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gamessのアウトプットについて質問です。
私は最近量子化学計算に興味を持ち、gamessとゆうプログラムソフトに手を出したのですが、少々わからないことがあるので質問します。 今、水分子(H2O)を、HF/6-31Gでエネルギー計算をして、アウトプットを見ていて疑問に思ったのですが、TOTAL ENERGYとTOTAL POTENTIAL ENERGYの違いはなんですか? あと、水分子のTOTAL ENERGY = -76hartreeと出たので、単位をkcal/molにするため627.51掛けたのですが、とても大きな値が出て焦っています。 なぜ627.51も掛けるのか? あと、単位 hartreeがなにを表しているのか教えて下さい。 よろしくお願いします。
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ボルン・オッペンハイマー近似を使うと、分子の持つエネルギーEは E = E_elec + E_vib + E_rot のように E_elec: 電子状態のエネルギー E_vib: 分子振動のエネルギー E_rot: 分子回転のエネルギー の各項の和で表されます。分子の電子状態のエネルギーE_elecは、さらに E_elec = K + Vee + Vne + Vnn のように K: 電子の運動エネルギーの総和 Vee: 電子間の位置エネルギーの総和(すなわち電子間の反発エネルギーの総和) Vne: 電子と原子核間の位置エネルギーの総和 Vnn: 原子核間の位置エネルギーの総和(すなわち原子核間の反発エネルギーの総和) の各項の和で表されます。 > TOTAL ENERGYとTOTAL POTENTIAL ENERGYの違いはなんですか? TOTAL ENERGY = E_elec TOTAL POTENTIAL ENERGY = Vee + Vne + Vnn > 水分子のTOTAL ENERGY = -76hartree E_elec は、分子を構成している原子核と電子を、完全にバラバラに分離するのに必要なエネルギーの符号を変えたものです。HF計算で求められるE_elecの絶対値は、分子を構成する原子のイオン化エネルギーの総和とだいたい同じくらいの値になります。ですのでH2Oであれば、Hのイオン化エネルギー×2とOの第1~第8イオン化エネルギーの和にだいたい同じになります。 本当ならば、E_elecの絶対値は原子のイオン化エネルギーと化学結合エネルギーの総和になってほしいところなんですが、ハートリー・フォック近似で無視されている電子相関のエネルギーが、たまたま化学結合エネルギーと同程度の大きさになるので、結果としてこういうことが起こります。そんな訳で、HF計算で求めたE_elecの絶対値について議論することは、あまりありません。異性体でE_elecがどの程度変わるのか?などといった、E_elecの相対値について議論することが多いです。 > 単位 hartreeがなにを表しているのか教えて下さい。 シュレーディンガー方程式 H Ψ = E_elec Ψ をコンピュータを使って解くときには、方程式を無次元化して、物理定数に依存しない方程式に変換してから解きます。そのためには、まず長さの次元をもつ定数a0 を導入して、方程式中の変数 r をρ=r/a0 に変数変換します。そうするとハミルトニアンの中の運動エネルギー項は ((h/2π)^2/m)/a0^2 × (物理定数に依存しない項の和) ハミルトニアンの中の位置エネルギー項は (e^2/4πε0)/a0 × (物理定数に依存しない項の和) となるので、 ((h/2π)^2/m)/a0^2=(e^2/4πε0)/a0 となるように、定数a0を定めると a0=(4πε0/e^2)*((h/2π)^2/m) となって、物理定数に依存する因子をハミルトニアンからくくり出して、ハミルトニアンを (e^2/4πε0)^2/((h/2π)^2/m)× (物理定数に依存しない項の和) の形に書くことができます。 くくり出された因子 Eh=(e^2/4πε0)^2/((h/2π)^2/m) はエネルギーの次元を持つ定数なので、エネルギーの単位として使うことができます。つまり、コンピュータを使ってシュレーディンガー方程式をEhで割った方程式 (H/Eh) Ψ = (E_elec/Eh) Ψを解くと、物理定数に依存しない無次元の数 E_elec/Eh が求められるので、これにEhをかけるとE_elecが求められる、という流れになります。 物理定数を組み合わせて作ったエネルギーの次元を持つ定数Ehをハートリーといいます。ちなみに、物理定数を組み合わせて作った長さの次元を持つ定数a0はボーア半径といいます。