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過渡的安全性について
私は今、行政法判例の「大東水害訴訟」について勉強しているのですが、そこででてくる「過渡的安全性」という言葉の意味(定義)がイマイチ分かりません。 分かりやすく教えて頂けると幸いです。 よろしくお願いします。
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河川については、国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵の判断にあたって、現在はまだ完全な安全性を備えていないとしても、安全性に欠けることを認識して工事などを進めている場合には、その工事が完成するまでは、その工事の段階に応じた、100%ではない、たとえば70%や80%の安全性の状態だったとしても、瑕疵はないといっていいではないか、というのが過渡的安全性の理論ですね。ですから、その70%や80%の安全性の状態のことが「過渡的安全性」ということです。 以下、大阪高裁昭和62年4月10日判決から引用 「(三) すなわち、河川の通常備えるべき安全性は、当初から確保されているのではなく、管理開始後において、予想される洪水等の災害に対処すべく、堤防を築造し、河道を拡幅、掘削し、流路を整え、又は放水路、ダム、遊水池を設置するなどの治水事業を行うことによつて順次達成されてゆくものであつて、このような治水事業は相当の長期間を必要とし、しかも全国には未改修河川や改修の十分でない河川が多数存在しており、これらについての改修等治水事業を達成するには莫大な費用を必要とするのであるから、国又は地方公共団体の議会が国民生活上の他の諸要求との調整を図りつつ、国又は地方公共団体の予算において各河川につき改修等の必要性、緊急性を比較しつつ、その程度の高いものから逐次これを実施してゆく以外に方法がない。そしてその実施に当たつては、緊急に改修を要する箇所から段階的に、又は原則として下流から上流に向けて工事を行うことを要するなどの技術的な制約や、流域の開発等による雨水の流出径路の変化、地盤沈下、低湿地域の宅地化、地価の高騰等による用地の取得難などの社会的制約があり、又道路のように、危険な区間の一時閉鎖、通行止のような簡易な危険回避手段をとることができず公用廃止もできないという事情があるなど、多くの制約、困難が伴うものである。 (四) 河川の管理には以上のような諸制約が存在するため、すべての河川についてあらゆる水害を未然に防止するに足りる治水設備を完備するには相当の長期間を必要とすることはいうまでもない。そしてその過程にある河川又は改修中の河川は、それ自体完全な安全性を備えていないのであるから、堤防など河川管理施設の現状における安全性の不備をもつて直ちに河川管理の瑕疵ということはできない。けだし、河川の改修には、前記のように時間を要するから、その間のあらゆる災害を防止できなければ、その河川管理に瑕疵があるとすれば、およそ河川の改修は不可能とならざるをえないのである。そこで、ことに改修中の河川については、前記諸制約の下で、当該河川につき施行されてきた治水事業の過程の当時の段階における時機相応の安全性の存在、つまり過渡的、段階的ないしは対応的安全性の存在をもつて足りるものとせざるを得ない。」
お礼
遅くなってしまいすみません。 とても分かりやすい説明をありがとうございます。 助かりました。