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オクテットの安定について
オクテットの状態になると安定になるらしいですがそのときはエネルギーが放出されるのですか?それともエントロピー的な感じで安定となっているのですか?
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> Mgがイオンとなるときはイオン化エネルギーがオクテットによるエネルギー放出よりも大きいから吸熱なんでしょうか? いいえ。そういうことではないです。例3は、Mgがイオンとなるときはオクテットによるエネルギー放出が“ない”ことを示しています。 どんな原子でも、電子を放出して陽イオンになるときには、必ずエネルギーが必要になります。このエネルギーを、第1イオン化エネルギーといいます。マグネシウムの場合では、 Mg(気体) → Mg+(気体) + e- の反応に必要なエネルギーが第1イオン化エネルギーになります。一価の陽イオンからさらに電子をもぎ取るのに必要なエネルギーが、第2イオン化エネルギーです。 Mg+(気体) → Mg2+(気体) + e- ですので、Mgから2個の電子をもぎ取ってMg2+にするのに必要なエネルギーは、第1イオン化エネルギーと第2イオン化エネルギーの和になります。 オクテットの状態の陽イオンが安定である、というのは、オクテットの状態の陽イオンをつくるときにはエネルギーが放出される、という意味ではなくて、オクテットの状態の陽イオンから電子をもぎ取るのには大きなエネルギーを必要とする、という意味です。 ウィキペディアによるとマグネシウムのイオン化エネルギーは 第1イオン化エネルギー: I1= 737.7 kJ/mol 第2イオン化エネルギー: I2= 1450.7 kJ/mol 第3イオン化エネルギー: I3= 7732.7 kJ/mol 第4イオン化エネルギー: I4= 10542.5 kJ/mol のようになっています。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3%E5%8C%96%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC I2はI1のほぼ2倍、I4はI3の約1.4倍なのに対して、I3はI2の5倍以上の大きさになっています。他の2族元素 Be,Ca,Sr,Ba でも同様で、第3イオン化エネルギーのところで、急にイオン化エネルギーが大きくなります。 マグネシウムとナトリウムのイオン化エネルギーを比べてみると、Mgでは先に示したようにI2/I1が2であるのに対して、NaではI2/I1は約9です。他のアルカリ金属 Li,K,Rb,Cs でも同様で、第2イオン化エネルギーのところで、急にイオン化エネルギーが大きくなります。 アルミニウムについても同じような比較をすれば、オクテットの状態の陽イオンから電子をもぎ取るのには大きなエネルギーを必要とする、ということが分かると思います。 > それと酸素は電子親和力あるのに吸熱なんでしょうか? はい。酸素には電子親和力があるので、酸素原子に電子が一個だけ付け加えられるときには、発熱になります。 O(気体) + e- → O-(気体) …… オクテットにならないけど発熱 しかし、このO-イオンにさらに電子を付け加えようとすると吸熱になります。 O-(気体) + e- → O2-(気体) …… オクテットになるけど吸熱 考えてみれば当たり前の話でして、マイナスのものとマイナスのものをクーロン反発力に抗して一まとめにしようとしているんですから、よほどのことがない限りはエネルギーが必要になります。つまり、酸素の第2電子親和力は負になります。 酸素に限らず、どんな原子でも第2電子親和力は必ず負になります。いいかえると、一価の陰イオンに電子を付け加えるには、かならずエネルギーが必要になります。 酸素の第2電子親和力の絶対値は第1電子親和力の絶対値よりも大きいので、酸素原子に2個の電子を付加して酸化物イオンにするためには、エネルギーが必要になって吸熱になります。 例4でみたように、Mg2+やO2-をつくるにはエネルギーが必要であるにもかかわらずMgOがイオン結晶として安定に存在するのは、イオン間にクーロン引力が働くからです。もし、二価イオンのMg2+とO2-の代わりに一価イオンのMg+とO-でイオン結晶をつくったなら、イオンをつくるのに必要なエネルギーは少なくてすみます。しかし、イオン間に働くクーロン引力がずっと小さくなるので、Mg+とO-からなるイオン結晶は、Mg2+とO2-からなるイオン結晶よりも不安定になります。 逆に三価イオンのMg3+とO3-でイオン結晶をつくったなら、イオン間に働くクーロン引力はかなり大きくなりますけど、今度はイオンをつくるのに必要なエネルギーが莫大なものになりますので、やはり、Mg2+とO2-からなるイオン結晶よりも不安定になります。 他の数多くのイオン結晶についても、実験データに基づいて同じような考察をすることができます。その考察結果は、「典型元素のイオン結晶では各イオンはオクテットの状態にある」と一言でまとめることができます。この考察結果からさらに、 「典型元素はオクテットの状態になると安定になる」 と考えることができます。しかし、気をつけなければならないのは、この言葉の裏には「オクテットの状態にするために支払わなければならない借金はクーロンエネルギーで返済しておつりがくるくらい少ないものである」という暗黙の了解が隠されているということです。この言葉を額面どおりに「オクテットをつくるといつでもエネルギーを放出する」と受け取ってしまうと、エネルギーの収支を見誤ってしまうことがありますから、ご注意ください。
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エネルギーが放出されて安定になる、と考えて下さい。 【例1】2個の酸素原子から1個の酸素分子が生成する反応は、発熱反応で、エネルギーが放出されます。 2O(気体) → O2(気体) この反応では、価電子数6の原子が、2個の価電子を共有することにより、オクテットの状態になります。しかし、2個の粒子が1個の粒子になるので、エントロピー的には不利な反応です。 【例2】多数のマグネシウム原子が集まって金属マグネシウムを生成する反応は、発熱反応で、エネルギーが放出されます。 Mg(気体) → Mg(固体) この反応では価電子数2の原子が2個の価電子を自由電子として放出することにより、オクテットの状態になります。しかし、多数のバラバラに動いていた粒子が、寄り集まって少数個の金属塊になるので、エントロピー的には不利な反応です。 【例3】マグネシウム原子が2個の電子を放出してマグネシウムイオンに変わる反応や、酸素原子が2個の電子を受け取って酸化物イオンに変わる反応は、どちらも吸熱反応です。 Mg(気体) → Mg2+(気体) + 2e- O(気体) + 2e- → O2-(気体) どちらの反応も、電子の授受によりオクテットの状態に変化しているのですけど、吸熱反応ですからエネルギー的にはむしろ不安定になっています。この例から、オクテットの状態になるときにはエネルギーが放出されて安定になる、とは必ずしもいえないことが分かります。 【例4】マグネシウム原子と酸素原子が反応して酸化マグネシウムが生成する反応は、発熱反応で、エネルギーが放出されます。 Mg(気体) + O(気体) → MgO(固体) この反応は例3の反応と似ていますけど、違うところは、マグネシウムと酸素が共存しているので、生成したマグネシウムイオンMg2+と酸化物イオンO2-がクーロン力で強く引き合っているところです。このクーロンエネルギーにより、単独では不安定な酸化物イオンO2-が、安定に存在できるようになります。例3でみたように、オクテットの状態になると却ってエネルギー的に不安定になることがあるのですけど、その不安定化の度合いが比較的に小さくて済む場合は、イオン間に働くクーロン力で安定されるため、差し引きで発熱反応になります。 【まとめ】 共有結合:オクテットの状態になると、エネルギーが放出されて安定になる。 イオン結合:原子をオクテットの状態にするために必要なエネルギーは、陽イオンと陰イオンの間に働くクーロンエネルギーで十分まかなうことができておつりがくるので、エネルギーが放出されて安定になる。 金属結合:金属原子をオクテットの状態にするために必要なエネルギーは、自由電子と金属イオンの間に働くクーロンエネルギーで十分まかなうことができておつりがくるので、エネルギーが放出されて安定になる。 【注意】 遷移金属の原子をオクテットの状態にするには、クーロンエネルギーではまかなえないほどの多くのエネルギーが必要になるので、遷移金属イオンはオクテットの状態にはならないのがふつう。
補足
丁寧な回答ありがとうございます。 例3についてもう少し聞きたいのですが Mgがイオンとなるときはイオン化エネルギーがオクテットによるエネルギー放出よりも大きいから吸熱なんでしょうか? それと酸素は電子親和力あるのに吸熱なんでしょうか?
お礼
お礼が遅れて申し訳ありません。 非常にわかりやすく説明してくださって本当にありがとうございました。 受験勉強がんばります。