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軟体動物達の血液

多くの軟体動物達が、酸素の運搬の為に、ヘモグロビンよりもヘモシアニンの方を利用している様ですが、何故にそういう違い(ヘモシアニンかヘモグロビンか)が現われたのでしょうか?

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  • kagakusuki
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回答No.1

 以下の話の結論部分は、インターネットで調べた情報に基づいて行った、私の個人的な憶測に過ぎない事を、最初にお断りさせて頂きます。  仰る様に、軟体動物の多くが血液中にヘモシアニンを持っている様です。 【参考URL】  軟体動物 - Wikipedia   http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%9F%E4%BD%93%E5%8B%95%E7%89%A9%E9%96%80  ヘモシアニン - Wikipedia   http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%A2%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%B3  最初の軟体動物の祖先は、エディアカラ生物群と呼ばれる生物相が繁栄していた、原生代エディアカラ紀(約6億2000万年前~約5億4200万年前)に現れたと考えられています。 【参考URL】  エディアカラ生物群 - Wikipedia   http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%82%AB%E3%83%A9%E7%94%9F%E7%89%A9%E7%BE%A4  一方、全ての脊椎動物はヘモグロビンを持っています。(無脊椎動物の中にもヘモグロビンやそれに似た色素を持つものもいます) 【参考URL】  ヘモグロビン - Wikipedia   http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%A2%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%93%E3%83%B3  そして、脊椎動物はホヤ等の尾索動物と共通の祖先を持っていると考えられています。 【参考URL】  尾索動物 - Wikipedia  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%BE%E7%B4%A2%E5%8B%95%E7%89%A9  しかし、以下のサイトのページに掲載されている情報に拠りますと、尾索動物の一種であるホヤにはヘモシアニンを作る遺伝子はありますが、ヘモグロビンを作るための遺伝子は無い様です。 【参考URL】  国立遺伝学研究所 > 研究活動ニュース > 2002年 > ホヤゲノムのドラフト解読(2002/12)/ カタユウレイボヤのドラフト・ゲノム:脊索動物および脊椎動物の起源の理解に向けて   http://www.nig.ac.jp/hot/2002/kohara0224-j.html  従って、脊椎動物の祖先がヘモグロビンを持つ様になった時期は、尾索動物と脊椎動物の祖先の系統が分かれた時代以降という事になります。  尾索動物の系統から分化した最初の脊椎動物の祖先は、約5億2,500万~約5億2,000万年前の古生代カンブリア紀前期中盤に繁栄した澄江動物群(チェンジャン どうぶつぐん)という生物相に含まれる、ミロクンミンギアという約5億2,400万年前の動物か又はそれに近い動物であったと考えられています。 【参考URL】  ミロクンミンギア - Wikipedia   http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%81%E3%82%B9  澄江動物群 - Wikipedia   http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BE%84%E6%B1%9F%E5%8B%95%E7%89%A9%E7%BE%A4  つまり、軟体動物と脊椎動物では、進化史上において、最初に現れた時代が異なっている事が判ります。  そして、大気中や水中の酸素濃度は、全地球史に渡って一定であった訳ではなく、時代によって変化して来た事が判っています。 【参考URL】  日本歯科医師会 > テーマパーク8020 > お口の予防とケア > フッ化物 > 2)フッ化物と生物の進化   http://www.jda.or.jp/park/prevent/index05_03.html  上記のサイトのページの[図1 植物プランクトンと空気中酸素濃度の変遷(J.M.Shop)]を見ますと、4億5千万年前より以前は過去に遡る程、大気中の酸素濃度が低くなっている事が判ります。  ミロクンミンギアが生きていた約5億2,400万年前には、大気中の酸素濃度は現在と同程度になっていますが、最初の軟体動物の祖先が現れたとされる、エディアカラ紀(約6億2000万年前~約5億4200万年前)の大気中の酸素濃度は、現在の2分の1から10分の1に過ぎません。  資料によっては、6億年前の酸素濃度は現在の1%しか無かったとしているサイトもあります。 【参考URL】  株式会社巴商会 > ガス豆知識 > 大気における酸素の誕生   http://www.tomoeshokai.co.jp/gas/vol05.html  処で、ヘモグロビンやヘモシアニンには、酸性の環境では酸素との結合が弱くなり、結合していた酸素を放出しやすくなるという性質があり、これをボーア効果と言います。 【参考URL】  ボーア効果 - Wikipedia   http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A2%E5%8A%B9%E6%9E%9C  動物の体内では、細胞が酸素を消費して出来た二酸化炭素が、血液中に溶け込んで炭酸となりますから、酸素が消費される所では、血液は酸性に傾きます。  そのため、ヘモグロビンやヘモシアニンは、炭酸の濃度が低く、酸素濃度が高い、肺や鰓では酸素と結び付きやすくなり、酸素が消費される血流の末端部分では、酸素を放出しやすくなります。  ヘモグロビンとヘモシアニンを比較しますと、ヘモグロビンは鉄原子1個で酸素原子を2個運べるのに対して、ヘモシアニンでは銅原子1個が運べる酸素原子は1個だけである上に、ヘモシアニンはヘモグロビンよりも酸素との結びつきが弱いため、ヘモシアニンはヘモグロビンよりも少ない量の酸素しか運べません。  しかし、ヘモシアニンはヘモグロビンに比べてボーア効果が強く働くため、二酸化炭素の濃度に鋭敏に反応し、体内では結合していた酸素の90%以上を放出するそうです。 【参考URL】  烏賊と電脳のホームページ > 烏賊(イカ)關係 > 烏賊の形態と生態 > 循環器官   http://www.d1.dion.ne.jp/~osa_uno/japanese/squid/ecology/ecology07.html#Jump02  大気や水の酸素濃度が低い場合、肺や鰓で酸素と結び付く事が出来るヘモシアニンの割合は、当然低下しますが、酸素と結び付いたヘモシアニンが全く無くなる訳ではありません。  そして、ヘモシアニンは、体内の酸素が消費される所(=二酸化炭素濃度が高い所)で、肺や鰓で吸収した少量の酸素の殆どを、放出する事が出来ます。  つまり、ヘモシアニンは酸素を大量に運ぶ事は出来ないものの、大気や水の酸素濃度が低い場合でも、確実に酸素を全身に供給する事が出来る訳です。  それに対してヘモグロビンの場合は、大気や水の中の酸素濃度が低くなると、酸素と結び付いているヘモグロビンの割合が急激に低下します。 【参考URL】  成蹊大学 理工学部 > 応用錯体化学研究室 > 講義関連 > 理工学部無機化学II > 11 自然界と金属錯体   http://www.ch.seikei.ac.jp/tsubomura/education/muki2/muki2_11.pdf  つまり、ヘモグロビンは大気や水の中の酸素濃度が高い環境において、酸素を大量に運ぶ事に向いている訳です。 ※ここから先の話は、何らかの裏付けが取れている訳ではない、私の憶測による話となりますから、御注意願います。  従って、軟体動物の祖先が現れた頃は、水中の酸素濃度が低かったため、酸素を確実に供給出来るヘモシアニンを使う方が有利だった可能性もあるかも知れません。  そして、脊椎動物の祖先が現れた頃には、水中の酸素濃度が充分高かったため、大量の酸素を運ぶ事で、活発な運動を可能にするヘモグロビンを持つ事が、先発の軟体動物との生存競争において有利に働いた可能性もあるかも知れません。  水中の酸素濃度が高くなった後の時代においても、酸素を運ぶ色素をヘモシアニンからヘモグロビンに切り換えた軟体動物や節足動物が少なかったのは、ヘモグロビンと骨格を使った活発な運動をする事に適応している脊椎動物の祖先が既にいますから、ヘモシアニンを使う事を前提とした軟体動物の身体能力では、活発な運動能力を必要とする分野では、脊椎動物の祖先に太刀打ち出来無かったのかも知れません。  そのため、軟体動物としては活発な運動能力を持つ種は、脊椎動物との生存競争に敗れて絶滅しやすかったのかも知れません。  すると生き残った軟体動物は、活発な運動を必要としない生態を持つ種という事になりますから、活発な運動をしないのであれば、ヘモグロビンを持たなくとも、既に持っているヘモシアニンで充分だったのかも知れません。

UtaShiori
質問者

補足

凄い仮説を寄せて頂きまして、誠に有り難う御座います。 是程に丁寧な回答を賜れる機会に滅多に御目にかかれませんので、その点でも、感謝を致します。

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