究極論的な意味では、人の寿命を永久に伸ばすことが可能かどうかという点においてはわかっていないというのが答えでしょう。培養細胞レベルでは、多くは癌化した細胞ですが、永久に増殖させ続けることは理論上可能で、実際には凍結保存も半永久的に可能になっています。
人間(ヒト)の死として考える場合、細胞レベルのその議論とは別の難しさがあります。ウイルスや細菌などによる死がかなりのレベルで解決可能になってきている現在、癌や脳梗塞などの病気が目立ってきています。これらの病気というのは、ある意味本来の人間の体のある機能が「正常か、正常でないか」という議論に近いものがあり、つまりは「ヒトの生を維持する様々な機関が衰えてきた」とも言えるでしょう。癌なんかは、極限的には細胞集団の暴走に他ならないというわけです。
通常は、人間のからだは様々な問題に解決するような機構が備わっています。若い人が癌や糖尿病、脳梗塞などで亡くなりにくいのは統計学的なものでしょうが、おそらく若い人ほどそういうフィードバック機構が十分に機能するからだと思われます。さらに、細胞レベルの話だと、たとえば人間を構成する数兆個以上もの細胞を考えると、常に2万個程度で遺伝子変異が起こるハズですが、それらの変異を修復したり、異常が不可逆的な場合はアポトーシスや老化というメカニズムで排除することがなされているわけです。細胞分裂数が寿命と関係あるのもおそらく個体の遺伝子情報の安定性や癌化のリスクの根を摘み取るために、増殖して時間がたつといなくなるような仕組みがあるとも考えられます。結果、人類という視野からすれば、世代交換というのもまた同じ生存のための自己死プログラムなのかもしれません。
結局のところ、そもそも人間が生き続けるというのは非常に複雑な機構が、何兆個もの細胞かお互いにコミュニケーションしながら、常に栄養を取り続けてまた、不要なものを排除しつづけている状態ということなのです。その中には、予期せぬ事態にも耐えられるようなある程度の柔軟性も持ちつつも、生じるエラーや異常を監視し修正、排除する機構もあるわけで、そういうものの完全性の維持がすなわち寿命といってもいいかもしれません。もっとも、それならばその機構を破たんさせてやれば無理やり寿命を延ばすことが理論上可能になりますが、それがもたらす結果が、ある意味、将来の医学や科学が見出すものなのかもしれません。
お礼
ご回答ありがとうございます。 細胞の再生回数限度が理由で、再生されなくなると生命として機能しなくなるということですね。 癌とか放射線は病気とありますが、これも病気によって細胞の正常な再生ができなくなるから と考えていいのでしょうか?