可能だと思います。
トリウム原発にはいくつか種類があるようで、トリウム溶融塩発電炉が現在本命のようです。
インドで商用運転しているのは別の種類のようで、ビル・ゲイツが出資するベンチャーと東芝が研究する進行波炉というタイプもあります。
いずれにしても、ウラン燃料のように暴走する危険性がありませんし、兵器への転用が難しい燃料です
アメリカやソ連がウラン型を推進したのは軍事利用を考えたからで、兵器への転用の難しさを欠点と捉えていました。
しかし、核拡散防止の観点からはむしろメリットです。
それに、トリウムはそのままでは燃えないので、プルトニウムで中性子を補ってやる必要があります。
日本に溜まりに溜まったプルトニウムを消費するにはもってこいの原発です。
トリウムは資源量がウランの4倍もあって有望なエネルギー源です。
しかも、レアアースのジスプロシウム精製の副産物として生産されます。
じつはレアアースのおまけで出てくる厄介者だったのがエネルギー源になるのです。
経済性でいうと、資源量の豊富さより使用済み燃料の処理にお金がかからないこと、安全性が高いので福島の事故のような賠償費用も考えなくてよいのが貢献すると思います。
小型で安全性の高い原発が作れるので、現在の原発の敷地じゃなく電力消費地の近くに作ればいいと思います。
フッ化塩燃料を使うので、材料だけはいいものを使って欲しいものです。
進行波炉も100年運用するために材料が開発の重要なポイントです。
というのも、金属は中性子を照射すると脆くなる性質「照射脆化」があるからです。
メリットをまとめると以下のようになります。
・トリウムのフッ化塩を700度程度で溶かして使うので、燃料棒を成型する必要がなく、始めから溶けているので燃料棒が溶けることがない。
・トリウム塩は安定しており大気圧で運用し高圧にする必要がない。
・核燃料廃棄物がウラン・プルトニウム燃料より格段に少ない。
・燃料の利用効率が極めて高く使用済み燃料再処理が不要。
・廃棄物の放射能半減期が30年(ウラン燃料は10万年)と短い。
・プルトニウムができない(微量はできるが)。
・トリウムからできるウラン233も強いガンマ線を発するので軍事転用できない。
早いところ極めて安全性の高い原子炉に切り替えて、ドイツやイタリアを羨ましがらせたいものです。
補足
大変詳しいご説明を有り難うございました。 質問があります。 トリウムに熱中性子をぶつけるとウラン233ができて、これは核燃料になるということですね。ウラン233は崩壊すると約2.6個の中性子を放出する。純粋なウラン233であれば、臨界に達すればそのまま燃え続ける。しかし、トリウムだけだとそうはいかない。つまり中性子の生成が不十分で臨界が続かないということでプルトニウム等で絶えず中性子を補給し続けなければならないということでしょうか。 もちろん、日本にあるプルトニウムの量には限度がありますから、いつか無くなってしまう可能性があるということですね。トリウム原発が今の軽水炉の原発に置き換わるほどの規模になったとして、どのくらいで日本に蓄えられたプルトニウムを使い果たしてしまいますか。 使い切った後は、陽子加速器で中性子補給をするのでしょうか。本当にそんな大電流陽子加速器は可能なのでしょうか。 それからトリウム原発での発電単価は現在の原発に比べどうなりますか。