悪い意味での忖度なんですね。
もちろんその言葉が明らかに差別、侮蔑の意図をもって発せられることがありうるんでそういうことを言うのでしょうけど、言葉自体を抹殺して問題が解決するわけじゃないのに、そこを混同するんですね。
おかげで、座頭市なんていうものが放送できなくなりました。あの主人公を呼ぶときに使う身体的特徴の表現が差別用語だというわけで。
その忖度のおかげでわけのわからないことになったので、作者自身が納得してセリフを書き換えたものがありました。手塚治虫のブラックジャックで、植物の種が体に寄生した結果あちこちから葉っぱや種が出てくる状態になった少年の兄が「こんな**」といって、ブラックジャックが激怒して、その言葉を使うな、おれも昔そういわれたことがあった。決してそんな呼び方をするんじゃないと怒鳴るシーンがありましたが、ここの**という語が問題だと読者のPTAが言ったかなんかしりませんが、原作者に抗議が行ったので、仕方なく「こんな病気」と作者が書き替えました。
そうすると、なぜこの医者がこんなに怒っているのかが意味不明になりました。
こんな病気が、といわれて怒る人間はいないはずで、そもそも医者が病気といっただけで怒鳴っていたらもはや業務上意味不明です。
そのため、このシーンが理解不能な変なシーンのままストーリーが展開するという状態が今の単行本状態です。
それは明らかに差別用語です。しかし、この場面で兄貴がふとその差別用語を発したのでブラックジャックが怒りまくったわけですから、前後の脈絡でそれが使われていないと話がつながりません。明かな差別用語を使ったから怒ったわけです。
だけど、クレームを言われたのが原作者ですから、くだらない言い合いとかトラブルになることを避けたのです。その結果意味不明の作品が一つ出来上がったということになります。ちなみにこの用語はカナでいうと3文字の、「カ」で始まる、handicapped personと言う意味の日本語です。
原作者がこの時に生きていたため、結果がまずいことになったわけです。
もし物故後だったのであれば「作中に差別用語と思われるものがありますが、作者は差別の意図で使ったのではなく作中の必然性からでたもので、当時の社会情勢を鑑み、また、作者がすでに物故していることから、原作のままにしました」と断れたんですけどね。
その座頭市の差別用語のほうですけど、昔8代目桂文楽という落語の名人中の名人在世時に、ある人がある噺を聞きたくて何度も何度も寄席に通ったそうです。一度ラジオかなにかでちらりと聞いたことがある話で、ああいい噺だ、いちどちゃんと聞いておきたい、と楽しみに楽しみにしていたのです。
だけど、その噺が出ることはなかった。文楽が亡くなるまでその人の前ではしなかった。ああなんという残念・・・
実は、これはしないはずで、寄席の楽屋では、当日見えているお客様の状況を見て、これこれの人がいます、という情報が舞台裏に回るのです。そして演者はそれを参考にしてネタを選ぶわけです。
そうすると、「今日は目の不自由なお客様が見えてます」と回ってきたらそういう演題はかけないのです。これが忖度ですけど、客にしてみたら余計なお世話なんです。
「*てのは妙なもんだね、寝ているうちだけよーく見える」という下げを聞きたくて憧れて通った客は、絶対に聞くことができなかったのです、
この忖度のほうが差別になっているんだ、というのはさすがにその障害者側からは堂々と言えない。
自分の方が正義だと思うと、思いやりを失います。そしてその押し込めようとする用語なしに説明をしようとすれば、混乱が起き、あらたな事故のもとになるという想像力を欠くことになるということを当人が気づかなくなるのです。
お礼
このたびは貴重なご意見、ありがとうございました。