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なぜ日本人女性はダイエットをするのか?既存の美の概念の影響とは?
- 卒論制作につまづいている大学生が、なぜ日本人女性がダイエットをするのか、その背景には既存の美の概念が影響していることが示唆されている。
- 昔はふくよかな女性が美人とされていたが、今日では細い人が美人とされる傾向が強くなり、その概念が時代の移り変わりにも関わらず続いている。
- 卒論のためにはデータや文献が必要であり、ダイエットに関するアンケートや統計、書籍やサイトの情報、先行研究者の研究成果を参考にすることが重要である。
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大学の心理学担当の教員です。 食行動や、ダイエットを専門にしている訳ではありませんが、かつて、公開講座で「食行動異常の心理」というテーマで話をしたときには、次のような文献を参照しました。 今田純雄(編)(1997):食行動の心理学(現代心理学シリーズ16).培風館. 木下悦子他(1979):Anorexia Nervosaの家族と現代社会.社会精神医学,2,593-600. 中島義明・今田純雄(編)(1996):たべる―食行動の心理学―(人間行動学講座2).朝倉書店. 野上芳美(1983):やせと肥満.岩波講座 精神の科学5,岩波書店,pp.75-113. 野上芳美他(1987):女子学生層における異常食行動の調査.精神医学,29,155-165. 佐々木直(1993):神経性食欲不振症.イマーゴ,4(5),128-135. 以上は、必ずしも体系的に調べた訳ではありませんが、多少参考にはなるかと思います。 また、文献を調べるとすれば、次のようなキーワード例が参考になると思います。 ・食行動 ・摂食障害 ・身体図式、身体イメージ、ボディイメージ 専門領域としては、次のような分野でしょう。 ・健康心理学 ・臨床心理学 ・精神医学 ・心身医学 女性が細い体型を理想とするのは、先進国といわれる国々で比較的共通する傾向と思いますが、時代的、文化的背景の影響が大きいと思われます。 例えば、アメリカの男性向け雑誌(プレイボーイ)などのグラビアに出てくる女性の体型変化を見たデータでは、年々、細い体型の女性が増えていることが指摘されています(上記文献中、今田(1997)にあったと記憶しています)。 また、モデルをしている女性や、テレビに出てくる若い女性タレントがいずれもスレンダーであることや、女性向け雑誌のダイエット特集が頻繁に登場することなど、「女性=細身の体型」という固定観念が刷り込まれていることなども影響していると思われます。 以上、体系的ではありませんが、ご参考までに。 また、以下には、少し前(2002年)に公開講座で使用した抄録から、関連するところをお示ししておきます。 -----ここから 2.食行動異常の様相 2)社会病理としての食行動異常 以上,疾患としての食行動異常についてみたが,われわれはこれほどではないにしても,多少の過食や過剰なアルコール摂取経験は持っている.次には,より広く,食の逸脱についてみてみたい. (1)若年女子の「気晴らし食い(binge eating)」 野上他(1987)は,東京都内の女子高校生,女子短大生,女子大学生など1,250名を対象に調査を行った結果,高校生・短大生・看護学生・栄養学生で,「気晴らし食い」の経験者は7.1~8.3%であったのに対し,体育系学生では33.8%にものぼったとしている.また,1週間に1度以上の「気晴らし食い」経験率は,新体操など「身体的な美」を要求される体育学生で14.2%であったという.さらに,「気晴らし食い」は,「摂食の意識的抑制」「脱抑制」と関連が高かった.このことは,「やせていること」「身体的な美しさ」を維持することが要求されているほど,気晴らし食いの頻度が高く,また,ダイエット志向が強いほど,その反動として「気晴らし食い」や下剤・利尿剤の濫用,自己誘発性嘔吐の頻度が高いことを示している. (2)やせ願望と摂食抑制 中・高校生時代に使った歴史や美術の教科書に出てくる絵画を思い浮かべると,驚くほどふくよかな女性が良く描かれていた.どのような身体体型が好まれるかは,時代によって異なり,現代では,すらりとした贅肉のない体型が理想とされ,それに価値をおく人が多い. 図2には,ミスアメリカコンテスト参加者と,「プレイボーイ」誌のグラビア・モデルの体型変化を示した.各年次の標準体型表に基づき年齢と身長から期待される体重を100としたモデルの体重の比率が示されている.図から明らかなように,これら「理想女性」はすべて平均よりやせており,しかもその傾向は年を追うごとに強くなっている. 図3には,Zellnerら(1989)が調べた男子大学生,食行動異常のある女子大学生,それのない女子大学生の体型評価の結果を示した.女性,とくに食行動異常のある女性では,理想体型や異性から見て魅力的な体型と現実の自己体型との隔たりが大きく,現実体型をそれらに比べ,はるかに肥満的と見ていた.こうした若年の成人女性における「痩身願望」は他にも指摘されるところであり,それが,食行動における彼女らの自制や配慮につながっていると思われる. 痩身が美化され,摂食抑制が期待される現代社会ではあるが,それが行き過ぎると,前項で述べたように反動としての過食になることがある.Hermanら(1975)は,これを実験的に確かめている.Hermanらは,摂食傾向の強い対象者とそうでない対象者に,アイスクリームの味の評定を求めた.実験に入る前に一部の対象者にはミルクシェイクを飲むことが求められた.アイスクリームの評定にあたっては,対象者には,「正確な評定が必要なので,そのためにはいくらアイスクリームを食べても良い」と告げられた.その結果,図4に示したように,非摂食抑制群は先行して摂取したミルクシェイクの量が多いほどアイスクリーム摂取量は減ったのに対して,摂食抑制群はミルクシェイクの量が多いほどアイスクリームもたくさん摂取したのであった.これは,ダイエットによる反動現象と言えよう(心理学では脱抑制と呼び,Hermanらは反対調節とした). 現代社会で生きていく上では,ある程度の摂食抑制は必要であろうが,痩身願望が強すぎて,極端なダイエットに走ることは,食行動異常に陥る危険性を持つものであると言えよう. 3.食行動異常の改善 食行動異常に対して,病院で行われる治療は,表4に示したとおりである(佐々木1993).体重が極端に減少している神経性無食欲症者では入院させ,生命維持のため中心静脈栄養などが行われることがある.面会や電話,音楽鑑賞など楽しみを取り上げ,決められた量の食事が取れるようになったら少しずつそれらを認めるといった行動療法が取られることもある.広範囲の治療が行われているのは,食行動異常が,一筋縄ではいかない疾患であるということを意味している. 不食にしても,過食にしても,2.1)(3)で述べたように,自律性や自我同一性といった発達課題の獲得に問題があり,また,おそらくそれに由来する自己不全感が共通する特徴であった.心理学の視点からすれば,食行動異常は,単に食欲や体重の問題ではない.心理学的にみた食行動異常は,自我同一性の確立が不十分であるが故に,自己価値が低く,他者からの評価に過剰に依存せざるを得ないため,「自分の中に,きわめて主観的な他者の基準(ゆがんだ鏡)を作りだし,それとの関係で自分を維持しようとすることで生じる終わりのない戦い」(志賀,1997)であると言えよう.この意味では,食行動異常から抜け出すためには,不食も過食も,すべて自分一人の中でのみ行われるという,他者性の欠如の結果であることに気付くことが必要である(志賀,1997). 4.食行動異常と現代 神経性無食欲症とみなせる症例が,最初に報告されたのは17世紀のヨーロッパであったという(志賀,1997).わが国で食行動異常が報告されるようになったのは,1960年代以降であり,その後食行動異常は増加傾向にある.これは,経済的な発展や外食,ファースト・フードの一般化と軌を一にしており,その意味では,食行動異常は文明の産物であり,現代的な病であると考えられる. 食行動異常の好発期は,子どもから大人へと移行する青年期であり,その青年期は,現代では,平穏に過ぎている,延長しているなどの心理学的問題も指摘されている.青年期に顕在化する問題行動は,この時期に生じる葛藤によることもある一方で,それまでの発達過程での未解決な問題があることによる場合も多い.その意味では,食行動異常も,心の働きや心の発達という視点から捉え直す必要があると考えられる. 5.引用文献 アメリカ精神医学会(編)(1994)高橋三郎・大野裕・染矢俊之(訳)(1995):DSM-IV 精神疾患の分類と診断の手引き.医学書院. Bruch, H.(1973): Eating Disorders. Obesity, Anorexia Nervosa, and the Person Within. Basic Books, New York. 岡部祥平他訳(1979):思春期やせ症の謎.星和書店. 今田純雄(編)(1997):食行動の心理学(現代心理学シリーズ16).培風館. 木下悦子他(1979):Anorexia Nervosaの家族と現代社会.社会精神医学,2,593-600. 中島義明・今田純雄(編)(1996):たべる―食行動の心理学―(人間行動学講座2).朝倉書店. 野上芳美(1983):やせと肥満.岩波講座 精神の科学5,岩波書店,pp.75-113. 野上芳美他(1987):女子学生層における異常食行動の調査.精神医学,29,155-165. 佐々木直(1993):神経性食欲不振症.イマーゴ,4(5),128-135. 志賀令明(1997):障害・病理の観点から.今田純雄(編):食行動の心理学(現代心理学シリーズ16).培風館,pp.110-130.
お礼
早々のご回答、並びに懇切丁寧なご助言、誠にありがとうございます。 ダイエットを卒論のテーマに決めた時から、洋書も含め、かなりの文献を読みましたが、調べれば調べるほど「ダイエット」が社会情勢、心理、マスコミ、利権等と複雑に絡み合っていることを思い知り、停頓しておりました。 vzb04330さんのご助言をもとに、早速市立図書館にて文献を予約しました。また、明日には論文の閲覧に大学の図書館に行こうと思います。 そして、これを契機にもっと視野を広げ、多角的にダイエットについて考察し、よりよい卒論に仕上げていく所存です。 vzb04330さんには、大変なお手数をお掛けいたしまして恐縮です。重ね重ね心よりお礼申し上げます。どうもありがとうございました。