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バロック時代の人間観について教えてください
バロック絵画に、バロック時代の人間観が反映しているのでしょうか。 よろしくお願いいたします。
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論旨を簡単にするために、バロックとそれまでの古典主義を対立させて見ていくことにします。「人間観」ということですが、古典主義の哲学と言えるのがスピノザやデカルトの体系であり、それは「神と人間の存在の確信」に支持を与える、直線的な思想であると言えるでしょう。 対して、バロックはアーノルド・ハウザー『芸術と文化の社会史』によるとコペルニクスの宇宙論が勝利を占めた後にヨーロッパ美術に出現したとしています。宇宙の無限性という畏怖すべき観念が、神と神によって創られた人間の存在の基盤を揺るがしたのです。バロックの曲線(楕円や渦巻きや螺旋)は円環へと収束します。円環には始まりも無ければ終わりもありません。パスカルは彼の思想において「無限なる空間の永遠の沈黙」を前にして不安を覚えました。バロック美術は洞窟、迷宮、唐草模様などの付属物によって過剰ともいえる装飾を与えられています。そのような曲線は、時代的観念の象徴であるとともに、不安を慰撫する休息をもたらす意味を持っています。ガストン・バシュラール『空間の詩学』では人間は貝殻のなかに最大の休息を見出す、と述べています。また、貝殻を形作る渦巻きや螺旋は女陰のシンボルであるとユングは指摘しています。ここまでの記述を整理すると―宇宙論の確立により生み出され増大する不安―その不安を慰撫する円環(渦巻き、螺旋)の形成―生命と存在の再生のための胎内回帰。とまとめられるでしょうか。 参考までに書いておきますと、バロックとは、もとポルトガル語の<バローコ>でゆがんだ真珠を意味する普通の言葉でした。それが美術用語に転用され風変わりなもの、不均等なものという意味を付与されることになりました。そこには18世紀後半のフランスで古典主義の概念が確立し、そこから逸脱したものがバロックの名で呼ばれたという時代背景があります。 もし、ちゃんとした(?)美術史の講義等に提出するのが質問の目的でしたら、 あまり参考にならなかったかなぁと思います。ただ、あまりバロックは美術史で割かれない異端児でもある、可哀相な「宝石」であることは確かですね。 ご参考までに・・・
お礼
ありがとうございます。 どこから手をつけて良いかわからなかったので、 パスカルから手をつけてみます。