こんにちは。
No.4の saburoo です。
やはり文法書の解説を紹介しましょう。(前回はちょっと手間を惜しみました)
『日本語文法ハンドブック』(初級)から「§28.関連づけ」(p.270-)の「のだ」の解説を
紹介します。
関連づけの「のだ」(1)
(1) 昨日は学校を休みました。頭が痛かったんです。
(2) 昨夜2時間ぐらい停電した。発電所に雷が落ちたのだ。
(3) (朝起きて道路がぬれているのを見て)ゆうべ、雨が降ったんだ。
(4) (一人で泣いている子供を見て)きっと、迷子になったんだ。
関連づけとは、ある発話がそれを取り巻く状況と関連があることを示すという
ことで、図示すると次のようになります。このうち、状況は(1)(2)のように先行
文として表現されることもあれば、(3)(4)のように言語的には表現されないこと
もあります。
[ 状況 ]------[ 発話 ]
関連づけ
(1)(2) 先行文の理由を表す のだ(のです・のである)
(3)(4) 状況に対する話し手の解釈を表す のだ
どうしてPであるのかというと、Qなのだ。
「からだ」は(1)(2)では使えるが、(3)(4)では使えない。
関連づけの「のだ」(2)
(1) 今日、私は大学を卒業した。明日からは学生ではないのだ。
(2) 彼女は日本人の父親とは日本語で、アメリカ人の母親とは英語で話す。
彼女はバイリンガルなのである。
(3) (それまでわからなかった機械の使い方がわかったとき)なんだ、このボ
タンを押せばいいんだ。
(4) (なくしたと思っていた傘を見つけたとき)なんだ、こんなところにあっ
たんだ。
(1)(2)では、QがPの意味することを表したり、Pの言い換えになっている。
Pというのは、どういうことかというと、Q
(3)(4)は、それまでわからなかったことがその時に初めてわかったということ
を示す発見の用法
[ 先行する状況 ]------[ 解答 ]
関連づけ
(紹介ここまで)
以下、(3)、(4)、さらには疑問文に使われる場合の「のだ(のか)」というのもありますが、省略します。
基本は上の(1)(2)でいいでしょう。
「~のです」は、「強調」とか「説明」とか、いろいろな言葉でその意味をとらえようとされてきたのですが、
それでうまくいく例と、うまくいかない例があります。
すべての例をきちんと押さえた解説をしようとすると、細かく分類せざるを得ず、本1冊分でも足りません。
これまでに研究書は3冊出版されています。後の2冊は博士論文です。それでも、問題は解決していません。
田野村忠臣『現代日本語の文法〈1〉「のだ」の意味と用法』和泉書院
野田春美『「の(だ)」の機能』 (日本語研究叢書 (9)) くろしお出版
名嶋 義直『ノダの意味・機能―関連性理論の観点から 』くろしお出版
日本語の文法というのは、経済学や生物学のように、かなり専門的な研究がなされている分野です。
「日本語には(しっかりした)文法がない」などという人がいますが、それは単にその人が無知なだけです。
こんなことを書くのは、専門家として偉そうな顔をしたいためではありません。
高校卒業まで「言語学・日本語学」の紹介が一切なされていないため、一般の人がそういう研究分野のあることを知らないという現状を、非常に残念に思っているからです。
経済学や生物学なら、ああ、あれか、というイメージが多くの人にありますが、文法というと、小学校で教えられる「学校文法」という、非常に不十分なものしかうかびません。「日本語文法」を「数学」とすれば、「学校文法」は「算数」にあたるレベルのものです。
いやはや、よけいなことを書きました。ここでやめておきます。年をとると、ぐちが多くなります。
saburoo