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昔話の「~と。」という話し方は方言ですか?
日本各地の民話を読んでみようと、 フジパン「民話の部屋 とんと昔あったとさ」 http://minwa.fujipan.co.jp/ を見てたのですが、「~と。」で終わる語り口が多いことに気付きました。「~とさ。」の場合もあります。 例えば、「むかし、あるところに代々続いた大層な長者があったと。」や「門を出たり入ったりしとったと。」などの言い方です。 日本各地で言い方が違うのかと思い、いろいろ読んでみたのですが、どの地方の民話にもこの「~と。」が使われています。 この「~と。」という言い方は、昔話を語る時だけの独特な話し方なのでしょうか? もしそうだとしたら、いつから「~と。」が全国に広まったのでしょう? 昔からの口伝ですか? それとも、有名な絵本かテレビ番組か何かの影響ですか? (そういえば、「棒が一本あったとさ♪」など歌でも使われていますが…。) それともやっぱり、どこかの方言なのでしょうか? もし方言だとしたら、どこの方言なのでしょう? ご存じの方いらっしゃいましたら、お答えいただけますとありがたいです。 よろしくお願いいたします。
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ご質問のサイトにある昔話の途中にある、「~と。」や「~とさ。」は「~と(昔話の語り手が)聞いたことだ」という意味で使われていると考えられます。もともと昔話というものは、話す人が勝手に「作る」ものではなく、昔から伝わる話を「語る」ものだとされてきました。文法的に言えば、この「と」は伝承された昔話(伝聞)の引用を表わす格助詞であり、「さ」は文末について軽い感動を伴う断定を表わす終助詞であって、別に方言ではありません。また「~とさ」は少なくとも江戸時代から使われている昔からの表現です。 ところで、一つの昔話の最初と最後の部分には、その地方ごとに定型的な「始めの句」と「結びの句」がありました。違う昔話でも、最初と最後の部分はほぼ共通であることが多かったようです。 日本民俗学の父と言われる柳田國男は昔話にも造詣が深く、「昔話の發端と結び」という文章があり、次のように書かれていました。(『昔話覺書』所収 定本柳田國男集 第6巻367頁)(以下の引用は現行の漢字・仮名遣いに改めています。また()内は回答者の注釈です。) 「昔話の結末の一句も、本来の趣旨は至って手短かに、たゝ゛是だけが伝承の全部で、知って語り残して居る部分などは無いということを、表白した誓文のようなものらしいが、此方は後々の変化が多く、また一般に長たらしくなろうとしている」とのことです。柳田は全国各地の結びの句を紹介していますが、各地で千差万別であり広く共通する文言はありません。 ご質問の「と」や「とさ」に近いものもあり、興味深く感じました。(以下の引用は現行の仮名遣いに改めています。また()内は回答者の注釈です。) …がっさとうさ(「こうだったとさ」の意) …がっさとうさでろ(「このようでございましたとさ」の意) 鹿児島県沖永良部島 …ていさ(「とぞ」「ということだ」または「とさ」)同喜界島 …それでいっちょうはんじょうさけたとさ …いっちょうはんじょうさけたとさ …一生安楽にくらしたとさ 新潟県佐渡 ご質問のサイトの民話はある程度その土地の語り口を生かそうとしているようですが、このサイトを全国の主に子どもたちが見聞きすることを考慮すれば、共通語を土台にする必要があると考えられます。「~と」や「~とさ」が多用されているのはこのためではないでしょうか。
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- 131tobi
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結論を先に書くと、方言ではありません。 ただ、「~とさ。」は現代ではあまり使わないので、昔話などにピッタリなんでしょう。 詳しくは下記をご参照ください。 【昔話の「~と。」「とさ。」という話し方は方言か okwave】 http://ameblo.jp/kuroracco/entry-12214323743.html 以下は一部の抜粋(重言)。 相当込み入った話なので、辞書の引用を交えて書いていく。 まず、「と」の働きは方言ではない。下記の格助詞の〈2 (文や句をそのまま受けて)動作・作用・状態の内容を表す。引用の「と」。「正しい―いう結論に達する」〉だろう。 (略) 後ろに「~いう」「~いわれる」「~される」などが省略されているのだろう。まぁ「~とさ」現代文ではあまり使わないかな。だからこと昔話にピッタリなんだろう。「~と」も少ないかな。「~忙しいんだと」あたりはありだろう。でもこれも「~忙しいんだって」のほうが多い気がする。 「~のこと」「~か」あたりなら、現代文でもフツーに使う(書き言葉限定かな)。 これが「とさ」になると終助詞の「さ」がついている。〈4 (多く「とさ」「ってさ」の形で)他人の話を説明したり、紹介したりする気持ちを表す。「昔々、竹取の翁(おきな)という老人がいたとさ」「彼も行くんですってさ」〉 (略) おそらく、現代では「ってさ」のほうが使用例が多いだろう。 この「って」がまたややこしい。 (略) ↑の場合は「と」の変形と考えるのがわかりやすいだろう。〈[格助]《格助詞「と」または「とて」の音変化とも》名詞、名詞的な語に付く。 1 引用する語、または文の下に付いて、次に来る動作・作用の内容を表す。…と。「金を貸してくれって頼まれた」「読書しろって言われた」〉 この「ってさ」ときわめて近い言い回しが「ってよ」。こちらは男性限定の印象がある。フツーの終助詞の「よ」はむしろ女性が使う印象があるけど。 こちらの用例として近年有名なのは〈部活やめるってよ〉だろう。男子高校生の言葉づかいとしてはきわめて自然。 (略)
お礼
現代での言い方、感覚がつかみやすく分りやすいです。なるほどです。「忙しいんだと」は確かに、聞いたことある気がします。 省略されている部分をきちんと汲み取ると、意味がすんなり入ってきますね。「~と。」の後に省略した意味がある、という発想がなかったので、教えていただけて助かりました。 ご回答ありがとうございました!
- SPS700
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もうすでに優れた回答が寄せられていますので、これは寝言です。 ご質問に「例えば、「むかし、あるところに代々続いた大層な長者があったと。」や「門を出たり入ったりしとったと。」などの言い方です。」とありますが、 前半の「と」は、標準語の、彼は行く「と」言った、のように引用を表し、話者の促成ではなく、昔から言い伝えられている話によると、という意味合いです。 後半の「と」は、門を出たり入ったりしていた「の」、などの「の」と同じで、標準語の形式名詞「の」にあたります。これは九州の方言などの「と」に対応します。
お礼
「~と。」にも、いろいろ種類があるのですね。そういえば九州の方言で「何ばしよっと?」など、文の最後に「と」を使うのを聞いたことがあります。この「と」は、その方言に慣れないと、判別が難しそうですね…。でも、興味深いです。 ご回答ありがとうございました!
- bakansky
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古語の 「引用の "と"」 というものではないかと思います。現代語でも 「~ と言う」 「~ と聞く」 などと使います。「広辞苑 (第4版)」 の 「と」 の項を見ると 「それと指示・引用する意を表す」 とありました。自分が聞いて記憶している話を 引用・紹介する のだということを「と」 の一語で示すと、いかにも昔の話であるという雰囲気が出るように感じます。
お礼
ご回答ありがとうございます! この「~と。」には、そういう意味と役割があったのですね。確かに、とても昔話っぽい印象の話し方で、いい感じの味があります。
お礼
「~と。」は共通語で方言にはもっと多様な形がある、という点、目から鱗です。具体例も拝見して、なるほどと思いました。方言の言葉の転がし方、これまた味と愛嬌があって、面白いですね。『昔話覺書』、読んでみたいです。 意味と文法も詳しくご解説いただき、大変勉強になりました。感覚的につかみきれずもやもやしていた部分が、やっとはっきり理解できた気がします。 ご回答ありがとうございました!