まず、葉の揺れる原因ですが、例えばヨットのセール(帆)のことを考えてみてください。風を読んで、適切な角度に調節することで、推進力を生み出しますよね。
ここは、たまたまその一枚の葉が、他の葉と違って、「風もなく流れの他は総て静寂の中に」と感じられる、あるかなきかのかすかな風を受けて、その風の力でしなう(曲がる)角度になっているのです。
しかし、かすかな風ですから葉を推す力は弱く、葉はやがて自身の弾力でもとの角度に戻ります。そこで再びかすかな風を受けて、また曲がります。これの繰り返しで、「或一つの葉だけがヒラヒラヒラヒラ」と揺れを繰り返します。
さて、この現象の持つ意味ですが、「さうしたら、その動く葉は動かなくなった。原因は知れた。何かでかういふ場合を自分はもっと知つてゐたと思った」とありますよね。
「風が吹いてきた」とその直前にありますから、かすかな風の押す力と、葉自身の弾力の微妙なバランスが崩れ、葉は、風に押されるままになって動かなくなったのです。
いままでしきりに動いていたものが、動かずに静かになる。動きがなくなった分、寂しささえ感じさせる……、何か思いあたることはありませんか。
忙しくせわしく動いていた蜂。逃れようと必死の鼠(やがて動かなくなるでしょう)、さらには、それまで普通に生きていたイモリに石が当たり動かなくなる……。「かういふ場合」の見当は付くと思います。
補足
ありがとうございます。素晴らしい解説でした。