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走れメロスの深い読み取り
走れメロスで、 ‘このうそつきにだまされたふりして、放してやるのもおもしろい‘ とあるんですが、 そのとき王は、まったく人を信じていなかったんでしょうか? それとも、心のどこかでまだ信じる気持ちがあったんでしょうか? 私は、王はまだ信じていると思うんですけど、 本当はどうなんでしょうか? できれば具体的な理由があると助かります(^_^.) また、 ‘わしは悲しい顔して・・・‘ から読み取れることはありますか? 教えてください!!
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『走れメロス』の王様の言動は、悪魔の誘惑や取引を描いた古典的な物語のパターンになっています。 つまり、王様には「不信」の悪魔が取り憑いていて、そのせいで乱心しているのです。悪魔はもっと「裏切り」が見たいので、メロスの申し出を受けます。つまり悪魔は、もちろん人を信じる気持ちなどなく、メロスが裏切ることを確信しているのです。 この取引が結果的に悪魔を追い払い、王様に人を信じる心を取り戻させるわけですが、その結果から逆算して「この取引を持ちかけたのは、王様が善なる心を取り戻すためにメロスに助けを求めたのだ」などと解釈するのは、ちょっと無理があると思います。 自分が悪魔に取り憑かれていたときのことを振り返ってみてください。誰かに対して怒ったり、悪口を言ったりしている時です。そういう時の自分の言動には、善性が残っていたでしょうか? 「あいつ絶対許せない!」とか言っているときは、たいがい本当に全く許す気なんてないはずです。悪魔が去った後で冷静になってみて、ようやく人は反省できるのです。 それを考えれば、王様があのとき信じる気持ちがあったか、という問いに対する答えは、自ずと出るのではないかと思います。 「わしは悲しい顔をして~」のところは、悪魔の欲求から来る当然の素振りだと言えます。悪魔は「裏切り」が欲しいのです。だから「信じていたのに裏切られた」という悲劇の王様を演じることで、自分の欲求を満たそうとしているわけですね。 なお、「悪魔」などの言葉を使わず、つまりは近代小説として読解し、解釈を試みようとすると、そもそも王様の性格設定を形成するための情報が不足していて、どういう人物かを推測することができません。「乱心している」というのは民衆の噂でしかなく、実際に乱心っぷりが描写されているわけではないですし、人を信じられない王様を描写しているシーンもありません(テロリストのメロスを信じないのは当然ですし)。 民衆の噂が本当で、ものすごい人間不信に陥っているとして、かつラストであんなに簡単に感動して「仲間に入れて」などと言っているのだとすれば、王様の言動には一貫性がなく、精神に異常を来しているとしか言えません。王様万歳とか言っている場合ではなく、さっさと引退させなければ、この国は大変なことになるでしょう(笑) そもそもこの物語における王様は近代小説的な、リアリティを持たせた心理描写を施した人物像として描かれていないので、それに近代小説的な読解を試みると、正しい解が得られないのです。
お礼
ありがとうございます! すっごいわかりやすかったです。 王様は完全に信じていないんですね-- 良い勉強になりました(^O^)