• ベストアンサー

村上春樹 かえるくん、東京を救う

村上春樹作のかえるくん、東京を救うの話の主題はなんですか?私は「境界線」として取っているのですがどう思いますか?あなたの考える話の主題はなんですか?

質問者が選んだベストアンサー

  • ベストアンサー
  • Nakay702
  • ベストアンサー率79% (10005/12514)
回答No.1

>村上春樹作のかえるくん、東京を救うの話の主題はなんですか?私は「境界線」として取っているのですがどう思いますか?あなたの考える話の主題はなんですか? ⇒「主題」ですか。う~ん、むずかしいですね。一通り「かえるくん、東京を救う」を振り返ってからもう一度考えることにさせてください。(長文です。気が向いたら読んでください。)  「かえるくん、東京を救う」(あらすじ) 金融会社に勤める片桐が帰宅してアパートに入ると、大きな蛙が待っている。「かえるくん」の言うには、近々東京に大地震が起こるはずだから、協力してそれを食い止めようというのだ。地震の震源である「みみずくん」と闘うのである。「かえるくん」は、片桐の「意識上の」支援を受けて勇敢に闘い、「みみずくん」に勝って地震を未然に防ぐことに成功する。がしかし、そのあと「かえるくん」は片桐の目の前でドロドロに融けて消えてしまう。『神の子どもたちはみな踊る』に含まれる6編のうち、最も楽しく読めた作品でした。 因みに、暇なので(!?)他の5編もざっと見ておきましょう。制限字数内で書けるでしょう。  「UFOが釧路に降りる」 妻に逃げられた小村は気分転換のために休暇をとって旅に出ようと考える。同僚佐々木に釧路行きを勧められる、というより妹ケイコに荷物を運ぶように頼まれる。(荷物の中身は最後まで分からない。つまりこれは作品のための「道具立て」にすぎないと見た。)釧路に着くと、ケイコが迎えにきている。彼女の友人シマオさんが一緒だった。二人に宿まで案内され、三人で雑談をしている途中、なぜかケイコは中座する。そのあと、小村はシマオさんから、「UFOが釧路に降りるのを目撃したある人妻が蒸発した話」などを聞く。そんな中で、二人は急速に、親密に、いや「怪しい関係」になっていく…。  「アイロンのある風景」 神戸出身の中年男性三宅、事情は分からないが妻子を神戸に残したまま茨城の海辺に住んでいる。ある冬の深夜、流木を集め、知り合った順子・啓介夫妻を誘って焚き火をする。啓介は途中で腹痛を訴えて先に帰宅する。残った二人は対話の中で親密さを増していく。そして、火が消えたら二人一緒に死ぬ約束を(いとも簡単に!)する。とろ火の前で順子は三宅にもたれたまま眠りに落ちる…。なお、「アイロンのある風景」とは三宅の描いた絵の題である。  「神の子どもたちはみな踊る」 善也は、いわゆる私生児だが、母親や知人らからは「神の子」と聞かされて育った。しかし17歳の時、出生の秘密を聞き、父親は「犬にかじられて右耳たぶを失った産婦人科医」であることを確信する。その後25歳の時、帰宅途上の電車内で父親と思しき人を見かけ、後を追う。電車、タクシーと乗り継ぎ、郊外の夜道を歩いて追跡するが、行く手に現われた野球場の囲いの金網にあいた穴をくぐったところで見失ってしまう。仕方なく善也はマウンドのあたりで踊る、月の光を浴びて踊る。「神の子はみな踊るのだ」…。(全然面白くない。「父親と思しき人との対話」の場面へ続けてもらいたい。)  「タイランド」 医師のさつきは学会でタイへ出向し、会議の後の自由な一週間を利用して息抜きの観光をする。ガイドのニミットが自前の高級車を運転しながら案内してくれるのだが、その温厚な人柄からくる暖かみのある会話にさつきは心休まる。帰国の直前に占い師の老女に引き合わされ、「あなたは体の中に石を持っている」―それは3年前に分かれた前夫に対する怨恨なのだろうか?―「夢の中に現れる大蛇にそれを飲み込んでもらうように」と言われる。さつきは帰路の機中で、帰ったら思いきり眠ろうと考える。  「蜜蜂パイ」 「熊のとんきちとまさきちは親友だ。とんきちは鮭取りが、まさきちは蜂蜜取りが上手だったので、それを交換しあった。ところが鮭が取れなくなってとんきちは困り、二人の間にひびが入った」という物話を淳平おじさんは沙羅に語った。沙羅はとんきちが可哀そうだと思う。ところで、淳平、沙羅の母小夜子、父高槻の三人は大学の同級で親友だった。ところが、高槻は妻の小夜子と子の沙羅を捨てて別の女のもとに去ったのだった。<とんきちは、まさきちが集めた蜂蜜を使ってパイをつくることを思いついた。そしてとてもおいしい蜂蜜パイができて、二人の間に元の仲良しの関係が甦った>という続きを淳平は考える。そう沙羅に語ろうと思う。「沙羅は喜ぶだろう。小夜子も喜ぶだろう。」淳平は昔から小夜子が好きだった。「この二人の女をしっかり抱きしめよう…。」 さて、本書は1999年8月から12月にかけて「新潮」に連載された5つの短編集に作者がもう一つ書き下ろしを加え、2002年文庫にまとめたものである。一通り素読してみて、あらかじめ表題から想像していたのと内容が大きくかけ離れていることにまず驚く。本書を読む前は、この文庫全体の表題「神の子どもたちはみな踊る」がその6編のうちの1編であるなどとは考えもしなかったし、「神の子」とはイエス・キリストやマホメットのような立場の者だろうと推測し、しかもそれが全編に通底しているものと勝手に想定していた。それで、「新手の神様」とのお目通りを楽しみにしつつ読書に取りかかったものであった。 …と、まあこのような先入観を抱いたばかりに、読書後の「カルチャーショック」は大変なものであった。このように作品群のうちの1編をもって全体を代表させるという表題のつけ方は、村上氏が勢力を傾注して翻訳したカーヴァーのやり方などと同じである。彼の訳した『レイモンド・カーヴァー全集2 愛について語るときに我々の語ること』には17編の短編が収められているが、この表題と同じ題の短編「愛について語るときに我々の語ること」は同書中の16番目の作品である。この種の表題の意味は、「何々ほか」という風に読み替えなければならないことになるのだが、厄介なのは、「~ほか」の部分がないと表題を見ただけではそれと分からないことである。 それで私のような粗忽者は、独断で勝手な予想を立てておいて、「あてが外れた」とか「看板に偽りあり」などと不満を洩らすことになる。カーヴァーのことについて触れたついでに引用するが、『村上春樹全作品シリーズ(8) 短篇集III〔1991〕』に折り込まれた別冊「自作を語る 新たなる胎動」の中で、村上氏は次のように述べている。「僕の短編小説の師は三人いる。…フィッツジェラルドから学んだものは読者の心を震わせる情感であり、カポーティから学んだものは唖然とするほどの文章の緻密さと気品であり、カーヴァーから学んだものはストイックなまでの真摯さと、その独特のユーモアである」と。(…本当に「真摯さ」を学んだのだろうか?)。 私はまだ表題にこだわっている。このような題のつけ方は、短編集などにはよくあることかも知れないが、それでもこの場合、例えてみればヨットを「帆」でなく数ある「底板の一枚」で代表させるような感じである。もっとも、たとえ底板の一枚でも、それなくしてはヨットがヨットとしての機能を果たさない(走れない)ことは確かではある。作者にとっては、全6編のうちの「神の子…」が、「帆」すなわち代表格なのであろうが、私の目には「かえるくん、東京を救う」の方がよりふさわしいように思われた。 つまり私が個人的に一番面白いと感じたのがこの作品である。そこには擬人化や寓意が生きていると見えるのに対し、他の作品はいずれも、いわば「ドキュメンタリータッチの、ないしはリアリズム風の虚構」である。だから、現代の日常を描いているようでありながら、ところどころ現実には考えられないような「飛躍」がある。突然、リアリズム小説から童話作品的な読み方に移行することを余儀なくされるのである。それで私は、最初から童話風と分かる「かえるくん」が気に入ったのかも知れない。ここで村上氏の描くのは、「現代の日本」などではなく、「現在であり過去であり未来でもある時」と「どこでもありどこでもない世界」である。これぞまさしく、Fairy taleの世界でなくて何であろう。  かくして不肖私は、「神の子どもたちはみな踊る」が本書の代表作でもないと確信したし、ましてや「神」が全作品に共通する概念でもないわけで、読後に「二重の裏切り」のような感覚を抱いてしまったことを白状する。(ただし、私の早とちりが主因だったことも認める。)なお作者が別記したように、全6編に共通する事柄は「地震」である。ただし上述の「かえるくん」以外は、登場人物が被災地の出身であるとか、設定された時期が阪神大震災の直後で、登場人物たちがその報道に接したり話題にしたりする場面がちらちらと描かれている…などである。 そこで、もし私が本書に別の表題をつけるならそれは、“「かえるくん、東京を救う」ほか-大震災のあとに見た夢”といった感じにしたい。「名は体を表わす」のだから、そう改名するよう要請したいくらいの気分である。さらにできれば、全般的にもっと細やかな気配りの「命名」を心がけて欲しいものである。このことは村上作品の多くの表題や部・章の見出し等にあてはまると思う。確かに、名前をつけるのは大変なことである。なるべく簡潔にしてしかも内容をよく表わさなければならない―対立する2つの要求を同時に満たさなければならない―のだから。 さて、これまで縷々述べてきたあとでかわりばえしない結論です。「かえるくん、東京を救う」の主題は、ずばり「地震」そのものだと考えます。以上、ご回答まで。

関連するQ&A