ご質問の転流余裕時間は トランジスタやFETのような自己消弧型素子を使ったPWMインバータ回路での デッドタイム に関することかな、とふと思ったので補足追加。
トランジスタなどの場合には、自分自身で電流を切る能力(自己消弧)があるので、サイリスタのような転流余裕時間は必要有りません。が、別の理由で デッドタイム というものを設けます。
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Tr1 D1
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+ーー+ーー I
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Tr2 D2
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のような回路で、Tr1とTr2を交互にONさせる場合、
Tr1やTr2のON信号が切れてから、実際の電流が切れるまでにターンオフ時間だけの遅れが有ります。このため、Tr1をOFFしてから、次のTr2にON信号をいれるのを少しおくらせて、Tr1とTr2が同時にONするのを防ぎます。
この両方をOFFにする時間がデッドタイムです。
問題は、出力電流Iの向きによって、デッドタイム中の回路の挙動が異なり出力電圧が変わります。
例えば、Tr1->Tr2にON信号が変わるとき、I>0 だと デッドタイム中にはD2がONし、I<0ではD1がONします。このため、電流の極性で出力電圧の大きさが変わって、電圧の歪につながります。
デッドタイムを小さくすると、両方のTrが同時にONする危険性が増え、デッドタイムを大きくすると、上記の波形歪が大きくなります。
(そこで、出力電流の極性を見て、デッドタイムの割り振りを変えたり、点弧しないトランジスタにはゲート信号をあたえない といった対策を取ることも有ります。)