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マイクロエレクトロニクスとパワーエレクトロニクスの違いって何ですか?
パワーエレクトロニクスの勉学をしているのですが マイクロエレクトロニクス との相違点がわかりません。どなかたご存知の方はお教えください。
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当然のことですがまず扱う電力レベルが違います。(特に電圧が) マイクロエレクトロニクスで扱うのはせいぜい数十ボルト数アンペア程度までで、 むしろミリボルト、ミリアンペアが中心の世界ですが、電力用サイリスタやダイ オードの中には最大使用電圧数キロボルト最大使用電流数キロアンペアなどとい うものもあります。 電力レベルが違っても電磁気学の基本法則が変わる訳ではないので本質的(原理的) な違いはないはずですが、技術的にはマイクロエレクトロニクスとは異なる いろいろな問題が出てきます。 下手なたとえですが、同じ内燃機関を使っても原付を作るのと建設機械を作るの とは同じようするわけにはいかない、というようなものです。 以下はパワーエレクトロニクスで扱う素子や回路設計、実装上の問題について マイクロエレクトロニクスと比較しながら思いつくままに書いてみます。 電圧が大きくなると素子の耐圧や絶縁の問題が出てきます。一つの素子では耐圧が 足りないのでいくつかの素子を直列につないで耐圧を上げるようなこともします。 当然、あまり機器の間隔をくっつけて実装する訳にはいかないので、小型化には限度が あります。 (現在使用されているもの以上に高絶縁抵抗をもつ材料が開発されれば多少は改善 されるでしょうが) また扱う電流レベルが大きくなると発熱の問題は避けて通れません。半導体技術の進歩 で素子本体は非常に小さくなりましたが、半導体内部での電圧降下が小さくならない 限り(そしてこの電圧降下はシリコンの物性に基づく原理的な現象なので、半導体材料 としてシリコンを使っている限りある程度以上は小さくはできません。) 同じ電流であれば発生する熱量は変わりません。従って放熱器も小さくできないので 結局全体としてはあまり小さくは作れないということになります。 (この問題も放熱器の材料や放熱方法の革新などで劇的に変わるかも知れません) サージやパルスに関してはパワーエレクトロニクス独特の問題があります。 最大定格を越えるサージやパルスをかけるのは論外ですが、たとえ最大定格以内 であっても立上りが非常に急峻なパルス電圧(またはパルス電流)をかけると 半導体が壊れことがあります。 そのため電力用半導体の仕様には最大電圧(電流)上昇時間率、(こういう名前 ではなかったかと思います。うろ覚えなので自信なし)の項目があります。 つまり一定時間内に電圧(電流)の増加量がこの数値を越えてはいけないのです。 マイクロエレクトロニクスの素子が壊れるのはたいてい静電気やショートなどで 最大定格を越える電圧や電流がかかるのが原因ですが、パワーエレクトロニクスの場合 は最大定格をクリヤーしていても電圧や電流の波形が悪いと壊れることがあります。 それは波形によって最大上昇時間率を越える割合で電圧や電流が上昇するためです。 また負荷側にモーターのようにサージを発生しやすいものがつながるので(雷など) 入力側からのサージだけでなく負荷側からサージにも注意しなくてはなりません。 ノイズの問題はパワーエレクトロニクスでも重要です。電力半導体といえども 制御のための信号を作り出す部分はマイクロエレクトロニクスですから、そこが 狂えば電力半導体も誤動作します。また扱う電力レベルが大きいため、自分自身が 発生するノイズレベルも大きくなります。それが原因で他の機器に誤動作を もたらさないようしっかり対策をとる必要があります。 またパワーエレクトロニクス独特の問題として、回路によっては電力ラインに (それも工場の中のようなローカルなラインではなく電力会社のラインのような 公的な部分にまで)直接影響を与えてしまうようなノイズを発生し得ることが 挙げられます。これはノイズというより高調波と呼ぶべきですが(高調波は いわば”低周波のノイズ”のようなものでしょうか) 半導体インバーター装置から発生していた高調波が原因で、別の場所にある 変電所のコンデンサーが破壊されるような事故も実際に起きています。 また自分自身が発生する高調波やノイズのため自分自身が誤動作してしまう こともあります。
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- oodaiko
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引続きoodaikoです。 先ほどはマイクロエレクトロニクスとパワーエレクトロニクスの技術的な違いを書き ましたが、もっと本質的な違いがあります。 その違いとはマイクロエレクトロニクスが主に「情報、信号」を扱うのに対して、 パワーエレクトロニクスは「エネルギー」を扱うという点です。 増幅器や自動制御の勉強をするとラプラス変換だとかフィードバックだとかいろいろ 出てきますが、あれは電気という媒体を使って実は「情報処理・信号処理」の勉強を しているわけです。だからこそ制御理論で出てくるいろいろな式は、電気系だけでなく バネやダンパーなどでできた機械系にもそのまま応用できる訳です。 原理的には、信号処理に必要なエネルギーは、物理的な仕事をするエネルギーと比較 すればほとんどゼロに等しいものです。 もちろんAV、電話、コンピューターのような典型的なマイクロエレクトロニクス機器 にしても最終的にスピーカーを鳴らすなりディスプレイに出力するなりの「エネルギー」 が必要になる訳ですが、あくまでそれは人間が「情報」を使うための手段に過ぎません。 ですからこれらの出力も原理的には消費エネルギーをゼロに近付けることが出来ます。 実際、スピーカー ->イヤホーン またはブラウン管 -> 液晶、豆電球 ->LEDと比較 してみると消費エネルギーが一桁以上減っていることがおわかりになるでしょう。 これからもこれらの装置はもっと小さくもっと省エネルギーになると思います。 しかしパワーエレクトロニクスは「エネルギー」を扱う物である以上、出力される エネルギーが大きくなれば動かすためのエネルギーも大きくなります。 もちろん、最終的に仕事をするのはモーターなり電熱器なりランプなりいわゆる ”電気機器”であって、パワーエレクトロニクス機器はそれらを制御するためのスイッチ または電力変換装置として使われているので、極端なことをいえばエネルギーの流れを 制御している、またはエネルギーを加工しているに過ぎません。 だからパワーエレクトロニクス機器自身を制御するためのエネルギーは小さくなり得 ますが、電気のように高速で動いているもの急に止めたり方向を変えたりするのには やはりそれなりのエネルギーが必要だというのは直観的イメージとして理解できると 思います。 (この節に書いたことは自信なし。IGBTなどがもっと進化すればLSIから 直接駆動できるほど制御エネルギーの少ないインバーターなどが出来るのでは? あるいはもう製品化されているとか?) というわけでオーディオやコンピューターの回路を設計するような感覚で電力用回路 を設計するとおそらく先の文に書いたような部分で失敗するでしょう。 しかしマイクロマシンが普及すればこの分類も変えざるを得ないかもしれません。 マイクロマシンを動かすためのマイクロパワーエレクトロニクス(?)なる研究分野 が出てくるかも知れません 最後にまとめとしてパワーエレクトロニクスを勉強する上でのポイントを書くと ・微小な電圧・電流ではほとんど問題にならないが大電圧・大電流では問題になる 現象を理解する。 ・使われる半導体素子の特性や仕様の違いについて理解する。 ・基本的には低周波の世界であることを理解する。 最近は数十~数百キロヘルツのスイッチングをするインバーターなどもありますが、 大部分は数キロヘルツ程度で、メガヘルツのオーダーが当たり前になったマイクロ エレクトロニクスの世界からみれば低周波です。 ・「情報・信号」ではなく「電気というエネルギーそのもの」を扱うことを理解する。 マイクロエレクトロニクスでは「電気現象」だけでなく実は「信号一般」に関する 勉強も多いが、パワーエレクトロニクスではモロに「電気現象」を相手にする。 といったところでしょうか。
お礼
回答どうもありがとございました。友人ともどもお礼を言わさせていただきます。 また何かわからないところが出てきましたら、そのときはよろしくお願いします。