗り分けている身分だよ」
3)程度の重い対象だけでなく軽いものさえまとめての全否定的な強調
「一万円どころか、百円さえありゃしないさ」
こんな風に、Aを過小軽微に見做して、Bを極端に強調することやり方は、結局どこか反対対照話法や否定的な修辞法に多いやり方ですから、この場合のA=英語の能力をを過小に見ないで、加えてその上で更にフランス語の力を強調する場合には、もっと中立性のたもたれた「ばかりか」や、「その上さらに」といった順接表現で充分なのではないでしょうか。